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インフォコムの働き方改革事例(後編)

働き方改革の実現への課題は、「総務」・「人事」・「ICT」の連携

投稿日:2019-03-26  最終更新日:2019-03-26  取材日:2018-09-14

  • 会社規模

    1,000人

  • 業種

    情報通信業

  • 対象職種

    全社員

大阪の新オフィスの運用スタートに伴って、ファシリティ面から「働き方改革」への取り組みをスタートさせたインフォコム。前編では、総務室 総務チーム主査・小澤幸二さんが、ABWという先進的な仕組みを取り入れながらも、様々な課題感に直面している点についてお話ししてくれました。

この後編では、さらにその課題感を掘り下げていくことで、「働き方改革」を進めるにあたっての“大切なポイント”について紐解いていきたいと思います。

「総務」・「人事」・「ICT」、その3者の連携

ABWを取り入れた関西事業所についてのお話を伺ってきましたが、取り組み始めということで、ワーカーのニーズと新しいファシリティ上での仕組みの間に、まだまだ“溝”があるような印象を受けました。

実際、そうだと思います。ファシリティから入ったものの、現在ではICTがないと回らないんです。オフィススペースを管理する『総務』と『IT部署』が協力し合わないと、適切にファシリティを扱えないんですよね。つまり、『総務』単独だけでは立ち行かないというのが、“溝”の原因のひとつ

なるほど。

オフィスにおけるファシリティデザインは、ICTとかネットワークとかセンサーとか、そういったIT分野との協働がないと難しい。昔ながらの総務部のやり方では限界があるな、という実感を持っています。ICT機器の調達やシステム構築など、外注に出してしまうのも一手ですが、ITに長けた人がチーム内部にいれば、それが自社内でできてしまう。ITの必要性を認識して、実際にどう取り入れるか。これは非常に大きな論点だと思っています。

確かにその通りですね。

そして、“溝”を取り除くために必要なもう一つの要因が『人事』です

人事?

正確には「制度」だと考えておりますが、総務としてファシリティ面からオフィス環境を整えながら、その新しいオフィス環境に合ったICTの仕組みも同時に取り入れていく。かたや人事としては、在宅やサテライトオフィスなど、サードプレイスの利用を促していくための制度を作っていく。『働き方を変える』には、『総務(オフィス環境)』・『人事(制度)』・『ICT(ツール)』、その3つの連携が非常に重要になってきます

なるほど、本当にそうだと思います。

例えば、当社の関西事業所を例にとれば、そこではオムロンの空間センサーを採用しています。会議室って予約上の使用人数は把握できるのですが、実際に使った人数が把握しづらいんですよね。でも、空間センサーをつければ、実際の使用人数をデータとして取得できるようになるんです。従来の総務の発想では、こういったICT関連の施策は出てきにくい話なんですね。

確かに。

一方、人事では在宅勤務を制度化しています。在宅勤務については、従来育児・介護に関わる人という制限つきで許可されていたのですが、現在では、病気や怪我などの本人事由でもOKと変わりました。
また、外部のシェアオフィスと契約して自分の勤務するオフィス外でも業務が可能となりました。
ただ、制度上では在宅勤務やシェアオフィス業務が可能になっていても、持ち運びできるパソコン(ノートパソコンがベター)がないと、事実上、オフィス外での業務は難しいですよね。

はい。

コスト観点で言えば、安くてスペックがいいのはデスクトップなので、少しでもコストを考えればパソコンはデスクトップで決まり、となるわけですが、ABWのオフィスやシェアオフィス、在宅勤務をする人が増えていけば、デスクトップでの業務は立ち行かなくなるかなと思います。
そして、ノートパソコンの導入、オフィス外での業務が増えれば、現在のオフィス環境はこのままでいいのかと言う疑問もでてきます。
社員の皆さんからすると“オフィスでの業務がよい”のか、“オフィス外での業務を推奨している”のか、あるいは“ノートパソコン”なのか、“デスクトップパソコン”なのか、など混乱が生じる可能性がありますよね

そうですね…。

ですので、何よりも大切なことは、この『総務(オフィス環境)』・『人事(制度)』・『ICT(ツール)』の3者が連携した体制をしっかりと構築することなんだろうと思っています。

なるほど、この3者間でのコンセンサスを実現させるためにも、会社としてのコミットメントが必要、ということですね。

はい。それぞれの部署がばらばらな方を向いていると、“相乗的に上手くいかない”。やはり、本気でやるなら、総務、ICT、人事の連携は必須だなと。教訓として、今ではそんな想いを強く抱いています

ボトムアップの苦労を通して見えてきた、これからの展望

きっかけは社長の一言でしたが、それでも、決してトップダウンではないんですよね。

それは、具体的に、社長から○○や△△にしろなどとミッションを与えられているわけではない、ということでしょうか?

はい、そうです。大阪のオフィスはここ1、2年の間に作ったものなので、新しいオフィスということもあって、社長や経営層も様々挑戦したい意欲を示してくれておりキーワードは示してくれていますが、基本は担当ベースで、何をすれば働き方がよくなるかを模索している、という感じです。

ボトムアップで進めているということですよね。ちなみに、社内承認はどのようにして取っているんですか?

実際に新しいオフィスで働く部署の方達と、新しい取り組みの導入について徹底的に話し合います、現場でのコンセンサスが取れている取り組みについては基本的に社内承認は取りやすいですね。

ポイントは現場の人、ですか。

はい、やっぱり現場で働いているみんなの意見が強いんですよ。…とはいえ、ボトムアップには、どうしても限界があるのも事実ですけど、うちではトップダウンとボトムアップがうまく回っていると思います。

働き方改革のゴールはありますか?

そうですね。まだ定められていないというのが正直なところです。『働き方改革をやってみよう』という社長のメッセージは、ひとつの問いですよね。前述の部署関連系を勧めたいというのが前提ですが、私の立場では『総務が行うべき働き方改革とはなにか』という。

問い、ですか…。

そうですね。でも、今まで様々に試行錯誤してきて、方向性くらいは見えるようになってきていると思っています。例えば、オフィス環境については、すぐには変えられるのものではないものの、カフェや大阪オフィスの考え方をベースにしながら、現在のニーズを受け止めていくためには、環境的にどういったことを補っていくべきか、とか。

前進の糸口は、たしかに掴んでおられるんですね。最後に、これからの展望のようなものがあったら教えていただけますか?

そうですね。これからということでは、全社的なレベルで『生産性を高めていくこと』に貢献できるような取り組みを進めていきたいと思います。
営業などでは数値で測れるのでわかりやすいですが、ファシリティでの生産性向上というとは? そういったところから、一歩一歩ですよね。

この事例と同じシリーズの事例

今回協力して下さった企業様

インフォコム株式会社

設立
1983年2月
本社所在地
東京都渋谷区
事業内容
報システムの企画・開発・コンサルテーションなどの各種ITソリューションや、情報通信システムの企画・運用・管理などの各種サービスの提供
消費者が利用する携帯電話やスマートフォンへのコンテンツ配信やeコマースなどのサービスの提供
従業員数
639名(単体) 1,074名(連結) 2018年3月末現在
Webサイト
https://www.infocom.co.jp/

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