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富士通コミュニケーションサービスの働き方改革事例

コールセンター新時代。サードスキルを磨き、AIを使いこなす。

投稿日:2018-12-14  最終更新日:2019-03-20  取材日:2018-11-05

富士通コミュニケーションサービス株式会社が取り組んだ事

  • 社員の声をアンケートで集め施策に反映
  • 人にしかできない付加価値を創造する「クリエイティブプロフェッショナル」の取り組み
  • 会社規模

    4,000人

  • 業種

    情報通信業

  • 対象職種

    全社員

AIの台頭や業界全体の離職率上昇など、岐路に立つコールセンター業界にありながら
先んじて働き方改革に乗り出した富士通コミュニケーションサービス株式会社(CSL)。
社員に寄り添いながら圧倒的なスピードで改革を進めてきた背景と具体的な取り組みについて、
当社は「人(社員)がすべてである」と熱く語る乙黒淳社長にお話を伺ってきました。

代表取締役社長 乙黒淳様。後ろに見えるのは、小規模案件でも高品質なカスタマーサポートの提供を可能にする同社のシェアードセンター。 このプロモーションルームは、瞬間調光ガラスフィルムが貼られ、電源のOff(遮断)で不透明、電源On(通電)で透明を切り替えることが出来る。写真はON(通電)にした状態。常にお客様へサポート業務(職場)を見ていただける環境を整えている。

人にしかできない価値創造こそ当社の強み

御社について教えてください。

当社は、コールセンターやヘルプデスクなどのサポートサービスを主力業務としています。
約4,150人いる社員のうち約4,000人がオペレーター業務、約150人が間接部門である人事や総務、営業ですので、ほぼ全社員がお客様接点のサービスを提供しています。サービスは基本的には「人」が提供いたしますので、「サービス=人」にほかなりません。お客様にとって当社のコールセンターで電話対応を行うオペレーターは、まさに会社を代表して対応しているという大事な業務を行っていることになります。

働き方改革のきっかけは?

「働き方」への取り組みは以前から注力してきましたが、ここ数年は労働人口減少の流れもあって、
人材不足が課題になっています。
そこで、まずは労働集約モデルから価値創造モデルに働き方を変革する必要があると考え、社員には長く楽しく元気に当社で働いてもらえるよう施策を強化しました。今まで行ってきた労働環境の改善を更にブラッシュアップして働き方のアップデートをしようと様々な施策を打ちました。

スタートは社長の号令で?

もちろん私自身の想いもありますが、人事系の取締役を「CEO」に任命し、働きやすい、働きがいのある会社づくりに向けて取り組んでもらっています。当社の「CEO」はChief Executive officerではなくて
Chief Engagement(※) Officer です。

※Engagement…約束、従事、企業と従業員の深い結びつき、組織に対する愛着心。

環境、制度、働きがい を三本柱に

改革の具体的な内容は?

大きく分けて三つあります。
一つ目は、安心して働ける環境づくり。
安全で安心して過ごせるファシリティ、職場環境に関する事ですね。
二つ目は、人事制度
三つ目は、仕事のやりがい。働きやすさだけではなくて、
働きがいも上手く組み合わせて働ける環境ということです。

改革以前から導入していた制度は?

これまでも、リフレッシュルームの整備や、契約社員への有給休暇制度、短時間勤務の対象を小学校六年生までとするなどの取り組みを行っていましたが、社員の皆さんが長きにわたり安心して勤務し続けられる、今まで以上に働きやすい、働きがいのある会社に変革させることが必要だと考えました。そして一方的な改革にならないよう、昨年から全社員を対象としたES調査「CSLみらいアンケート」を開始しました。それまでは富士通グループ共通の「社員意識調査」を実施してきましたが、当社の働き方や職場環境に特化した、当社の「みらい」を社員全員で作っていくために、経営としてCSL独自のアンケート実施を決定したものです。
このアンケートであげられた要望を、前述の「CEO」が確認し、迅速に対応すべく尽力しています。

最初はどんな要望がありましたか?

多様な働き方に対する希望が多かったですね。
例えば、産休育休以外にも、介護などの理由で継続した勤務や転勤できない等々。後は、給与アップなどの要望などもありましたね(笑)。

地元でずっと働ける、転勤なし制度

例えば転勤についてですが、以前は、正社員=全国で活躍できる社員(転勤に対応できる社員)と定義していましたが、ワークライフバランスを重視し「原則として正社員は採用地で勤務し、転勤は行わない」と定義しました。例えば、新潟採用の正社員ならずっと新潟で働けるわけです。

総合職で勤務地を固定するのは大きな決断ですね。

転勤の辞令がいつ出るか分からない状況がなくなったのは、特に育児や介護者を抱える社員や家族にとっては
安心だと思いますね。会社としても「転勤できないから辞めます」と言われてしまうのが一番困りますから。
ただ、絶対に転勤がない訳ではないのです。本人がキャリアアップの為に転勤を希望されるケースもあります。また、どうしても転勤をしていただく必要がある場合もありますが、その場合は本人の同意を前提としています。そして転勤された方には、転勤にともなうインセンティブを以前より手厚く支給できるようにしました。

育児、介護者には法定以上のケアを

育児中の社員へのケアは何かありますか?

2017年度から、「スマイル子育て支援金」という名称で、小学校、中学校の入学時に一時金の支給をしています。

介護者についてはいかがですか?

介護休職についても、法定基準では通算93日計3回が上限ですが、
当社では更に休職可能日数を長くして、回数制限も撤廃しました

お話を聞いていると、決断が速いですよね

「CEO」を任命してすぐにアンケートを取って、直ちに手を入れていますからね。
速さが取り柄というか、こういうのは後手に回っちゃうとダメですから。
だからアンケート結果もネガティブな意見を含めて公開しています。

スピード重視なのは、社内風土も関係しますか?

100%サービス業ですから、常にお客様との接点である現場で、迅速に対処、解決しないといけないビジネスです。オペレーターが解決できないからと言って、その都度、すべてを上司の判断に委ねる訳にはいきません。
ですから、割と現場やスタッフ、リーダ層に権限移譲して、裁量を任せる文化がベースにあります。権限移譲するには、情報公開をして、風通しを良くする必要がありますから。

離職率改善のカギは先手必勝の対策

環境面の取り組みは?

例えば、イスや什器、カーペットなどを綺麗にして欲しい、という要望にもすぐに応えました。
「壊れてないからまだ使える」という内容や状況であっても、
「それで少しでも環境が良くなり、働く気持ちや働きがいがアップするなら変えようよ」という方向性になりましたね。

会社側の姿勢も大きく変えたのですね。

重要なのは「自分たちが声をあげたら、会社がちゃんと変えてくれた」と社員が思ってくれる事
なんです。オフィスが綺麗になる事よりも、社員たちの困りごとを会社がきちんと対処する事、
その事を社員が認識してくれる事が大切だと思うんです。

広々としたリフレッシュスペース。2014年に本社を移転した際には、オフィス環境への取り組みが「コンタクトセンター・アワード2016」で「オフィス環境賞」を受賞している。

有言実行されているから、アンケート回答率も高いのでは?

そうですね。
実は、コールセンター業界は時給重視で働く方が多い分、離職率が高い業界なんです。
業界の調査によると、コールセンター業全体の離職率は上昇傾向ですが、当社では下がっています
アンケートと直接の因果関係は何とも言えませんが、早めの対策が功を奏しているのではとは感じます。

「長く働いてほしい」という当初の目的に近づいていますね。

なにもしなければ離職率が悪化してしまう所を、当社の場合は数%ですが改善してきているので実質かなり良くなっている、と思っています。

研修や教育もしっかりされているとHPで拝見しました。

三つ目の「働きがい」のところですね。
コールセンター業は、ともすれば今の仕事だけで日々過ぎてしまいがちなんです。
そうではなくて、中長期的に社員の人生と会社が一緒に成長していこう、
会社もきちんと教育の場を提供する、自身のキャリアも考えていってほしい
、というメッセージを出して、
取り組みを強化しています。
例えば、当社の「キャリア開発室」では長く働いていただくために相談をうけたり、社員の皆さんが最終的なキャリア・ゴールに到達できるよう計画を設計していくプロセスを支援しています。また、そのためのセミナーも開催しています。
また、成長には教育が必要ですから、教育部門が中心になって様々な研修を開催しています。

AIは敵ではない。サードスキルで高めるクリエイティビティ

将来的にコールセンターはAIに代替される、という話題を耳にすることがあります。

銀行の窓口業務やコールセンターはAIに代替されてなくなる、という内容ですよね。
当社でもチャットボットを実用するプロジェクトが既に出てきています。
ただ、RPAなどは自分たちを脅かす存在ではなくデジタルアシスタントとして
上手く使えるようにならないといけないよね、という認識でいます。
人にしかできない付加価値を創造する「クリエイティブプロフェッショナル」の取り組みを進めています。
業務に直結するITスキルやコミュニケーション力に加え、第三の技能としての「サードスキル」の習得支援も始めています。自分たちが学習して、AIやRPAなどを活用することで、人だからこそできるクリエイティブな仕事に注力していくことができます。それこそが働き方改革になります。

すでにRPAに取り組まれているのですか?

はい。新潟と松山の拠点で20台ずつRPAが既に動いています。
3月の決算期末処理にピークが集中する為、従来は短期派遣を採用したり残業となってしまっていましたが、
4~5年前からはピーク時にRPAを活用することで大幅に解決しています。
「RPAの活用で今では定時退社してすぐにスポーツクラブに行けます」と話す社員もいます。
AIやRPAを上手くツールとして働き方改革に繋げましょう、という事ですね。それで空いた時間を、
今の例はスポーツクラブでしたが、他にも資格や勉強、趣味の時間に充ててほしいんです。
これが先ほど少しお伝えしたサードスキルです

具体的にサードスキルとは?

自分の得意技を磨いてください、という事です。
必ずしも、プログラミングとか仕事に直結する技術である必要はなくて歴史の勉強、美術鑑賞、資格取得、何でも良いんです。
そこから人ならではのクリエイティビティが生まれて、AIとの差別化、「人にしかできない価値創造」へつながると思います。

月一回以上の社内イベントでコミュニケーション強化

福利厚生面での取り組みは?

月に一回は、各センターで社員向けイベントを開催しています。
コールセンターはPCに向かう時間が長く、同じセンター内でも別部門の方とコミュニケーションを取ることが難しいケースが多いです。そこで、業務終了後や休日にイベントを開いてコミュニケーションを図るようにしています。

社内イベント、とても楽しそうですね。

先日も私が自ら仮装してハロウィンパーティーに行ってきましたよ。
また私だけでなく取締役は、基本的に各拠点のイベントに参加しています。
年内で最も大きなイベントである「ディズニーリゾート パーク・ファン・パーティー」では、パーク内の施設を一定時間貸し切って、社員とその家族に楽しんでもらっています。
費用は掛かりますが(苦笑)、社員から非常に好評で長く続けているイベントの1つです。

厳重なセキュリティが担保する、場所を問わない働き方

2016年12月から「ちょくちょく…(現 ZXY)」をご利用頂いていますね。

コールセンター部門などでは就業特性から利用する機会は限られていますが、営業部門は積極的に使っています。4年前に品川から横浜に移転したのですが、都内にクライアントが多く、よく利用させていただいているようです。

御社のモバイルやネットワーク環境について教えてください。

ネットワーク関係は富士通グループなのでとても厳格に運用しています。

社内の段階ですでに厳しいセキュリティが?

PCは事前に申請/承認がないと持ち出せません。セキュリティ教育も定期的に行っており、かなり厳しく対応していますね。

ちょくちょく…(現 ZXY)の導入はスムーズに進みましたか?

特に営業部門はノートPCを持ち歩いて仕事するのは日常的でしたが、個人情報等の取扱も厳しく、
「カフェで仕事するのはセキュリティ的に難しいよね」という声がありました。
「ちょくちょく…(現 ZXY)」だと法人契約者しか利用できませんし、覗き見される心配もないのが良いですね。

在宅勤務もOKですか?

在宅勤務は2017年以前から、一部の部で運用しています。
特に、システム部門は夜間作業が多く勤務時間が不規則なので在宅勤務を活用するケースがあります。

ありがとうございます。最後に今後の展望をお聞かせください。

「CSLみらいアンケート」は毎年続けて今後も働き方をアップデートしていきます。
そこで「声を上げたら(会社が)対応してくれる、もっと声を上げていこう」と考える社員が増え、満足感と働きがいをもってもらえたらと思います。

今回協力して下さった企業様

富士通コミュニケーションサービス株式会社

設立
1994年12月
本社所在地
神奈川県横浜市西区
事業内容
「コンタクトセンター」および「ITサポート」のアウトソーシングサービス
従業員数
4,150名(2018年3月末現在)
Webサイト
http://www.fujitsu.com/jp/group/csl/

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