”創造的な生き方・働き方へのシフト”を自社のミッションとして革新的なHR Tech(※)サービスを生み出しているイグナイトアイ株式会社。
そのミッションは新オフィスの空間設計にも反映されています。社員一人一人が創造的な働き方を実現できるABW型オフィスを、裏話も交えながら案内していただきました。
※HR TechとはHuman ResourceとTechnologyを掛け合わせた造語で、採用活動や人事評価、人材育成など人事に関する課題をAIやIT技術を使って解決することを意味する。
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ナチュラル&インダストリアルな明るいオフィス
本日はよろしくお願いします。早速ですが、御社の事業内容から教えていただけますか
吉田:HRTech(※)分野のプロダクトを提供しており、採用業務を一元管理して効率化できるSONAR(ソナー)という採用管理システムが主力事業となります。
今いらっしゃるオフィスはかなり広々していますね。
吉田:社員数46名(※2019年10月現在)に対して80席以上ありますし、セールスメンバーは外出もあるので、キャパシティ的には余裕がありますね。
社員数に対してここまで広い物件を選んだのはなぜですか。
吉田:過去の苦い経験がありまして、実は7年の間に5回も移転してるんです。平均したら2年もいない。
だから今回もどれくらい面積を広げて移転するか悩みました。本当は従業員数に対して3倍くらい広い物件が望ましいとは思ったものの、予算などの条件を踏まえて2倍の広さの所に決めました。
この物件を選んだこだわりは?
吉田:仲介会社にお願いしたのは、駅徒歩5分、100~120坪、新耐震基準をクリアしていること、そして女子トイレが2つ以上あることです。
女子トイレの数ですか?
吉田:当社は女性比率が高いのですが、前のオフィスにはトイレが1つしかなく、いつも待ち時間が発生していたんです。
だから、移転するなら2つ以上欲しいという要望が強かったですね。
実際どうですか。
石橋:待ち時間もなくなりましたし、ゆっくり鏡の前で身だしなみをチェックできるようになって快適です。
オフィスの内装も綺麗ですね。
吉田:ありがとうございます。ABW(※)にしたいと内装工事会社に相談した上で、5社でデザインコンペを行いました。
※ABWとはActivity Based Workingの略で、業務内容に応じた最適なワークプレイスを従業員自身が選ぶ働き方のこと。従来の島型の固定席が並ぶ一律的なオフィスとは違い、高集中、コワーク、web会議等々、仕事の性質にあわせて異なる複数の執務スペースを設ける特徴がある。
コンペでは何が決め手になりましたか。
吉田:ABWの概念を理解してくれて一番話が通じやすかったことが決め手になりました。エリアの使い方やデザインのレイアウト案も5つくらい色々変えて持ってきてくれましたね。
緑が多く使われていますが、これもこだわりですか。
吉田:「ナチュラルとインダストリアルの融合」をデザインコンセプトにしています。
ナチュラルは観葉植物やウッド調で表現して、インダストリアルは無機質なライトや壁で表現しています。
人工的な空間に一定の有機物、例えば木なんかを配すると集中力が高まるというのは、弊社のZXY(旧ちょくちょく…)でも一部取り入れているんですよ。
吉田:そうなんですか?当社でも無意識にそうしてたってことですね(笑)。
裏テーマは“オフィスは家じゃない”?
移転が決まってからは、社長と社員の方がプロジェクトチームを組んで一緒になって進めたそうですね。
吉田:はい。各チームから推薦された2名の社員と私とでプロジェクトチームを立ち上げて、半年間活動しました。
プロジェクトメンバーの選抜には何か基準が?
吉田:推薦者の上長に明確に指示した訳ではありませんが、ミッションが「チームから声を吸い上げて自分達なりのオフィスを作る事」ですから、それができるメンバーであると判断されたのだと思います。
実際にはどんなことをしましたか。
吉田:デザイン会社を決めるコンペや、全社員にアンケートをとってどんな設備や部屋があったらいいかヒアリングしたりしました。
新オフィスのレイアウト案が提案されてきた際は、「実際の過去の1日を指定して、その日にもし新オフィスで仕事をする場合には、どのエリアで仕事をするかを1時間ごとにエリア選択」してもらうアンケートを全社員にお願いしてエリアごとの稼働率を試算してみたり、色々やりましたね。
試算段階では、稼働率が高かったのはどこでしたか。
吉田:やはりコワーキングスペースが一番高かったです。
逆に、想定したほど使われていないのが高集中エリア。あそこは意外と使われてないですね。自分はよく使っていますが。
集中エリアの稼働は最初から低調だったんですか。
吉田:うーん、そうですね。どうしてだろう?集中できるはずなのに…あまり使われていない。
石橋:実は、私も使ったことないです。オープンエリアでも結構静かな時間帯があるので、そこだけで完結できてしまうんですよ。でも、これから社員数が増えたら変わるかもしれないですね。
吉田:なるほど。今はかなり面積に余裕があるので、高集中エリアに移動する程じゃないのかも。
前のオフィスの最後は本当に密度高く狭かったので、高集中エリアを熱望していたのかもしれません。
確かに、空間に余裕があるうちは周囲をシャットアウトしたい願望は生まれないのかもしれませんね。 他に社員の方からユニークな要望などはありましたか。
吉田:足湯が欲しい、という要望などがありましたね。
オフィスに足湯ですか?!
吉田:はい。こういった要望もプロジェクトメンバーでしっかりと議論しましたが、導入はしませんでした。今回の移転にあたって、オフィスに力を入れている企業何社かに見学に行ったのですが、その中の一社の移転コンセプトのひとつに”オフィスは家じゃない”っていう一文があって。ああ、そうだよな、と。
オフィスは家じゃない、確かにそうですね。
吉田:当然、働きやすいようには設計するけれど家じゃないんだ。家みたいに使ってほしい訳ではないので、そこは線引きした感じですね。
オンライン会議専用のブースを新設
単なるフリーアドレスではなく、あえてABWにこだわったのはなぜですか。
吉田:当社のミッションである”創造的な生き方・働き方へのシフト”を追求するためです。だから、単にフリーアドレスじゃなくて目的別のエリアを設けて自ら動いて使いこなしてくという事をやってみたいなと。
ABWを目指すようになったきっかけは?
吉田:ベルフェイスやZoomなど新しいツールを使い始めたことがきっかけですね。
前のオフィスは、執務エリアと会議室が幾つかあるような一般的なオフィス形態でした。そういう普通の執務エリアでオンライン会議をすると音が気になる、うるさいんですね。
そこかしこでやっていると音が干渉するから執務エリアで行うことは厳しくなる。するとどうなるか?今度は会議室でオンライン会議をするから、予約が埋まってお客様が呼びにくくなってしまう。
執務エリアでも会議室でもない専用のブースを作らないと、新しい働き方にマッチできないという課題感があって、色々調べるうちにABWを知ったんです。
弊社では執務エリアでオンライン会議をやる場合もおおいですね。
吉田:それだと周りの人の声を拾っちゃいませんか?
執務エリアって当然社員が会話しますから笑い声もある。それが真剣なお客様との打ち合わせ中に入り込むのを嫌がる社員も多くて。
なるほど、社外のお客様ともオンライン会議をよくされるのですね。
吉田:はい。オンライン会議は、社員間よりもお客様との方が圧倒的に多いです。
それだと確かに周りがガヤガヤしていると嫌ですね。
吉田:訪問もしますがベルフェイスを使ってお客様に営業をしますし、SONARのサービスを購入していただいたお客様とはZoomを使ってやり取りもします。だから、お客様と話している時に笑い声などが入るとちょっと…。
そうですね。オンラインに慣れているお客様ばかりではないと思いますが、その辺りはどうですか。
吉田:初めて使うお客様も結構いらっしゃいますが、実際使ってみると「すごくいいですね」と言われることが多いですし、世の中的にもだいぶ普及してきたように感じます。
移転後2~3ヶ月経ってみて、社員の方々はどうですか。
石橋:前のオフィスは、座席の後ろを通るのも大変なくらい狭かったのでコミュニケーションを取りたくてもできませんでした。今だと、部署の垣根を越えて近くにいる誰かに気軽に質問できますし、情報を取りに行かなくても以前より自然と入ってくるようになりましたね。
以前はかなり狭かったんですね。
吉田:50坪くらいに40数人がいましたからね。
石橋:あとはコミュニケーションスペースの存在が大きいです。以前は、仕事もランチも全部自分の席でしたが、今は、ランチの時は移動して皆で雑談しながらゆっくりできるようになりました。
楽しそうな空間ですね。では、入居してみて想定外だったことは?
石橋:意外に良かったのは、すりガラスをやめて透明ガラスにしたことです。
確かに窮屈な感じもしませんし、だからといって見られている感じもしなくてちょうど良いです。機能だけなくデザインにもこだわっていますよね。
吉田:自社の採用活動に力を入れているので、こういうオフィスで働きたい!と思ってもらいたいですからね。
それにお客様が結構いらっしゃるので、印象に残るような良い感じのオフィスにしたいなと。
お客様のリアクションも良くなったのでは?
吉田:そうですね。「良いオフィスですね」と言っていただけます。来社したお客様にはエントランスのボードに名前を書いてもらうようにしていて、そういう来社記念的なこともやっているんですよ。
ボードのアイデアは吉田社長が?
吉田:黒板を設けて欲しいというのは自分のアイデアで、黒板とコルクボードを置いてみたら何かが起きるんじゃないかと期待して発案しました。名前を書くアイデアは社員の発案です。
オフィス造りも仮説・実行・検証が大事
働く場面に応じて場所を変えるのがABWの特徴ですが、実際に社員さんは使い分けていますか。
吉田:それこそお客様とオンラインで打ち合わせする時には専用の場所に移動していますから、意図通り使ってくれていると思います。
特に推進したり促したりしたわけではなく?
吉田:特に促進はしていません。でも、移転前には毎月の全社会議で移転プロジェクトの進捗状況を伝えていました。そこで「こういうエリアを設けます」「こんな風に変わります」と共有していたので、社員にも理解が進んだのだと思います。
オフィス移転は社員全員に関わる事なので、こまめに進捗を共有してくれるのは良いですね。
吉田:そこはプロジェクトメンバーが頑張ってやっていましたね。
石橋:進捗を知る中で面白かった事があって。ABWありきで進めていたのに、突然、吉田社長が「やっぱり固定席を作ろう!」と案をひっくり返したんです。「このプロジェクトどうなるんだ?!」って驚きました。
結局、固定席は作らないことになったのですが、途中の過程まで知れたのは良かったですね。
ちなみに、なぜ固定席に戻そうと?
田:ABWのメリットとしてコミュニケーションの活性化やエリアを使い分けることで効率的な働き方ができる一方、当然デメリットもあるわけです。例えば、社員がどこにいるか分からないとか。
それで役員会で議論になりましたし、メンバーからも固定席の方が働きやすいのではとの意見も出ていました。
確かにそういう意見もありますね。最後には当初の計画通り固定席をやめたのはなぜでしょう。
吉田:固定席を作ってからフリーアドレスに変えるのは難しいけれど、フリーアドレスから固定席に変えるのはいつでもできるからです。今回はフリーアドレスにしたらコミュニケーションが取りやすいのか、創造的な働き方ができるのか、仮説を立てて検証してみることにしました。
結構ナイーブなところまで共有するんですね。
吉田:そうですね。プロジェクトメンバーもびっくりしていましたが、段々できあがっていく様子が分かって、見ている方も面白かったんじゃないかな?
Slackにも移転プロジェクトのチャンネルを作って、プロジェクトメンバーから「レイアウトはこんな感じで上がってます」とか「こんな家具を選びました」などこまめに投稿していたので、情報は常に見える化されていました。
社内の風通しが良いんですね。
吉田:見える化は当社のバリュー(行動指針)の1つですから、このプロジェクトに限らずオープンに情報共有をしていこうという意識がありますね。
リアルな対話も大事にしたい
社外でも働ける環境がかなり整っていますが、自宅で働くのもOKですか。
吉田:在宅勤務は現時点では推進していません。というのも、完全に在宅OKにしてしまうと顔を合わせる頻度が減るので、そこが踏み切れないポイントですね。一部の社員は実験も兼ねて認めています。
やはり顔を合わせて働くのを大事にしたい?
吉田:そうですね。フリーアドレスになってから誰がどこにいるか探さないとコミュニケーションしづらくなってしまった面もあって。だから、なるべくオフィスに集まるようにしたい気持ちが今はあります。
確かに一理ありますね。
吉田:模索中ですね。だから、今回のレイアウトも実験だと思っているんです。
例えば、デスクごとにチームの配置だけは決めておいてデスク内で自由にするとか、あとは、チームもメンバーも敢えて完全に混ぜて組み合わせてみるとか。これから試せることは沢山あると思います。
面白そうですね。結果が分かったら是非またインタビューさせてください!
快適なオフィスを保つ“ルールキーパー制度”
フリーアドレスにしたのに毎日同じ席に陣取る社員がいて固定席化してしまうケースもあるようですが、御社ではいかがですか。
吉田:前の日と同じ席に座らない、というオフィスルールを決めています。”Qiita”という社内ウィキペディアのようなツールを使って、オフィスのコンセプトやルールをまとめて共有しています。
オフィスの秩序を保つのは大事ですね。
吉田:当社ではルールキーパーという制度があるんです。オフィスのルールが守られているかチェックする役割を、全社員が1週間交代で担当します。ルールキーパーになると必ずルールに目を通すので、それによりルールが浸透していくのを期待しています。
1週間が終わったら、ルールキーパーは今週の振り返りをSlackに投稿するんです。「こういうルールを守れていないケースがありました」とか「ゴミが落ちていました」とか。
人事総務部ばかりが頑張ってルール順守を呼びかける企業が多い中、珍しい仕組みですね。
吉田:移転プロジェクトが解散してもルールが守られていくように、とプロジェクトメンバー達が考えてくれた仕組みです。
最後に、今後の展望を教えてください。
吉田:もっと人が来てくれるようなオフィスにしたいですね。今もお客様向けの講習や社内イベントを開催していますが、外部の人が気軽に来社できるようなイベントをやっていきたいです。
それから、他の会社のオフィスに行くのって楽しいですよね。私もいくつか訪問したのですが、すごく面白かった。だから当社でもオフィスツアー的な事もできたらいいなと思います。
本日はありがとうございました。
こちらこそありがとうございました。
今回協力して下さった企業様
イグナイトアイ株式会社
- 設立
- 2013年5月
- 本社所在地
- 東京都千代田区一番町4-6 一番町中央ビル
- 事業内容
- 新卒採用・中途採用向け採用管理システム事業、適性検査事業などのHR Techサービス、採用マーケティング事業
- 従業員数
- 46名 (2019年10月時点)
- Webサイト
- https://www.igniteeye.com/