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ジェイエスピーの働き方改革事例

柔軟な働き方には、社員の成熟が不可欠

投稿日:2019-03-20  最終更新日:2019-03-20  取材日:2019-02-05

株式会社ジェイエスピーが取り組んだ事

  • 残業承認制度を導入し、残業時間削減
  • オフィスの美観を重視し、採用力UP
  • 会社規模

    140人

  • 業種

    情報通信業

  • 対象職種

    全社員

柔軟な働き方の前提には、社員ひとりひとりの自律や成熟が求められるものです。今回は、社員の成熟度合いを見極めながら働き方改革に現在進行形で取り組む株式会社ジェイエスピー様にお話を伺いました。

社員を守るため、客先常駐型から自社開発型へシフト

はじめに今のオフィスについて教えてください。

当社は社員の約9割がエンジニアで、お客様先に常駐もしくは内勤がメインの働き方です。
この本社オフィスには約100人が在籍しており、本社近くにある分室では10人くらいが働いています。

勝手なイメージかもしれませんが、システムエンジニアというと残業や徹夜作業が多いイメージがあります。

昔は当社もお客様先のプロジェクトルームで仕事する、いわば派遣業的な業務スタイルがメインだったので長時間労働の問題はかなりありました。でも、「これを続けていたら身体も心もおかしくなる」と危機感を感じて、仕事のスタイルを受託開発や自社製品開発メインに方針転換しました。業務内容が変わるにつれて、徐々に残業削減や自由な働き方への取り組みも進んできたように思います。
そのおかげもあってか離職率も抑えられていて、毎年2~3%で推移している感じです。ここ10数年は高くても5%、退職者がいない年もあったくらいです。

介護用見守りセンサー「moni switch」(写真上)をはじめ、モニタリングシステムや入退室管理システムなど様々な自社製品を開発している。

社員の健康や生活を守るために働き方改革が始まったわけですね。

だいぶ取り組みが進んだとはいえ2018年は36協定の届出時間超過を出してしまったこともあり、今は残業時間削減をメインに取り組んでいます。それでも昔は平均40時間くらいだった月間残業時間が、今は24時間くらいにまで減りました。

なぜそこまで大幅に減らせたのでしょうか。

世の中の風潮が変わったことや「残業を減らそう」と呼びかけを行った効果もあると思いますが、昨年の違反を受けて、36協定の特別条項に関わる残業を申請制にしたのが大きかったと思います。今年からは、特別条項を適用する時には部長に申請しなくてはいけないルールにしたら、よっぽど面倒に感じたのか各自時間を調整して働くようになりました。

意思決定はどのようなフローで行われていますか。

社内で働き方改革を推進する部署があるわけではないので、現場チームの困りごとが私の所に集まってきて検討するような流れになんとなくなっています。そこまでコストがかかるものでなければ社長も柔軟に許可してくれますので。
先進的な働き方改革の事例も見聞きしますが、自社にマッチするかどうか効果と意義を考えながら取り入れています。一方で「うまくいくか分からないけど、とりあえず挑戦してみよう!」とチャレンジすることもあります。

実際にどんな事をやってみたんですか。

時差出勤をやってみた事がありました。定時は9時~18時ですが、夜から始まる事の多い中途採用面接のある日は21時終わりもザラで、朝からの拘束時間が長くなってしまいます。
そこで、「とりあえずやってみるか!」精神でルールを決めないまま中途面接の日だけ定時より遅く出勤してみたら、取締役からお叱りを受けまして(苦笑)。正式にフレックス出勤をしようとすると就業規則への明記や労使協定の再締結など面倒ごとが多くて、結局時差出勤は一旦やめました。拘束時間も短くなって余裕も生まれますし、通勤電車も空いてるので良かったんですけどね。もう一度再チャレンジを狙っています。

それは残念でしたね。フレックスに変えられればメリットも多そうですが。

でも、全社にフレックスを適応してしまうと、人によってはメリハリがつかなくなりそうな気もして…。成熟しきれていない社員が、理由なく安易にフレックスに流れてしまうのではないかという懸念もあります。
フレックスにするなら介護・育児など何らかの事情がある人や、さっきの中途面接に代表されるような業務上、明確な理由がある人に限定するなど対象者を決めてからの導入になると思います。

綺麗なオフィスで採用力も向上

昔は雑居ビルのような場所だったとお聞きしましたが、今のオフィスはすごく綺麗ですよね。

そうですね。昔からいる社員とは「やっとオフィスらしいオフィスに来られたね」なんて話しています。
今のオフィスは採用イメージのためにエントランスは特に見栄えを重視して作りましたし、狙い通り効果が出ていると思います。

明るく清潔感のあるエントランス

メインの執務室は全てフリーアドレスですか。

固定席とフリーアドレスを混在させています。
社員は固定席で、他社から来ている技術者や、人の増減が見込まれるプロジェクトチームにはフリーアドレス席を使ってもらっています。全席フリーアドレス化は考えていません。仮にそうしても結局は固定化しそうなので、それなら自分の席だという意識が持てたほうが良いかな、と。

什器も統一感があり機能的な本社オフィス フリーアドレス席と固定席が混在している。

本社近くに構えたサテライトオフィス(分室)

最近ではABW(Activity Based Working)のトレンドもあり、オフィスの中に集中ブースやコラボスペースなど多様なエリアを設ける企業も増えています。

エンジニアはプログラミング作業をすることも多いので、周りの雑音が気にならないような集中ブースを設置してあげたい気持ちはあります。実は、工事不要の手軽な集中ブースや電話ブースの見積もりを何度か取ってみたんですが、予想以上に値段が高くて断念しました。今はコスト的に厳しいので、やるとすれば今後移転したタイミングですね。

テレワークは都合に合わせて

在宅勤務はどうですか。

就業規則上はありませんが、育児中や妊娠中の女性を中心に在宅勤務をしている社員もいます。ある管理職社員は埼玉から横浜まで通っていて、「長時間通勤するくらいなら在宅やテレワーク勤務で良いよ」と言って在宅やテレワークに切り替えさせました。在宅勤務をするのは間接部門がほとんどです。お客様のデータを持ち出す職種ではないので、そこまで厳密なセキュリティ体制を整えなくても大丈夫かな、と。

弊社のZXY(旧ちょくちょく…)は、どんな時によく使いますか。

提案書など守秘性の高い書類を作る時や、客先に常駐している社員と打ち合わせする時などによく使っています。
逆に、覗かれたとしても差し支えない作業ならば喫茶店の方が安上がりな場合もあるので、業務内容やZXY(旧ちょくちょく…)までの交通費等々、自己判断で選んでもらっています。もちろん、喫茶店を仕事場代わりに使った場合の代金は経費として会社が負担します。

カフェ代も経費精算してくれるのは助かりますね。

わざわざ本社に戻ってくるのも面倒ですし、カフェ代よりも都内から横浜本社まで戻る交通費の方が高くつく事も多いので、そうしています。
テレワークのやり方については、ルールを増やすのも好きじゃないので、利用可能な人や頻度も制限はしていません。各自の都合にまかせて割と気軽に使えるようになっていますが、特定の人しか使わない傾向があり全社的には利用率はあまり高くないです。オフィスが働きやすければそれはそれでよい事なので、もっとテレワークして欲しいとも特に思っていません。

モバイルワークができるような端末は会社から支給しているんですか。

管理職に限定してiPhoneとモバイルPCを支給しています。それ以外の社員は、外に持ち出す必要があれば共用のモバイルPCを申請不要で自由に使えるようにしています。

では、社外でもフレキシブルに働けるようになっているんですね。

それがなっていないんです。社外からは社内のファイルサーバにアクセスできないので見積書の作成ができなかったり、業務に制限があるのが現状です。どうにか仕組みを構築しようと今していて、これができたら管理職は出社の必要が減らせるでしょう。システム開発職はセキュリティリスクがあるので、そもそも社外で作業することはありません。

テレワークは間接部門や管理職の方が中心ということですね。では、テレワークの時などコミュニケーションはどうやって取っていますか。

社内のやり取りは基本的にLINE WORKSのチャットを使っていますが、管理職以外は社用のiPhoneを支給していないので、私用のスマホにインストールするのが嫌で使っていない社員もいます。社外のお客様とは、slack(ビジネスチャット)を使ったりTV会議でやり取りしたり自由にやっていますね。

副業解禁は社員の成熟度をみながら

オフィスの一部はフリーアドレスというお話がありましたが、ペーパーレスは進んでいますか。

うーん、それは今後の課題ですね。「紙に慣れちゃってる」とか「承認印を押さないと気持ち悪い」みたいな文化が根強いのが実情です。「イレギュラーケースが出たらシステムでは対応できないから、紙の方が好都合だろう」との意見もあり、一歩踏み込めれば行けるはずなのに、変えることに対するエネルギーが足りないと感じます。

年配者ほどペーパーレスに抵抗があるとよく聞きますが、そういう理由もあるのでしょうか。

当社の平均年齢は35歳くらいなので年齢の問題ではないと思います。ペーパーレス化を本来推進するはずの管理部門が紙の仕事に埋もれてしまって、変革する意識とエネルギー、なにより余裕が足りないのかもしれません。

残業時間削減に力を入れているとの事でしたが、生活残業という言葉があるように「残業手当が減って生活が苦しくなった」などの声はありませんか。

多少はあります。そこは「我慢してね」で済ませるしかない場合もありますが、普段、客先に常駐していて通勤ルートが本社オフィスを経由するのであれば帰宅前にオフィスに立ち寄り、仕事を手伝ってもらってから帰る、など対応できる所はしています。今後、残業時間の削減と生産性の向上、給与や賞与の見直しを同時並行でやりたいな、と思っています。

残業が減った分、余った時間で副業をするのはOKですか。

つい先日も社内で話題に挙がったんですが、副業解禁はしていません。まだ一般社員の成熟度合いが足りない気がするんですよね。
本来、副業の意義は、副業先での経験蓄積や人脈作りなど本業に還元することだと思います。でも、現段階で解禁したら単純な時間の切り売り、アルバイト感覚でお金を稼ぐことが目的になってしまうのでは、と心配なんです。そうなると労働時間の管理も複雑になるし、それこそ自社での仕事をアルバイトのように捉えられたら困りますよね。

副業というよりダブルワークになってしまわないか心配だ、と。

やむを得ない事情があるなど、最後の選択肢としての副業であれば支援しないことはないと思います。
最近では副業のニュースを見聞きする機会が増えたからか、社員も関心が高まっているようです。だから、このあたりも在宅勤務制度と同じく来年度にはガイドラインを決めたいと思います。

来年度のお話が出ましたが、今後取り組みたいことは他にもありますか。

サテライトオフィスの様子をモニターで見られるようにしたいですね。以前はスカイプ内蔵TVがあったので、常時サテライトと本社とがスカイプで繋がっている状態だったんですが、TVの入れ替えをしてからやめてしまったんです。あとは、先ほどお話した社外から社内サーバーへのアクセス環境構築や、副業やテレワークのガイドライン策定も進めていきたいと思います。

会社で畑を借りて、社員交流の一環として農作業をすることも。

毎月15日には「いっしょにゴハン」という会を開催。社内でご飯を炊いて会食する(写真は2019年3月15日の様子)

今回協力して下さった企業様

株式会社ジェイエスピー

設立
1980年(昭和55年)1月25日
本社所在地
神奈川県横浜市西区高島2-6-32 横浜東口ウィスポートビル
事業内容
ソリューションサービス(ソフトウェア受託開発)、自社製品開発、エンジニアリングサービス等
従業員数
140名(2019年2月1日現在)
Webサイト
https://www.jspnet.co.jp

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