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三菱地所プロパティマネジメントの働き方改革事例(前編)

重ねるトライアル─、全社員が働きやすい環境づくりを目指して

投稿日:2019-02-12  最終更新日:2019-03-20  取材日:2018-12-13

  • 会社規模

    1,000人

  • 業種

    不動産業

  • 対象職種

    全社員

東京駅にほど近い、千代田区丸の内。皇居の豊かな緑も間近に感じられる都心の一等地に、三菱地所プロパティマネジメントは本社ビルを構えています。

今回お届けする前編では、同社が働き方改革を始めるきっかけや、取り組んできた様々なトライアルについてレポートしていきます。

今回、お話を伺った、「総務部」の田中智和さん(写真左)と、「働き方改革室 兼 人事企画部」 国持 貴子さん(写真右)。

良いことは、全社員で分かち合いたい

「働き方改革室」という専門部署があるということも、御社の取り組みの本気度を雄弁に示しているように感じるのですが、その立ち上げのきっかけについて、まずは聞かせていただけますか?

はい。当社が働き方改革をスタートさせたのは、2016年、産休・育休取得者を対象に在宅勤務トライアルのスタートからでした。まずは、ママさんたちが辞めないで、ずっと働き続けていられるような職場環境を目指して取り組みを進めていたのですが、でも、やればやるほど、ママだけの話じゃないよねって

なるほど。

また、事業領域が年々拡大しているところでもあったので、人財を有効活用しつつ、今までの働き方を抜本的に改めなきゃいけないよね、ということで、2017年に、「働き方改革室」を立ち上げて、本格的に働き方改革をスタートさせていった、と。大まかに言うと、そういった流れです。

産休・育休取得者へのサポートから始められたとのことですが、女性の社員さんも多いんですか? 不動産業だと、どうしても男性が多いイメージがあるのですが。

全体で見たら女性は3割くらいなのですが、例えば総合職の20代というところにフォーカスすると、ほぼ半分が女性です。今後会社の中核となっていく若手の女性たちも、これから様々なライフイベントを迎える年代になってきますので、それも見据えて策を練っていかなきゃいけないなと、常々感じていますね。

なるほど。それでは次に、2016年から始まった在宅勤務の取り組みついてですが、具体的に、どのように進められたんですか?

最初はトライアルからです。育児をするコーポレート部門の方を対象に、在宅という環境で、実際にどれくらい業務ができるのかを検証する、といったところから始めました。まさに手探りでしたね。対象者を広げたり、条件を少し変えてみたりしながら、2回目、3回目とトライアルを重ね、実際の制度に落とし込んでいきました。そうして、2017年7月に在宅勤務が制度としてスタート。育児・介護をしている方、妊娠している方を対象として、回数は月6回を上限(応相談)としました。

現在では、どれくらい利用されていますか?

今、実際に在宅勤務の申請をしている方は20名強いるのですが、計画的に活用してくれている方はまだまだ少ない、というのが現状です。ほとんどの方が育児を理由に申請しているのですが、いまだに「在宅は、いざという時に使うもの」という感覚が強いようで。

そうなんですね…。

現状、手応えとしては今ひとつ、といったところなのですが、それでも、トライアル期間の状況も含め大きなインプット(教訓)・気づきもありました。それは、「制度が整っても、周りの環境が整わなければ活用されない」ということ。限定した人たちへのフォローアップ策を講じて限定的な制度をいくら整えようとも、正直、全体としてのムーブメントにはなってこない、ということですね。だから、それ以降、「良いことであれば、対象者を限定せずに、全員に適用すべきだ」という想いを強くしました。

なるほど。

なので、そこからですよね。「一部の人へのフォローアップを」というスタンスから、「全社員が働きやすい環境づくりを」というスタンスへ、軌道をぐっとシフトさせたところから、当社の働き方改革は本格的に始まったんだと思っています。

心地よくデザインされた、本社内のコミュニケーションスペースにて。

在宅、モバイルワーク、フレックスと、トライアルを重ねて

ということで、在宅勤務制度の利用については、まだまだでして。そこで、現在、条件を変えて、新たに在宅勤務のトライアルを行っています。ここでは、対象をあえて管理職に絞って。

もともとの対象者だった育児・介護・妊娠中の方とは別に、対象を管理職に変えてのトライアル、ということですね。

はい、そうです。

管理職だけに限定しているのは、どうしてですか?

管理職の方々は、在宅でお仕事することにはあまり積極的じゃないんですよね、傾向として(笑)。だから、まずは管理職の方々に在宅で働くということを経験してもらって、在宅勤務の有効性をわかってもらおう、と。そうすれば、在宅だけじゃない、テレワークに対してのマネジメントにも応用が利くだろうと、そんな風に考えまして、色々な方向から試しているところです。

テレワークも導入しているんですか?

これからですね。2018年度は、その導入に向けた、モバイルワーク(在宅は不可)トライアルに力を入れてきました。

トライアルの対象は定めているんですか?

全部署が対象です。

ちなみに、モバイルワークする場所に制限などは? 例えば、セキュリティの問題で、カフェ等でモバイルワークするのはダメですよ、とか。

基本的には、どこでもOKです。もちろん、セキュリティに関しては十分に注意をすることを前提にしていますが。あくまでも、登録された社内端末を通じてしか、ネットワークに入れないシステムにしていますので。あとは、物理的な問題ですよね。周りから画面を覗かれないだとか、PCを紛失しないとか。そういったところを十分に注意してもらっています。

モバイルワークと、管理職の在宅勤務に関するトライアルのお話を伺ってきましたが、それ以外に、現在、取り組んでいるトライアルなどはありますか?

コア無しフレックス制度についてのトライアルを行っています。昨年(2017年)度から、フレックス制度を全社員に適用し、コアタイムを10時〜15時としているのですが、例えば、お子様が病気になった時などに在宅勤務制度を利用したとしても、10時に業務をスタートさせるというのはかなり厳しいですよね。

はい、そうですよね。

なので、「コアタイムを外してもらえないか」という声を、以前から多くもらっていたんです。ということで、今、進めているのは、在宅勤務をする方に、「コアタイムなしのフレックス」で柔軟に働いてもらう、というトライアルです。

あとは、店舗の担当をしているような部署ですと、シフト制で勤務していたりします。そうなると、シフトによる時間の縛りとコアタイムがぶつかるので、そういった部署でも、限定的にコアタイムなしのフレックスを導入しています。

働き方改革への挑戦が、ビジネスを豊かに広げる

なるほど〜。異なる現場を持つと、「働き方改革」と一口に言っても、一律にできないところってありますよね。

もう、今の世の中、働き方を改革していくのが当たり前、というのが潮流になっていて、むしろ、テナント様の方が進んでいたりするんですよね。そのような中で、お世話をさせていただく立場にある当社が、旧態依然の働き方のままでいては、全くお役に立てないんです。ですから、まずは、我々が働き方改革というものを自社で率先して実践し、しっかりと腑に落としていかなくてはなりません。そういった“必要”から、「働き方改革室」が立ち上がったと理解しています。

そして、そこから、新しいソリューションを生み出していくことができれば、それをまた、テナント様に提案していくことができます。プロパティマネジメント事業・不動産業を扱う会社にとって、新しい働き方に挑戦するということは、新しいビジネスチャンスを掴むきっかけづくりでもあるんです


三菱地所プロパティマネジメントの働き方改革[後編]:社員一人ひとりが自分ごとで考える、「自走式の働き方改革」を目指して に続く

この事例と同じシリーズの事例

今回協力して下さった企業様

三菱地所プロパティマネジメント株式会社

設立
1991年
本社所在地
東京都千代田区丸の内
事業内容
オフィスビル、商業施設等の建物の総合的な運営・管理サービス
従業員数
1,088名(2018年4月1日現在)
Webサイト
http://www.mjpm.co.jp

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