在宅勤務を成功に導くには、まずはメリット、デメリットを正しく把握するところから。
在宅勤務って、どんな働き方?
似たような勤務形態に「モバイルワーク」や「サードプレイスオフィス勤務」などがあります。
「モバイルワーク」はカフェやレストランなどの移動先で、あるいは電車内などの移動中に、モバイルツールを駆使して働く勤務形態。「サードプレイスオフィス勤務」は、サテライトオフィスやコワーキングスペースなど、会社以外のオフィス空間(自宅とも違う「第三の場所」)で仕事をする働き方のことです。
このように、働く場所こそ違え、「在宅勤務」「モバイルワーク」「サードプレイスオフィス勤務」の3つは、いずれも「テレワーク(Tele=離れた場所で + Work=働く)」に内包される勤務形態だと考えておけば良いでしょう。
まずは、在宅勤務のメリットの把握から。
在宅勤務のメリット
[メリット1]経費やコスト、精神的な負荷の削減
自宅で働く場合、当然のことながら、通勤の必要がなくなります。従業員にとっては、「朝の通勤ラッシュのストレスから解放される」「通勤に割いていた時間を、家事や仕事に充てられる」など、肉体的、精神的負荷が軽減されるというメリットがあります。企業にとっても、通勤手当(交通費)を支給する必要がなくなるのは大きなメリットです。さらに、会社への出勤者も減るため、オフィスの水道光熱費や消耗品費も削減でき、デスクなど什器にかかる費用も削れます。場合によっては、事務所のスペースを縮小することだってできるかもしれません。
[メリット2]業務効率や生産性の向上
多人数が集まる会社の執務空間では、顧客からの電話や予定外の会議・ミーティングなどによって、しばしば、業務が中断されることがあります。ひとつのタスクを処理している間に他のタスクが挿入されるー、複数の仕事を同時に走らせる「マルチタスク」状態です。本来、人間の脳は、一度に二つ以上のことには集中できないものだと言われています(※)。パソコンやスマートフォンなど、複数のデバイスに囲まれて生きる現代人は、ただでさえ、日常的に集中力を分散・消耗させられているのです。ということで、自宅でひとりの時間が確保できる在宅勤務は、集中力が高いレベルで維持され、業務効率や生産性を向上させ得ると考えられます。
※英国サセックス大学・認知科学センターの研究によると、複数デバイスを同時に操作する頻度が高まると、脳の灰白質(認知機能や感情コントロール等を担う)の密度が低くなり、集中力が低下するだけでなく、不安感が生じるなど心の健康にも悪影響を与え得る、とのこと。サセックス大学以外の研究機関でも、マルチタスクのリスクは様々に指摘されています。
[メリット3]多様な人材の確保、企業イメージの向上
日本の総人口は2008年にピークを迎え、以降、減少を続けています(総務省統計局の人口推計による)。これは、労働人口が減り続けていく時代に突入したことを意味しています。つまり、「中小企業はもちろん、大企業であっても、従来通りに構えていては、優秀な人材の確保は難しくなっていく」と、そんなシナリオが容易に想像できてしまう時代に差し掛かっている、ということです。
そんな中、“働き方の多様性の確保”に意識を向けない企業は、ますます求職者から選ばれにくくなっていくのではないでしょうか。在宅勤務は、勤務地・勤務時間の制限をなくし、従業員のワークライフバランスを向上させます。これは、多様で柔軟な働き方の実現を求める人たちには大きな魅力に映るはず。企業にとっては、他社と差別化するアピールポイントになります。さらに、現在働いている従業員にとっても、結婚や育児、介護など、様々なライフイベントと仕事を両立することができるようになるため、離職率の低下にも繋がると考えられます。
[メリット4]災害発生時などのリスク低減
災害発生時で、オフィス勤務が難しい場合であっても、在宅勤務で仕事ができれば、事業を継続させることができます。また、インフルエンザなどの感染症が流行した際でも、「密」を回避して感染拡大を防ぐ効果も期待できます。つまり、BCP(Business Continuity Planning /事業継続計画)の観点からも、在宅勤務を導入するメリットは大きいということですね。
お次は、デメリットを見ていきましょう。把握するところから、解決への糸口が見つかります。
在宅勤務のデメリット
[デメリット1]仕事とプライベートの線引きが難しい
自宅で仕事をするという性質上、仕事とプライベートの境界線が曖昧になってしまうというケースも珍しくないようです。家族に声をかけられたり、家事に気をとられたりして、作業が頻繁に中断されると、仕事に戻るために無駄に集中力(意志力)を費やすことになります。また、スマホやゲーム機、横になれば眠れてしまうベッドなどが視界に入り、ついついサボってしまうことも。そのように、オンとオフの切り替えができず、かえってダラダラと夜遅くまで長時間労働をする羽目になった、というような声もよく耳にします。
[デメリット2]仕事の評価が見えづらくなる
在宅勤務では、上司やマネージャーと部下が離れて働くことになるので、仕事の進捗がどうしても見えづらくなります。そのため、形として見えやすい成果物や結果だけで仕事が判断されがちになり、正当な評価が受けにくくなる可能性も出てきます。
[デメリット3]コミュニケーションのズレ、ストレス、孤独感
チャットツールやテレビ会議を活用すれば、業務上必要となる最低限のコミュニケーションは、問題なく取ることができるでしょう。しかし、どうしても、「対面」と「モニター越し」とでは、コミュニケーションに関する“情報の絶対量”が違います。同じ場所を共有することで感じられる微妙な温度感、表情の変化、そして、心の機微。モニターから届く音声がズレたり、互いの言葉がぶつかったりすると、そういったささいなズレが、いつしか、お互いの“認識のズレ”へとつながっていき、それらの一つひとつが小さなストレスとして積み重なっていく。そうして、孤独感を募らせていく人も増えてきているようです。
[デメリット4]経費計算や勤怠管理が煩雑になる
在宅勤務では、「仕事の経費」と「生活で使用する費用」の区別がつけにくく、どうしても経費計算が煩雑になります。同様に、業務とプライベートの境界線もファジーになりがちになるので、勤務時間や休憩時間、残業時間などの把握が難しく、労務・勤怠管理がしづらいというデメリットもあります。
※在宅勤務に係る経費については、以下をご覧ください。
[デメリット5]労災の範囲が曖昧になりがち
業務時間とプライベートを明確に区別しにくい在宅勤務では、労災保険を給付するかどうかの判断が難しくなる傾向にあります。労災保険が給付されるには、業務災害として認定される必要がありますが、そのためには、被った傷病が業務と関係していることが示せなければなりません(※)。もちろん、在宅勤務中に怪我をして労災と認定されたケースは存在しますが、オフィス勤務と比べると、認定に至るまでにハードルがあるのは確かでしょう(2020年9月現在)。
※[参考]労災が認められるための一般的要件
(1)業務遂行性:傷病を被った労働者は、労働契約に基づいて、事業主の指揮命令下にある状態で働いていたということ。
(2)業務起因性:労働者が被った疾病が、業務に起因して生じたものであるということ。
[デメリット6]セキュリティ問題
在宅勤務を始めとするテレワークの最大のデメリットのひとつは、情報漏洩のリスクが高まることです。在宅勤務者が、万が一、機密性の高い情報を流失させてしまったとしたら、会社やクライアントだけでなく、社会に対しても大きな被害をもたらす可能性があります。
※在宅勤務に係るセキュリティ問題については、以下をご覧ください。
在宅勤務のメリットを理解して、仕事を効率化するために
家の環境整備(労働環境整備)
在宅勤務を行う者にとっては、自宅がオフィス。そのため、家の労働環境を整備しておくことが大切です。まず検討したいのが、“執務スペース”と“生活の場”との切り分け。その上で、長時間腰を預けていても疲れにくいデスクチェアや高さを調節できるパソコンテーブル、外付けモニターなどを用意するのも一手です。目の疲れの軽減や姿勢の矯正といった効果が期待できます。また、安全にストレスなくインターネットを利用できるネットワーク環境を整えておくのも、在宅勤務を行う際には必要不可欠なことと言えます。
※在宅勤務の環境整備について、詳細は以下の記事をご覧ください。
自己管理の仕組み
在宅勤務では通常のオフィス勤務と比べると、勤務者自身が働く時間や業務の進め方などをかなり自由に決めることができるというメリットがある反面、セルフマネジメント力(自己管理能力)がシビアに求められます。
しかし、安心できる我が家だと、ついついサボってしまうもの。そこで、オススメしたいのが、「タスク管理ツール」の導入です。仕事の進捗を客観的に把握でき、業務の抜け漏れもチェックできるので、チームと離れた環境でテレワークする際には特に重宝します。
また、「スケジュール管理ツール」を活用して、短期・中長期のスケジュールを可視化しておくのも良いでしょう。業務開始から食事休憩、業務終了まで、1日のスケジュールをある程度固定化して、行動のルーチン(1日の業務サイクルのモデル)を作っておくのも、持続的にパフォーマンスを発揮するためには、とても有効なことです。
遠隔でのマネジメント、コミュニケーションの仕組み
在宅勤務を円滑に進めていくためには、「仕組みの刷新・新ルールの策定」と「マインドセットの更新」という両面からアプローチして、新しいコミュニケーションのあり方を構築していく必要があります。
例えば、在宅勤務では把握しづらい「勤怠・進捗管理」については、
(a)始業・終業時にメールや電話で上司に報告。
(b)EXCELやGoogleスプレッドシート等を利用して管理。
(c)勤怠管理ツールを導入して、勤務時間やタスク管理などを一元管理。
などの改善方法があります。
(a)は非常にシンプルな仕組みですが、部下は報告に、上司はその確認に、時間と意志力を費やすことになるというデメリットがあります。
(b)は、シートにログインして記入するだけで共有ができ、手間はないのですが、反面、始業・終業時間等の虚偽申請の可能性も高まります。
(c)については、導入コストさえ気にしなければ、最もスマートな管理方法と言えます。「勤務時間」「タスク管理」「給与支払い」など、分散管理されていたものを一元化でき、非常に便利です。
次に、遠隔でのコミュニケーション方法の改善策としては、
(d)ビジネスチャットツールやグループウェアなどを活用。
(e)ウェブを介してのチームビルディング方法を模索。
(f)「部分在宅勤務」という働き方を導入する。
(g)オンラインでの学び・研修体制の構築。
などが挙げられます。
(d)双方向での即時的にコミュニケーションが実現できる、zoomなどの会議ツールの活用することで、対面での会議と近い情報量のコミュニケーションを図ることができます。ツールによっては、会議の映像や音声を録画・録音してデータとして保存しておくことも可能です。
(e)ビジネスチャットやウェブ会議では、対面での会議と比較して、どうしても「雑談」が少なくなる傾向にあるようです。しかし、「その雑談こそがチームビルドを促し、クリエイティビティを刺激するのだ」という指摘も(※)。上司と部下、チーム間での信頼感を育てていくには、雑談を介した交歓が必要だ、というわけです。ウェブ会議では無駄話をしない、というマインドセットを改めて、オンラインでも気軽に雑談が交わせる仕組みや関係性を構築していく。そういった取り組みの重要性は、今後、ますます高まっていくことでしょう。
※現在では、そんな「リモート雑談」を促していくための「仮想オフィスツール」や「雑談専用チャンネル」なども続々登場しています。
(f)終日を自宅で仕事するのではなく、1日の勤務時間のうち一部だけ会社に出社するといった「部分在宅勤務」という働き方を導入するのも一手。短時間であっても、社員間で対面での交流を図ることができるので、テレワークでのコミュニケーション・ロスを解消できるうまい仕組みです。
(g)ライブ配信による「ウェビナー(※)」などの機会を設けて、在宅でも、社員が業務に関係する学びを深めることができる環境を構築。学びの深化やスキルアップだけでなく、会社への帰属意識の向上、在宅勤務者の孤独感の解消にもつながるものとして、現在、注目を集めています。
※「ウェビナー(Webinar)」とは:「ウェブ(Web)」と「セミナー(Seminar)」を掛け合わせた造語。オンラインセミナー、Webセミナーなどと呼ばれ、数十〜数百人規模での対話型セミナーとして開催されるケースが多い。
評価方法の明確化
日本の雇用形態は、今までは、「メンバーシップ型」が一般的でした。日本特有の終身雇用&年功序列を前提としたもので、“職務”よりも、正社員・総合職として“企業という組織”にコミットメントさせるタイプの雇用形態です。職務範囲も明確ではなく、働く場所も企業の都合で配置転換させられることもあるため、社員間で不公平感を生んでしまう傾向があります。
一方で、「ジョブ型」では、“企業組織へのメンバーシップ”ではなく、“個人の職務”に雇用契約の軸が据えられます。職務やポジション、勤務地を明確に定め、従業員は職務記述書に記載されている範囲で業務を全うします。
ジョブ型を採用し、職務に対する評価を明確化することで、社員としては、評価の不透明感・不平等感から解放され、会社としても、業務の遂行に対する自発的な責任感を従業員に芽生えさせることができる(サボりにくくさせる)というメリットがあるため、在宅勤務を始めテレワークがメジャーになりつつある近年、この「ジョブ型」への移行に取り組む企業が増えてきているようです。
まとめ
そのような選択肢のひとつとして、サテライトオフィス勤務があります。サテライトオフィスサービス「ZXY(ジザイ)」 は、新しい働き方のひとつの選択肢として、ザイマックスが運営しているオフィスサービスです。テレワークの導入・推進に対してお困りごとや不安を抱えているご担当者様、どうかお気軽にお問い合わせください。