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ジャルパックの働き方改革事例(後編)

自律型改革へステップアップ
~仕事も休みもあきらめない、ジャルパック社が提唱するワーケーションとは?~

投稿日:2018-10-10  最終更新日:2019-04-09  取材日:2018-08-30

株式会社ジャルパックが取り組んだ事

  • ICTツールの導入で移動時間のロスを軽減
  • テレワークの進化系、ワーク+バケーション=「ワーケーション」の導入
  • 会社規模

    500人

  • 業種

    生活関連サービス業

  • 対象職種

    全社員

前回の株式会社ジャルパックの働き方改革[前編]では、プロジェクトチームの立ち上げからオフィス刷新、柔軟な働き方を可能にした年休制度についてお話を伺いました。後編は、テレワーク社員のマネジメントや、新たな働き方、休み方のトレンドになるかもしれない「ワーケーション」がテーマです。

シンプルなマネジメントで両者の負担削減

在宅勤務のマネジメントに悩む企業も少なくありませんが、御社ではどのようにされていますか?

必須事項は、前日までの実施業務内容及び始業と終業のタイミングで上司に報告する事だけです。成果報告などは義務化していません。

非常にシンプルなルールですね

自分もJAL在籍時代に、成果物を実施後に提出してレポートしていたのですが、負担となり在宅勤務の推進のブレーキになることが実感として経験しているので。性善説に立って最低限の取り決めだけで運用するようにしています。

ICTツールの導入と環境整備

社員の在宅勤務の仕事風景

ICTツールの導入と環境整備

在宅勤務にあたって、ツールの導入や新たに環境整備したことなどありますか?

業務用のスマートフォンを350人に配布して使えるようにしました。また、自宅のパソコンをVDI(※)で接続して使うようにして、PCを持っていない社員には貸出しもしています。あとは、社外の取引先やお客様ともWEBミーティングも良くするようになりましたね。
VDI…Virtual Desktop Infrastructure(仮想デスクトップ)の略。サーバー側に仮想のPC環境を作り、デバイスに画面転送することで場所や端末に関わらずアクセスできる。また、端末にデータを残さないことで情報漏えいのリスクを軽減する。

社外の方ともですか?

はい、そうです。ZOOMというWEBミーティング用のソフトを利用しています。相手がアカウントを持っていなくても、こちらがメールで招待URLを送ればオートインストールされてPCとマイクさえあれば、WEBミーティングができるんですよ。

お互い移動時間のロスがなくなるのはメリットですね 。

ワーク(仕事)+バケーション(休暇)=ワーケーション ジャルパックが提唱する働き方×休み方のススメ

業界ならではの大変だった部分や御社ならではの取り組みがあれば教えてください。

良い質問(笑)、ありがとうございます。私たちは旅行業ですから、社員にも色々な所に出掛けて行って仕事をして欲しいんです。それで、ワーケーションというのを推奨しています。

ワーケーションとは?

はい。ワークとバケーションを合わせた造語で、休暇の一部を業務に充てることによって長期休暇が可能になる、という働き方です。例えば、3泊4日で海外旅行に行きたい時、その間に参加必須の会議があっても、旅行の間の一部の時間帯だけWEBミーティングで参加することで業務が成立する、というようなイメージです。

テレワークが更に進化したイメージですね。

そうです。ワーケーションが普及すれば、今まで仕事で休めなかった人が、仕事を持ち運ぶことで長い休みを取れるようになる。すると、旅行や航空機利用の動機づけ、ひいては我々、旅行業界のビジネスチャンスや地方創生にもつながると考えています 。

ワーケーションの浸透における課題は?

しっかり働いてしっかり休め!が今までの価値観でしたから、浸透に多少時間は掛かるのかもしれません。抵抗感をどうなくしていくか、という課題はありますね。

でも、欧米では1ヶ月くらいのバケーションは普通だとも聞きますね。

そうです。ノートPCを休暇先に持ち運んで合間に仕事をするからこそできるスタイルですよね。こういう働き方や旅のスタイルを日本にも広めていきたいなと思っています。

働き方改革の成果をどうみるのか?

2018年、ジャルパック社が行った親子ワーケーションモニター広告(現在は募集を行っていません)

働き方改革の成果をどうみるのか?

テレワークはどれくらい浸透してきましたか?

2017年の段階で全社員のうち62%が一回以上はテレワークを経験していて、これは初年度にしては高い数字だと思っています。

それによってどんな効果が生まれたのでしょう。

年間の残業時間数が2015年と2017年を比較すると3割減、有給取得率も約1割アップ、あとは定時に退社する意識改革も進んでいます。興味深いのは、テレワーク実施率が高い部署ほど残業率が低い、というデータも出ています。

確かに、会社にいるとキリの良い所までやりたくなってズルズル残業したり、仲間に呼び止められて意図せず残業してしまうパターンも多いですよね。

コワーキングスペース導入の検討ということでジャルパック様には2ヶ月間「ちょくちょく...(現 ZXY)」をお試しで使っていただきましたが、トライアルを終えてみていかがでしたか?

外出先でテレワークできるメリットを感じてくれたのは一つの成果かな、と。テレワークの場所は限定していないので、極端な話、カフェでも仕事はできますが、のぞき見されるリスクとか電話に出られないとか、そういった問題が「ちょくちょく...(現 ZXY)」だとクリアになるのもメリットですね。

働き方変えていくなかで生産性は上がったと感じますか?残業を減らした上に、これまでと同じかそれ以上の成果を求められる事に対して、世間では反発の声が聞かれることもありますが。

労務関連では一定の結果が出ていると思います。ただ、勤労データと成果に紐づけや根拠はありません。とはいえ、働く意欲ややる気には徐々に反映され、それがプロダクトに反映されるはずだ、と企業側は信念をもって進めていくのだと信じています。

経営側がどれだけ強い意志を持って改革推進するのか。社員に提示する、という意味でも大事ですね。

トップダウンとボトムアップのベストミックスを目指して

ジャルパック社の年間総労働時間の推移

トップダウンとボトムアップのベストミックスを目指して

今後の取り組みや課題について教えてください。

テレワークが進むと、コミュニケーションの取り方が一つ課題になるかなと思っています。
オフィスではミーティングスペースが増えてコミュニケーションが活性化したように、遠隔地でもチャットで話をできるようにするとか、環境整備や意識改革を進めたいと考えています。

2015年からトップダウンで始まった働き方改革ですが、現在はどうですか。

そうですね。これからはトップダウンとボトムダウンのベストミックス、いわば自律的な改革へシフトチェンジする段階にきています。

制度関係やハード環境など基盤構築が完了して、次の段階へ、という感じですね。

はい。「JAL OODA」という考え方なのですが、観察(Observe)を通して自ら(Orient)決定し(Decide)実行する(Act)する、という行動プロセスを社員に植え付ける教育を始めています。そこで生まれたナレッジを共有し全社的な取り組みにすべく、ホイップ(WHIP)という名の委員会も立ち上げました。

ホイップ!可愛らしいネーミングですね。どんな意味合いがあるのでしょう。

Work And Holiday Innovation Project(ワークアンドホリデイイノベーションプロジェクト)の頭文字を取りました。仕事も休みも充実させて、休日にはホイップクリームがのったパンケーキを食べに行こう!というイメージです。女性社員の発案で決まったんですよ。

新たな試み、成功をお祈りしています!本日はどうもありがとうございました。

どうもありがとうございました。

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    ジャルパックの働き方改革事例(前編)

    自律型改革へステップアップ
    ~仕事も休みもあきらめない、ジャルパック社が提唱するワーケーションとは?~

    • フリーアドレス導入により社員間の活発な議論が増加
    • 1時間単位で取得可能な“時間単位年次有給休暇”の設定

今回協力して下さった企業様

株式会社ジャルパック

設立
1964年
本社所在地
東京都品川区
事業内容
旅行業法に基づく旅行業(国内・海外パッケージツアーの企画・運営・販売・管理)および旅行会社の依頼による国内・海外手配代行業
従業員数
502名(2017年12月現在)※海外現地法人を含む、全12拠点の総従業員約800名
Webサイト
http://jalpak.jp/

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    • 最適なワークプレイスを能動的に選ぶABW(アクティビティ・ベースド・ワーキング)でパフォーマンスを最大化
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