CLOSE

ジャルパックの働き方改革事例(前編)

自律型改革へステップアップ
~仕事も休みもあきらめない、ジャルパック社が提唱するワーケーションとは?~

投稿日:2018-10-01  最終更新日:2019-04-09  取材日:2018-08-30

株式会社ジャルパックが取り組んだ事

  • フリーアドレス導入により社員間の活発な議論が増加
  • 1時間単位で取得可能な“時間単位年次有給休暇”の設定
  • 会社規模

    500人

  • 業種

    生活関連サービス業

  • 対象職種

    全社員

電話対応やシステムに縛られる業務が多い旅行業において、テレワークなど働き方改革は難しいものとされてきました。しかし、従来の価値観に固執せず、着実にワークスタイルの変革を実現しているのが株式会社ジャルパックです。
事業所は国内3拠点、海外9拠点、全社員500余名にのぼる大所帯の働き方改革は2015年にJALグループ横断的なオーダー、いわばトップダウンで始まりました。そこから、制度改革、ICTツールの導入、オフィス刷新、社員への意識・啓蒙という改革の4つの柱を据えて遂行する事、約3年。かつてのトップダウン型から社員自らが自発的に改革を進める段階にまで至ったといいます。更には、新たなトレンド、ワークとバケーションの融合「ワーケーション」への取り組みもスタートし、ますます業界の先陣をきって改革を進める同社。
働き方改革のゴールは「仕事場以外での個人の成長による、高収益体質への変革を目指すこと」と語る、株式会社ジャルパック人事総務部人事総務グループマネジャー働き方改革担当の宮野浩臣氏にお話を伺いました。

トップダウンで始まった働き方改革

宮野さんの名刺の肩書きには『働き方改革担当』とありますね。かなり本格的に取り組まれている様子が伺えますが、まず、働き方改革が始まった経緯からお聞かせください。

はい。母体であるJALの働き方改革が2015年4月からスタートし、その後、ジャルパックを含むグループ各社に対して指示が出されたのをきっかけに、2015年8月社内で“ワークスタイル変革推進プロジェクトチーム”が立ち上がりました。

プロジェクトチームの選定はどのように?

まず、業務分野によって社内を4つのグループに分け、各グループから3名ずつのメンバーを会社から指名しました。メンバーは、推進力を持った部長やグループ長クラスの人材です。彼ら12名と人事総務の事務局が一緒になり、プロジェクトチームができました。

オフィスの9割をフリーアドレスに

人事総務部人事総務グループマネジャー働き方改革担当の宮野浩臣氏

オフィスの9割をフリーアドレスに

チーム立ち上げ後、どういった所から着手しましたか?

まずはフリーアドレス化から着手しました。弊社はどうしてもシステムに縛られる業務が多いのですが、そこは「やれる・やれないではなく、やるんだ!」と舵をきって進めました。もちろん固定席でないと生産性が落ちる部門、例えば、旅客サービスや電話を取る部門は固定席を残しています。

最終的には何割くらいがフリーアドレスになりましたか?

全社員約500名に対して固定席が50席ですから、約9割の社員はフリーアドレス席になりました。

ほとんどがフリーアドレス席になったのですね。社員の反応はどうでしたか?

やはり抵抗はありました。旅行パンフレットの原稿など紙が多い業態ですから、フリーアドレス化することによってそれらの紙媒体を毎回ロッカーにしまうのか、とか、個人情報を扱うのにフリーアドレスは適切なのか、など疑問や反発はありました。

そうですよね。宮野さんはそれらの声にどう応えたのですか。

シンプルに「(持ち物は)しまうんです」と回答していました。嫌だ、と言われても「やりましょう」と。ただ、そこの仕切りは私一人では難しいわけで。

そこで一緒になって動いてくれたのが、プロジェクトチームの12名の方というわけですね。

そうです。彼らは現場の代表でありながら改革も推奨する立場でしたから、最終的には現場の社員たちを説得してくれました。そこは、人事総務の事務局だけでは難しかったと思います。
各社員に専用ロッカーが割り振られ、資料などを収納するルールになった。

フリーアドレス化で得たものとは

フリーアドレス化で得たものとは

時には抵抗がありながらも進めてみてどうでしたか?

不満の声は減ってきていると感じます。自分も(元々、所属していた)JAL時代にはフリーアドレス化に反対した一人でしたから。

意外ですね。それはなぜですか?

フリーアドレス化になると固定電話がなくなって携帯電話になるでしょう。すると、長時間、自分が不在にする場合、例えば10時間以上のフライトですとか。固定電話なら誰かが電話を取って対応してくれますが、携帯だとお客様と連絡が取れない状態が長く続いてしまうのは良くないと思ったんですね。

確かに、そういった業界ならではの事情もあるのですね。

でも、自分が電話に出られない時は代理者に引き継ぐなど対応してきました。シンプルな対処法で最終的には馴染んでくるものだという実体験がありましたから。

一連の働き方改革で、一番良かったと感じるのはどんな部分でしょうか?

沢山ありますが、一番はオフィスの空間効率が良くなった結果としてミーティングスペースが増え、社員間の活発な議論が増えたことだと思います。今までの固定席中心ではスペース効率が悪くて、ちょっと話せるスペースというのが足りていませんでした。

制度改革~子育て社員に好評、1時間単位の有給制度~

ちょっとした相談や打ち合わせがすぐできる、ミーティングスペース

制度改革~子育て社員に好評、1時間単位の有給制度~

フリーアドレス化以外にはどんな取り組みをしましたか?

はい。まず勤怠関連では2016年4月から、有給休暇を1時間単位で取得することができる“時間単位年次有給休暇”を設定しました。

魅力的な制度ですね。

はい。特にお子さんのいる女性社員から好評で、非常に多くの社員が使っている制度です。例えば、何時間か早く退社して子供の面倒を見るとか、学校行事に参加してから出社するとか。

確かに。半休までは不要だけど何時間かだけ休みが必要なシーンは結構多そうですね。

フレックスタイム制度がまだないジャルパック社では、この年休制度をうまく使って柔軟な働き方をしている社員が多いですね。フレックスタイム制度も2ヶ月間のトライアルがちょうど終わって、今、勤怠システム面の詰めの段階にきています。

後編では、テレワーク社員のマネジメントや、新たな働き方、休み方のトレンドになるかもしれない「ワーケーション」の取り組みについて詳しく伺っていきます。株式会社ジャルパックの働き方改革[後編]に続く

この事例と同じシリーズの事例

    • オフィス環境
    • 生活関連サービス業

    ジャルパックの働き方改革事例(後編)

    自律型改革へステップアップ
    ~仕事も休みもあきらめない、ジャルパック社が提唱するワーケーションとは?~

    • ICTツールの導入で移動時間のロスを軽減
    • テレワークの進化系、ワーク+バケーション=「ワーケーション」の導入

今回協力して下さった企業様

株式会社ジャルパック

設立
1969年
本社所在地
東京都品川区
事業内容
旅行業法に基づく旅行業(国内・海外パッケージツアーの企画・運営・販売・管理)および旅行会社の依頼による国内・海外手配代行業
従業員数
502名(2017年12月現在)※海外現地法人を含む、全12拠点の総従業員約800名
Webサイト
http://jalpak.jp/

SEARCH

RECOMMEND

    • オフィス環境
    • ワーカーの啓発・教育
    • 専門・技術サービス業
    • 2019-05-23

    コニカミノルタジャパンの働き方改革事例(後編)

    「いいじかん」を実現し、創造性・生産性を高める働き方を

    • 既存の拠点をテレワーク可能なサテライトオフィスへとリデザイン
    • 「保管文書ゼロ化」への取り組み
    • 働く時間を削るのではなく、“いいじかん”を増やす、「いいじかん設計」を提唱
    • オフィス環境
    • 情報通信業
    • 2019-03-26

    インフォコムの働き方改革事例(前編)

    はじまりは、ファシリティへの取り組みから

    ユーザー系システムインテグレーターとして、帝人グループ等に向けて情報システムの企画・開発を行いながら、近年では、コンタ…

    • オフィス環境
    • 人事制度
    • ICT投資・活用
    • ワーカーの啓発・教育
    • 製造業
    • 2019-04-26

    富士通の働き方改革事例(前編)

    働き方改革を駆動させる「3つの要素」と「3つのワークプレイス」

    • 「制度・ルール」「ICT・ファシリティ」「意識改革」の三位一体の取り組み
    • ワークスタイルの選択やデザインを、現場の自主性に委ねる
    • オフィス環境
    • 人事制度
    • ICT投資・活用
    • ワーカーの啓発・教育
    • 情報通信業
    • 2019-05-27

    パーソルプロセス&テクノロジーの働き方改革事例

    働き方改革の専門家集団が目指す、100%テレワークと生産性向上

    • 働き方の原則はテレワーク、採用にも好影響
    • 残業削減やフリーアドレスの固定席化防止に、ICT技術を活用
    • 副業を解禁、週休完全三日制を目指して実証実験を開始

働き方改革の事例一覧に戻る