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リンクアンドモチベーションの働き方改革事例

テレワーク“非”推奨。リアルなコミュニケーションにこだわる理由。

投稿日:2019-04-01  最終更新日:2019-04-01  取材日:2018-12-21

  • 会社規模

    1,400人

  • 業種

    サービス業

  • 対象職種

    全社員

世界初のモチベーションにフォーカスしたコンサルティングサービスを提供する、株式会社リンクアンドモチベーション。2000年の創業以来、従業員数、グループ会社数、共に規模を拡大し続けています。2017年5月には銀座エリア最大の商業施設、GINZA SIXのオープンと同時に上層階のオフィスフロアに入居。都内に分散していた拠点の統合移転をしました。多くの企業が働き方改革の一環としてオフィス以外での業務を推奨する中、同社では意外にもテレワークを勧めていません。リアルなコミュニケーションに徹底的にこだわる理由とはいったい何なのでしょうか。グループデザイン室広報・秘書ユニットマネージャー川村宜主様にお話を伺いました。

今回、お話を伺った、グループデザイン室広報・秘書ユニットマネージャーの川村宜主様。

人は金銭報酬だけでなく、感情報酬も求めている

本日は御社の働き方改革について、オフィス戦略と交えながらお話を伺いたいと思います。

よろしくお願いします。まず、働き方、オフィス、どちらも前提に“人間観”と“組織観”という考え方があります。

“人間観”と“組織観”とは?

まず、“人間観”とは人というものをどう捉えるか?人間とは完全合理的な経済人ではなく“限定合理的な感情人”である、という考え方を私たちはします。仕事で「ありがとう」と言ってもらえる、成長実感がある、このチームが大好きだ、こういう感情もひとつの“報酬”です。

金銭報酬ではなくて、感情の報酬ということですか?

そうです。金銭報酬に加えて感情報酬も大切だ、という考え方がベースにあるからこそ、
オフィスでもリアルなコミュニケーションに軸足を置いているんです。

それでは、もう一つの “組織観”とは?

組織とは“要素還元できない協働システム”、という考え方です。
つまり、組織のコミュニケーションとは身体でいうところの血流みたいなもの。
どれくらい同じビジョンを持ってコミュニケーションが取れているか?組織が大きくなれば複雑性が増しコミュニケーション不全が起こる。身体でいうところの血液ドロドロ状態になります。だから、コミュニケーションをいかに円滑にするかが大切なんです。
組織の問題は“人”ではなく“間(あいだ)”に生じます。間の問題を解消するためにコミュニケーションを発生させる、シナジーを生む。その為には物理的な距離を近くして一緒に仕事するのが大切になります。

なるほど。御社ではどうやって“血液サラサラ状態”を維持・向上しているんですか?

当社の場合は、三ヶ月に一回のグループ総会や毎朝の社内新聞、毎週の社内動画ニュース、毎月のトップメッセージ等々、まず社内メディアやイベントを駆使して情報を共有しています。

三ヶ月に一回の総会は、本社と拠点をTV会議などで繋いでやるんですか?

いえ、イベントホールを借りて実際に集まってやっています。
全社員1,400人中1,000人位が集まるのでコストは掛かりますがそれだけの価値があると思っていますから、こだわってやっています。

総会で一番注目が集まる表彰。身近な人の受賞に刺激を受け「次は自分が!」というモチベーションにもつながるという。

かなり大掛かりですね!総会ではどんな事をやるんですか?

定例でやっているのは、商況報告、個人の表彰、トップメッセージの3つです。
組織の普遍的な課題はOne for All, All for Oneをどこまで追求するか、なんです。
for Oneは個人のモチベーション、逆に for Allは会社全体を指しますが、どちらかを取るのではなく、どちらも取るんだ、というのが企業の普遍的な悩みというわけです。

OneとAllのバランスが難しい、と。

そうです。クライアント企業でも「会社の方針戦略と個人のモチベーションが揃わない」、「3ヶ年計画を立てたが社員に浸透していない」など、バランス感の難しさから来るものが多いです。
当社でもこの普遍的なテーマを実現するために、オフィスや研修、採用のあり方など全てを仕組みとしてつくっていったのです。

One for All, All for Oneを実現するオフィス

この本社オフィスは、GINZA SIXのオープンと同時に移転したんですよね。

はい。移転したのが2017年5月なので一年半になりますね。
移転前はグループ会社が都内各所に散らばっていたり、手狭で分室が増えたり、と距離感が広がってしまって全社的な視点が欠けつつありました。そこで、統合するにしてもこれだけ広いフロアが取れるのはGINZA SIXしかない、ということで話が来た時にすぐに手を挙げました。

オフィスは全体的にゆったりとした雰囲気ですね。

そうですね。今、だいたいワンフロア約1,860坪に派遣社員等も含めて900人弱が働いています。
執務スペースは基本的にフリーアドレスですが、部署や法人単位のエリア分けは管理本部が決めています。
一般的にはグループアドレスとも言いますが、私たちはコミュニケーションをデザインする、という意識から “デザインアドレス”と呼んでます。
「こことここはシナジーを生んで欲しい」「こことここが情報共有できればメリットがあるな」という意図を持ってエリア指定をしています。もちろん指定したエリア内での移動はご自由にどうぞ、と。

TOWNと名付けられた執務エリア。ワークスペースは仕切りのない大空間。

オープンコミュニケーションを徹底的に重視しているので、執務スペースには壁がありません。ですから、時々1人になれる場所がなくて「うっ…」と息が詰まることもあるみたいですが(苦笑)。

そういう時はどうしてるんですか?

場所を変えるだけでも十分気分転換して集中できるので、皆そういう風にしてます。
きちんと許可を取れば、カフェなど他の場所でも仕事するのもOKですし。

灯台をイメージしたフリースペース。社内には雰囲気の異なるスペースが複数あり、気分転換にも一役買ってくれる。

デザインアドレスで配置を決める指針があれば教えてください。

明確な指針やマニュアルはありませんが、シナジー創出を期待して部署配置を決めています
単に部署や法人ごとにレイアウトするだけではシナジーは期待できませんし、全くのカオスは無意味です。
例えば、㈱リンクグローバルソリューションという海外進出企業向けのコンサル会社と大手企業部隊は関連性が強いので、近くに置いて連携強化を狙っています。配置ひとつとっても会社からのメッセージが込められているわけです。
また、M&Aで新しくジョインする法人が入ってきた時にもフリーアドレスならば柔軟に配置変更ができます。

実際にデザインアドレスの効果は出ていますか?

そうですね。「やり取りが早くなった」とか「情報共有がしやすくなった」という反応は多いです。

逆に弊害はありませんか?

そうですね・・・。人材紹介事業は、求職者との電話面談等があるのですが、隣の部署が達成して盛り上がっていたりすると「電話中だから静かにして!」みたいなことがあったりもしました(苦笑)。そこは配慮を促すキャンペーンをするなど対応しています。
M&Aをすると文化の違いから「えっ?」と思う事も初めはありますが、同じ場所で働く事で馴染みが早くなるのは感じます。心理的距離を縮める為にも同じ場所で世界観を共有しながら働くことは大事だと思っています。

世界観を共有、とは具体的にいうと?

ここの本社オフィスは“LINK PORT GINZA”と名付けていて、リンクアンドモチベーショングループ全体の世界観を“SAILING(航海)”と設定し、各支社は“SHIP(船)”、この本社は船が集まる“PORT(港町)”に見立てて設計しています。

テレワークを推奨しない理由

オフィスよりも公園の芝生で仕事する方が集中できる、みたいな経験が自分にはあって。 人によって働きやすい場所って違うと思うんですが、その辺りはどう考えますか?

その日の気分によってあり得る事ですし、多様性があって当然だと思います。
ただ、テレワークは推奨していません。テレワークできるシステムは整えていますし、必要な時に上司の許可を事前に取って実施するのはOK。でも、会社として推奨するのはオフィスです。
個人、いわゆるfor Oneの要望に対応しすぎると、多様性を生みすぎて全体がバラバラな方向にいってしまうんです。

会社としてくっつけるものがないと、バラバラになって戻らなくなってしまう、と。

そうです。ましてや会社が大きくなると機能も階層も分化が勝手に進んでいきますから、
統合方向のベクトルを強く作らないとバラバラになって生産性は落ちます。
だから、働く場所も統合しないと上手くいかないと思うんです。

では、会社としては統合の方向でこれからも進んでいく、と?

いえ、“or”ではなく常に“and”の姿勢が必要ですから、分化に理解を示しつつも
「でも、みんなでいくのはここだよ」と統合に導いていく、と。

将来的にVRなど技術が進歩すれば一ヶ所に集まって働く必要性が薄まる可能性もあると思うのですが、その辺りはどうですか?

テクノロジーが発達して実用化が進めば、一気に世界が変わるタイミングは来ると思います。
ですが、テクノロジーが“人と人と間に起こる偶発性”をどこまでカバーしうるのかは疑問です。
人間とは“限定合理的な感情人”である事や、感情でビジネスが発展していくこともある、と考えれば尚更そうです。テクノロジーがそういう偶然性みたいなものまで捉えられるのであればアリかもしれませんが、一気にそこに行けるとは思えません。

偶然性がさほど求められないビジネスシーン、例えば総会みたいなものであればどうでしょう?

グループ総会などはテクノロジーに代替されていく可能性はあるかもしれませんね。でも、総会ならではの空気感や一体感までは難しいですよね。うーん、ケースによって使い分けしていくんでしょうね。
ただ、オフィスが不要になる、という考えは個人的には反対ですね。

ビジネスモデルに合ったオフィスがあるはず

前回、今回と移転で銀座を選び続けるのはなぜですか?

会長の小笹の拘りですね。前職のリクルート時代から銀座なので、銀座に恩返ししたい気持ちや思い入れもあるようです。

オフィスを選ぶ時に、エリアがもつアメニティ機能が今後はより重視されるのでは、と予想しているんですが、銀座ってそういう意味ではどうですか?

アフター5のお店が充実していますし、アクセスも良いですね。でも、ランチは結構高いし1階まで降りるのも面倒なので、業者さんにワンコインランチを売りに来てもらっています。結構人気で毎日200~300食くらいは売れますね。

社員食堂やカフェスペースを社内につくる企業も増えていますが、御社では特に設けていませんよね。

社員から要望はありましたが、あえて作りませんでした。
そこよりもフレキシブルに働けるスペースやコミュニケーションを取れるスペースに投資した方が良いのでは、と判断しました。個人の満足ばかりを追求しない、という線引きですね。

24時間、会社が飲食物を無償で提供します、ってGoogleがきっかけで広まりましたね。

それぞれの業種やビジネスモデルに合ったオフィスのあり方があるはずで、
Googleのようなオフィスを作ったからといってGoogleみたいになれるわけではないよ、と(笑)。

多目的スペースのコンセプトは”働・学・遊の融合”とのことですね。

創業当時から言ってる言葉です。労働は苦役、という社会通念がありますが、本当にそうだろうか?と思っています。本気で取り組んでいる時って、働く・学ぶ・遊ぶが区分されていませんよね。融合しているのが一番良い、という考え方です。多目的スペースは部署や会社を超えたコミュニケーションの創出を期待しています。

PARKと名付けられた多目的スペース。食事や打ち合わせ、勉強会等々に使われ、モニターには社員に知っておいて欲しいタイムリーな情報が常に流れている。

ここでイベントを開いたりするんですよね。

ええ。例えば、週に一度トレーナーさんを呼んでストレッチをしてみたり、夜にはケータリングを取って軽いパーティをする部署もありますし、ランチ販売もここでやっています。

重要な経営指標=従業員エンゲージメントを数値化

会議室には何か工夫はありますか?

世界観の徹底ということで、会議室の名前やデザインを統一していますね。
あとは予約だけして使わない事もありえると思ったので、会議室の予約システムも入れました。
フラッと来ても空室があれば使えますし、やっぱり便利です。

内装の細部にまで世界観が作り込まれた会議室エリア。それぞれの会議室にコロンブスやヴァスコ・ダ・ガマなど冒険家の名前が付けられている。

会議室の利用頻度などは測ったりするんですか?

一時期、テーブルの下にセンサーを付けて、総務部が利用頻度を調べてはいたみたいですけど。
私たちの物差しはそういう事よりも従業員エンゲージメントを数値化する、エンゲージメントスコアを大きな経営指標としています。

“従業員エンゲージメント”というのは、どうやって測定するのですか?

人が働く上で、会社に対するエンゲージメントを感じる64項目について年二回サーベイを取っています。その期待度と満足度をプロットした4,330 社100万人のデータを蓄積・分析したところ、エンゲージメントスコアと営業利益や生産性の伸び率には相関があるのが分かりました。個々の生産性が高ければ会社の生産性が高いわけではない、個別最適は全体最適にならない、という発想です。

同社が提供するサービス、モチベーションクラウドのイメージ

100万人分!それは貴重な財産ですね。本日は貴重なお話をありがとうございました。

こちらこそありがとうございました。

今回協力して下さった企業様

株式会社リンクアンドモチベーション

設立
2000年3月27日
本社所在地
東京都中央区銀座 6-10-1 GINZA SIX 12F
事業内容
モチベーションエンジニアリングによる企業変革コンサルティング等
従業員数
約1,400名(連結、2019年3月時点)
Webサイト
https://www.lmi.ne.jp/

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