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八洲電機の働き方改革事例(前編)

創業70周年の会社が、本社建替えを機に挑んだ働き方改革

投稿日:2019-01-17  最終更新日:2019-01-17  取材日:2018-09-12

  • 会社規模

    1,000人

  • 業種

    専門・技術サービス業

  • 対象職種

    全社員

商社から電機技術商社、そして高い技術力を誇るエンジニアリング会社と変遷し、プラント、産業・交通事業を中心に幅広い製品・ソリューションを提供する八洲電機株式会社。創立70周年を機に本社ビルの建替え計画がスタート。それは単に建物を新しくするだけではなく、働き方も一緒に変えよう!という大胆な計画でした。
前編では、働き方改革が始まったきっかけから改革の内側、実行、現状の課題まで余すところなくお話しいただきます。

本日はよろしくお願いします。まず、働き方改革が始まったきっかけから教えてください。

当社の働き方改革が始まったのは、本社ビルの建替えがきっかけでした。
以前の本社ビルが老朽化し築年数が50年を超えた頃から建替えや移転が課題になっていました。また、2011年の東日本大震災では揺れがひどく社員から不安の声も出たほどで、結果的にそれが契機となって本腰を入れることになりました。
本社の敷地が手狭だったので「建替えよりも移転が適当ではないか」という案もありましたが、思い入れのある地ですし、当時はちょうど働き方改革が広まりだした頃で「将来的に時間と場所を問わず仕事ができるようになれば広さの問題はクリアできるはずだ」という決意もあって、建替えが決まりました。
そして2014年、「本社建替えプロジェクト」と同時に、これからの働く場所や働き方を考える「ワークプレイスプロジェクト」が発足、それから2年後の2016年に新本社ビルが完成しました。

左から、人事部部長 平野健治様、ダイバーシティ推進部部長 安彦直美様、ダイバーシティ推進部人事三課 新里美幸様、執行役員人事本部長 三浦達也様

ワークプレイスプロジェクトのメンバーはどのように決まったのでしょう?

まず、プロジェクトの中に①オフィスプレイス②文書管理③ICT④制度仕組み⑤環境設備という5つの分科会を作り、立候補制でメンバーを募集しました。その後、必要な職能を持った社員をこちらから任命して分科会に参加してもらいました。

改革にあたって何から着手しましたか?

まずは新本社ビルの仕様から着手しました。社員の要望をできる限り新オフィスに反映させる為に社員アンケートを実施し、執務エリアや什器、トイレに至るまで細かい要望も取り入れました。また、社員の行動調査を行い、頻繁に使う場所や関係性の深い部門、在席率などを分析してゾーニングやフロア配置を決めました。

制度・仕組みでは、どのような改革をしましたか?

モバイルワークの基礎をつくる意味でも、まずは直行直帰を推奨することから始めました。
すると「自宅近くのサテライトオフィスから顧客のところへ直行したい」という要望等が社員から出るようになった為「ちょくちょく...(現ZXY)」の契約に至りました。1日何社も企業を訪問する営業社員にとって本社に戻る移動時間が大きなロスでしたが、スキマ時間に「ちょくちょく...(現ZXY)」に立ち寄り仕事するようになって時間の有効活用に繋がりました。あくまでスキマ時間の利用がメインなので、15分単位の短時間利用ができるのが当社のニーズにマッチしていると感じます。

ほかにはどんな制度改革がありましたか?

ひとつは時差出勤です。通常、就業時間が8:45~17:30のところ、時差出勤では6:45~の始業もOKにしています。特に繁忙期にうまく活用する社員が多いです。
ふたつめはスーパーフレックスタイムの導入です。当社のフレックスタイムは月間の所定労働時間の範囲内で各自調整し、コアタイムは設定していません。

制度を取り入れてみて、社員の反応や効果はいかがですか?

サテライトオフィスに関しては「スキマ時間が有効活用できて良い」、「短時間利用できるのが便利」という意見がある一方、「使いたい場所にない」「営業時間を延ばしてほしい」という意見も寄せられています。
フレックスタイムに関しては導入前に社内報での告知と併せて全社員向けの説明会を実施しました。
さらに普及促進に向けて、現在は一部の社員を制度活用モニターに任命し、その上長と共に、活用の推進を図り、柔軟な働き方を実践してもらっています。
こうやってモニター社員が制度を活用する姿を見て、全社的な普及に繋げていきたいと考えています。

課題はどの辺りにあるとお考えですか?

上長の意識改革だと考えています。常に生産性向上の意識をもって、上長が部下に利用を促してくれるようになればと思います。
また、現在は入社3年目以下の若手社員はフレックスタイムの対象外としていますが、対象制限を緩和して早いうちから柔軟な働き方を身に付けてもらうことも検討しています。
なお、フレックスタイムではありますが館内は20:30で完全消灯し、退社時間には厳密になっています。

在宅勤務の制度もありますか?

はい。育児又は介護を理由とする社員を対象に、時間は1日トータル3時間までという決まりで申請方式にしています。月間の利用上限回数を設けていないのでフレックスタイムとは相性が良いはずですが、利用者は実質まだ4名です。「制限時間が短すぎる」「他の人が利用していないので、使いづらい」などの声は聞こえてくるのですが、まずは利用者を増やして意見を集計中です。

コミュニケーション増進のための取り組みはしていますか?

今はテレワーク推進の段階ですのでまだコミュニケーション不足の問題は発生していませんが、将来に向け、カメラ付きPCを導入するなどFace to Faceの環境整備を検討しています。

「紙中心のワークスタイルを変革する」というポイントが貴社の働き方改革の三本柱のひとつになっていますね。

紙資料は移転のたびに減らしてきて以前に比べると4分の1まで減りましたが、今も途上段階で文書管理の分科会が活動しています。
例えば、会議にノートPCを持ち込むようにはなってきましたが、会議資料のペーパレス化はまだできていません。印鑑文化が要因のひとつかもしれませんが…。
毎週金曜日をペーパーグッバイデーと名付けて書類の整理と処分を行う日にし、社内放送でも呼びかける取り組みを建替え前の2015年から現在も続けています。

一連の改革に伴って導入したICTツールはありますか?

まずは全社員にスマートフォンを配備し、その後、モバイルワークに適した薄いタイプのシンクライアントPCを用いて場所的制約は一切ない環境を構築しました。
フレックスタイムや時差出勤の導入にあたってはスケジューラーのソフトを活用して、社員同士の予定をスマートフォンでも確認できるようにしました。

今後の展望についてお聞かせください。

新しい制度を社内に浸透させていくのもそうですが、世情や社員の声をよく考慮して制度自体をブラッシュアップしていきたいと考えています。

貴重なお話をありがとうございました

ありがとうございました。それではこれから社内を案内しましょう。


後編では、2016年に完成した新本社ビルを全館リポートします。フレキシブルな働き方を加速させる空間の秘密や、コミュニケーションを活発化させる工夫が随所に盛り込まれた新時代のワークプレイスを是非ご覧ください。

この事例と同じシリーズの事例

今回協力して下さった企業様

八洲電機株式会社

設立
1946年8月8日
本社所在地
東京都港区新橋三丁目1番1号
事業内容
日立製作所グループの製品を主力として提案営業やシステム等の設計・施工・販売等を行うエンジニアリング会社。鉄鋼・石油・エネルギーなどのプラント分野、一般産業分野、鉄道を中心とする交通分野に至るまで幅広く社会に貢献。
従業員数
連結997名(2018年3月現在)
Webサイト
https://www.yashimadenki.co.jp

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