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登壇者紹介
リデザインワーク株式会社
代表取締役社長林 宏昌氏
株式会社リクルートにて、経営企画室長を担い株式公開を実現。広報ブランド推進室長、働き方変革推進室長を歴任。2017年リデザインワーク株式会社を創業し、経営戦略・働き方改革・人事戦略・DXのコンサルティングを推進。現在、株式会社ベーシックCOO、情報経営イノベーション大学客員教授も兼任。3児の父。
登壇者紹介
株式会社ザイマックス不動産総合研究所
主任研究員石崎 真弓
リクルート入社後、リクルートビルマネジメント(RBM)にてオフィスビルの運営管理や海外投資家物件のPM などに従事。2000 年RBMがザイマックスとして独立後、現在のザイマックス不動産総合研究所に至るまで一貫してオフィスマーケットの調査分析、研究に従事。近年は、働き方と働く場のテーマに関する様々な調査研究、情報発信している。
6割以上の企業がワークプレイスの見直しを重視している
(石崎)まず、経営課題としてワークプレイス戦略見直しを重視しているかとの問いに対して6割以上の企業が「重視している」と答えました。
また、重視している企業ほどコロナ収束後もテレワークを続けて出社率を抑えようとする傾向が強い一方、重視していない企業では「テレワークをやめて100%出社に戻す」という回答が一番多い結果となりました。
このことから、頻度の差はあれど全体的に見ればテレワークを続ける企業が大多数を占めていることが改めて確認されました。
ワークプレイス戦略重視の企業ほど、ハイブリッド運用が進む
続いてテレワークする場所について尋ねたところ、ワークプレイス戦略見直しを重視していない企業では自宅一択が半数以上を占めています。一方、見直しを重視している企業では、約6割が既に在宅勤務とサテライトオフィス整備を併用するハイブリッド運用を始めていました。
今後ハイブリッド運用が定着するにつれてワークプレイスの使い分けを実践する企業は増えていくでしょう。実際に今日の事前視聴者アンケートでも、皆さんの一番の関心事項はシェアオフィスやサテライトオフィスなどサードプレイスオフィスに関することでした。
この後は、数々の企業の働き方改革を成功に導いてきたリデザインワーク株式会社の林社長に、ワークプレイス戦略の実践的なお話を聞いていきます。
経営戦略コンサルタントが語る、次世代ワークプレイスの構築
では、機能や目的に応じたワークプレイスとはどんなものでしょうか。
目的に応じた複数のワークプレイスを設置
目的に応じて設けた複数のワークプレイス(黒い点線)がオンラインで有機的に繋がり、柔軟かつ効率的な働き方が可能になる。
前提としてサイバーオフィス(=オンライン)で業務ができる土台を整えた上で、目的の異なるワークプレイスを複数用意しました。そのうち幾つかをピックアップして説明します。
①顧客隣接ワークプレイス
顧客の多いエリアにZXYのようなタッチダウンオフィスを複数開設した。目的は、移動時間を最小限にしてお客様と関わる時間をもっと増やすこと。営業マンは本社ではなく、顧客に一番近いタッチダウンオフィスに立ち寄って作業することで移動が減り、その分、アポ件数を増やすことができた。
②オフィス内オープンスペース
ベンチャー企業など他社が出入りできるシェアオフィスのようなオープンスペースを社内に設けイノベーションを促進した。新しい風が入るだけでなく、オープンスペースを利用していた企業から新規業務を受注するなどの成果も出た。
③サテライトオフィス
自宅では什器や環境が整わず在宅勤務できない社員が若手中心に大勢いた為、本社のように設備の整ったサテライトオフィスを開設。郊外に設けることで長距離通勤が解消され、生産性を損なうことなく働けるようになった。
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以上は一例ですが、それぞれのワークプレイスが担う目的と役割を明確にしてから運用を始めるのが大事です。働く場所の分散化に関心が高まっていますが、分散自体が目的になってはいけません。課題に対する手段として異なる目的に対応したワークプレイスを用意するのが大事です。
課題を細分化すれば対策が明確になる
(林)でも、それらの課題は本当にテレワークが原因でしょうか?実は、そもそも問題だったのがコロナをきっかけに表面化しただけの可能性があり、根本的な対処法が求められていると感じます。
そこで、私が実践しているのは、問題をひとつひとつ抽出してそれぞれの対処法を探ることです。
では、実例を挙げて解説しましょう。
以下は、一口にマネジメントと言っても具体的にどんな問題があるか、細分化して仕分けした図です。
問題を小分けにして整理するため「問題の性質(仕事or人)」と「タイムスパン(短期or中期)」の4象限に分けて考えた。
例えば、「チーム作り(図の右上)」という課題があるとしましょう。
それを細分化して見えてきた「中途入社の社員のフォローが難しい」という課題の対策として、基本はフルリモート勤務だけど最初の一週間はチーム全員が出社して対面でOJTしようとか、毎朝オンラインで会話しようとか、具体的なアイデアが出てきます。そしてトライアルを積み重ね、上手く行った方法を全社に広めていくのです。
このように問題を細分化して対応できれば「マネジメントが難しいからテレワークをやめよう」なんて短絡的な考えにはならないはずです。
質疑応答
質問①テレワークを始めたいが、どうやって経営陣を説得したらいい?
(林)まず小規模なトライアルをしてみて、その結果を元にディスカッションするのをお勧めします。経営陣を説得しようと他社の事例を持ち出しても『参考にならない』と言われてしまうんですよ。最初から全社横断でやるのは難しいので、幾つかの部署に限定して、目的と指標を決めて実験し検証するのが良いです(下図②参照)
前職の働き方改革の責任者時代、サテライトを全社導入したのに全く使ってもらえない事がありました。そこで、50人ほどの営業部隊にトライアルをお願いしてサテライトを使ってもらい、行動データを見える化して検証したところ、一日当たりの移動時間が約40分減ってアポの準備時間は3割増えたことが分かりました。すると部長陣も『これは便利だね』と納得して自分達の部署に広めてくれた。このようにトライアルで実証できれば経営陣も拒否する理由がないからNOとは言わないはずです。
質問②テレワークを始める際、何をどんな順序で導入すべき?
(林)どの会社も一様ではないが、テレワークでは業務のオンライン化が大前提になりますから、まずそこは最初に着手しましょう。評価制度や労務管理は、会社の現況によって対応が異なります。個々が自律的に動けている会社なら、評価制度を慌てて変えなくてもいいと思う。逆に、目標が曖昧で上長がいないとその日やる事を決められないような場合には、評価制度を作り中長期的な目標を決めて進めるのが望ましい。テレワークは自律的に働ける制度や環境がセットになっていないといけません。
質問③ABWやサテライトオフィスを導入したが、従業員があまり活用してくれません。
(林)総務が啓蒙しつづけることが大事。私の働き方改革の責任者時代のKPIは、従業員にとにかく1回使ってもらうこと、でした。一度使った後、継続的に使う割合は50%を超えていました。使いさえすれば便利さを実感するし、外出中に『この近くにサテライトあるかな?』と自発的に調べて習慣的に使うように必ずなりますから。頑張ってください。
後半では、ザイマックスグループが3年をかけて1,500名規模で行ったハイブリッドオフィス実験を通して得た、分散オフィスの組み立て方と運用のハウツーをレクチャーします。
〈第二部「1500人の実験から得たオフィス戦略実践術」のセミナーレポートはこちら〉