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狛江市の働き方改革事例

脱ベッドタウン、狛江市が目指す職住近接の街づくり

投稿日:2021-07-15

狛江市が取り組んだ事

  • コロナ以降、市役所職員の在宅勤務をスタート
  • 市民のテレワーク環境向上の為、サテライトオフィスを開設
  • 会社規模

    448人

  • 業種

    地方自治体

  • 対象職種

    全社員

コロナをきっかけに初めての在宅勤務

狛江市役所様では昨年度からZXYをご契約いただいています。サテライトオフィスを使おうと思ったきっかけから教えていただけますか?

ZXYを使い始めた一番の目的は、新型コロナウィルスの感染予防で職場への出勤人数を抑えるためでした。市長から「在宅勤務を推奨しているが、他の家族がいて家では仕事がしづらい職員もいるだろう。サテライトオフィスが増えてきているし、職員も使ってみたらどうか」と提案されて、早速トライしてみることに。数年前からオリンピック期間中のテレワーク協力要請が狛江市にもきていましたから、予行練習という意味合いが多少あったのかもしれません。

というと遠方から通う職員も多い?

そうですね。都内23区や遠くは、千葉県や埼玉県から都心を通って長距離通勤する職員も多いので、彼らがオリンピック期間中、自宅近くのZXYで働ければ都心の流入抑制につながるのでは、という意図がありました。

ZXYのオープンスペースをよくご利用いただいているそうで、ありがとうございます。

自宅では集中しづらいだろうし、上司の意向として周りにある程度人がいる方が緊張感を持って仕事できるだろうということで、オープンスペースを使うことが多いです。もちろん、覗き見防止カバー等を使用し情報保護には気を配っています。

働き方改革というより、コロナがきっかけになったわけですね。

いわゆる働き方改革の必要性は長らく感じていますが、どうしても窓口対応や個人情報保護の観点からなかなか進んでいないのが現状です。

菊野室長と山口課長
狛江市企画財政部未来戦略室 菊野室長と狛江市総務部職員課 山口課長

テレワークを阻む、個人情報保護の高いハードル

コロナ前は在宅勤務が禁止だったとか。

はい。これまでは、家に仕事を持ち帰ることが禁止されていましたし、外部のPCから市役所のシステムにアクセスすることがそもそもできなかったんです。市民の個人情報を管理していますから仕方ありませんね。
それが昨年4月の緊急事態宣言以降は、感染防止のため在宅勤務が許可されるようになりました。私も個人情報を含まない業務だけを切り出して持ち帰り、自宅で作業していました。ただ、USBメモリ等は使用できないので、自宅PCから職場のメールアドレスにデータを添付して送る、という手間の掛かるやり方ではありましたが…。

大変でしたね。全ての業務が自宅でできるわけではないですよね。

そうですね。在宅勤務が無理な日は、執務室が密にならないように会議室に移動して作業するとか、平日休んで土日出勤するなどして、なんとか40%くらいに出勤率を抑えました。

民間企業よりもテレワークのハードルがかなり高いんですね。

例えば、民間では時差出勤やフレックスがかなり普及していますが、狛江市役所の場合は、会議など業務上の理由を除いて時差出勤は認められていません。民間との違いは所々で感じます。

100台のPCを入れ替え、在宅勤務がスタート

在宅勤務にあたって何かICT機器は導入しましたか?

外部から役所内のネットワークにアクセスできるPCを100台ほど導入しました。ただ、全職員分、入れ替えられたわけではなく、課長以上の役職者のみで一般職員はまだ在宅勤務が難しい状態です。それでも何台か余った分は基礎疾患があるなど感染リスクの高い職員に優先的に貸与して以前よりかは在宅勤務がしやすくなりました。
あとは、オンライン会議や市のコンテンツ配信のためにプロジェクターや庁内ネットワークには繋がっていない端末等を購入しました。

職員へのスマホやタブレット配布は?

今のところまだありません。
管理職だけは私用のスマホにLINEワークスを入れて使っていますが、それ以外にスマホやタブレットの貸与はありません。

管理職以外の方に許可が出ない理由とは?

私用のスマホ等を業務に用いるには、費用負担や就業時間の管理等、クリアすべき課題が多くあり、なかなかそこまで手が回っていないのが実情です。

今回コロナで初めて在宅勤務してみていかがでしたか?

自宅だとかなり集中できますね。ノートPCとLINEワークスさえあればこんなに仕事ができるなんて思ってもいませんでした。

今も在宅勤務は続いている?

緊急事態宣言中は、意識して在宅勤務に取組んでいます。特に管理職には、在宅勤務に対応したPCやLINEワークスという環境が整っているため、積極的に在宅勤務をするように呼び掛けています。ただ、仕事が回らないという声も多くあります。
狛江市
狛江市を流れる多摩川とマンション群。市街地から少し足を延ばすだけで豊かな自然が広がる。

自治体ならではの在宅勤務のボトルネック

テレワークが浸透しないのは何かがネックになっている?

紙ベースの業務が多いこと、あとは、市民の個人情報がからむのがネックになっていると感じます。

職場に行かないとできない仕事が多いのですね。

そうですね。例えば、私のいる職員課の場合、給与システムは外部からアクセスできないのでそれに関連する仕事は一切できません。それでもまだ良い方で、窓口関係の部署では、在宅勤務で取り扱うことのできない、マイナンバーを扱ったりしているため、在宅でできる業務は極端に少なくなります。部署によって在宅できる部署とできない部署があり、課題の一つであると認識しています。

例えば、銀行のように窓口対応をデジタル化して人件費を削減するなど思い切った計画などはありませんか?

特に高齢者層はスマホやPCの操作に不慣れな方が多いので難しいでしょう。各種申請はオンライン化が進んでいますが、それでも直接来庁する方が多い。それに、マイナンバー申請など重要な手続きは必ず最終段階で対面の確認が必要ですし。コロナで業務量が増える中、そこまで手が回らないのが現状です。

確かに、安心感があるのは対面ならではの良さですよね。

役所側としても対人だと安心ですね。私も在宅勤務の方が集中して仕事ができるけれど、業務範囲が限られてしまうし、業務柄、仕事の成果をどう見せればいいか難しかったです。成果主義の民間企業と違って、その日に予定していた業務が早めに終わったからといって終業していいわけではないですから。ひたすらPCの前で業務を処理し続けるような感じはありますね。

コロナ以降も在宅勤務を進める方針ですか?

在宅勤務の翌朝は必ず決裁箱が溢れちゃってるんです。決裁者が休んだり在宅勤務してしまったりすると、業務が止まって迷惑をかけてしまう。そういうジレンマもあり、業務フロー等の見直しが課題です。

働き方改革に対してコスト、つまり税金を使う以上は費用対効果が見込めないと実行しづらいのは、自治体特有の事情ですね。

システムを入れて残業代や人件費が削減できれば、市民にも還元できるといえますが、働き方改革はやってみないと分からない事が往々にしてありますから、事前の成果約束がしづらいですね。

民間の感覚とはかなり差がありますね。

そうですね。ノートPCを1台購入するにも委員会に諮る等、手続が必要です。外部にメールを送るだけでも毎回認証チェックが入りますし、PCの利用に関するルールも総務省のガイドラインで決まっていて、内部系とインターネット系では別のネットワークになっているため、内部の情報はインターネット系にはコピペが出来ません。メールで届いたデータも直接は端末に保存できなかったりなかなか一筋縄ではいきません。

脱ベッドタウン、職住近接の街を目指して

最近、狛江市内にサテライトオフィスを開設されたそうですね。

はい。昨年から小田急線高架下の商業施設を管理運営されている小田急SCディベロップメントさんと協働で地域の課題解決を進める中、新しい取り組みとして、「職住近接」に「食」を加えた「職<食>住近接」をコンセプトに飲食店とサテライトオフィスが一体になった店舗を麦酒企画さんに開業して頂きました。
サテライトオフィス狛江City
2021年4月、株式会社麦酒企画が小田急線喜多見駅の高架下に開業したビアレストランとサテライトオフィス(店名:サテライトオフィス狛江City)が一体となった「SAKE-YA(さかや)喜多見」。サテライトオフィスには個室とオープンスペースを設置、レストランでは地元産の野菜を使った料理や自家製クラフトビールが味わえる。

なぜサテライトオフィスを?

コロナで人々の意識やライフスタイルが大きく変わり、市も街づくりのプランを見直すタイミングに来ています。

確かに都心一極集中の解消や郊外移住、分散化などが大きな流れになりつつあります。

狛江市はベッドタウンとして発展してきた街で、昼夜間人口比率が都内で一番低いんです。市民8万人のうち4割にあたる3.3万人は日中市外に出てしまう。それだけ都心へのアクセスが良い証拠ですが、街づくりの観点からは危機感を持っています。
働いたり、食べたり、遊んだりといった生活が市内で完結できる職住近接型の街づくりの第一歩としてテレワークしやすい環境の整備を進めています。
SAKE-YA喜多見

ZXYは狛江市内に2ヶ所、他社さんのサテライトオフィスも幾つかありますよね。

ええ。市内にZXYのような施設があるのは、職住近接実現の大きなステップになります。新しい働き方を支援するサービスを、今後も市民に提供していきたいと思います。

最後に今後の展望をお聞かせください。

今後も職員のテレワークを継続する方向で検討を進めています。すぐに全職員対象は無理でも、続けていけば課題や対策が見えてくるはず。
例えば、在宅勤務ができれば通院や子どもの学校行事のために、わざわざ有休を取らなくても時間休で済ませられます。それによって時短勤務者がフル勤務に戻れるかもしれない。それにZXYを使って外出先で仕事ができれば、無駄な移動時間が減り業務効率だって上がります。

コロナが収束したからといって今までのやり方に戻るのではなく、自治体なりの新しい働き方の道筋を作っていきたいです。

本日はどうもありがとうございました。

こちらこそありがとうございました。

今回協力して下さった企業様

狛江市

本社所在地
東京都狛江市和泉本町1丁目1番5号
従業員数
448(令和2年4月1日現在)
Webサイト
https://www.city.komae.tokyo.jp/

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