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【at will work主催】日本が目指すこれからの新しい働き方確立に向けて
【第2部】データから見る日本のNew Normalの働き方のヒント

〜アフターコロナに向けた働き方改革の目指すべき姿を考える〜

投稿日:2021-02-16

2020年12月11日、「日本が目指すこれからの新しい働き方確立に向けて〜アフターコロナに向けた働き方改革の目指すべき姿を考える〜」(一般社団法人at will work主催)がオンライン開催されました。現在、新型コロナウィルスの拡大によって多くの企業が働く場所の変化に直面し、対応を迫られています。第二部では国内企業のテレワークに関する意識や取り組み、今後求められることについてデータをもとに議論します。

まずはじめに、国内のオフィスマーケット調査や働き方、海外事例の調査などワークプレイスを軸にした包括的な研究を行うザイマックス不動産総合研究所の石崎氏から、働く場所についての課題と今後について。続いて組織・人事の観点からデロイトトーマツコンサルティング田中氏より、働き方とともに変化する人事マネジメントについてレクチャーがありました。

テレワーク環境の整備が追い付かない日本

スピーカー紹介

株式会社ザイマックス不動産総合研究所
主任研究員
石崎 真弓

リクルート入社後、リクルートビルマネジメント(RBM)にてオフィスビルの運営管理や海外投資家物件のPM などに従事。2000 年RBMがザイマックスとして独立後、現在のザイマックス不動産総合研究所に至るまで一貫してオフィスマーケットの調査分析、研究に従事。近年は、働き方と働く場のテーマに関する様々な調査研究、情報発信している。



私の方からは2020年10月に首都圏オフィスワーカーに実施した企業の”働き方と働く場所に関するアンケート調査”を元にお話しします。
コロナ以降、ほとんどの会社が強制的な在宅勤務を経験したわけですが、そのうちの約65%はコロナがきっかけで初めてテレワークを導入しました。多くの企業が不慣れな中で在宅勤務を行った結果、半数近くが「テレワークで生産性は上がらない(約45%)」と感じてしまっているのが分かりました。

テレワークで生産性は上がらない?

一方、テレワーク先進国の海外事例を見ると真逆の結果が出ているようです。ある中国企業で在宅勤務する/しないグループに分けて実証実験したところ、在宅勤務した方がしないグループに比べて約13%生産性が上がったという結果が出ています。
そのような結果が出る背景には、通勤ストレスの削減はもちろん、自宅に働く環境が整っていてオフィスよりも集中して働ける土台があるからという理由が挙げられ、まだまだ日本と海外との差を感じます。

――日本はテレワークに慣れようとしている段階で、生産性向上を実感するまで至ってないんですね。
はい。そもそもテレワークできる環境が整っていない企業がまだ多いようです。在宅勤務の課題を聞いたところ、ペーパレス対応や脱印鑑対応が不十分で自宅ではできない業務があり、まだまだ無理やりな在宅勤務を課している環境に十分に移行できない現状が見えてきました。海外だとこういう初期段階の課題はすでにクリアして、むしろコミュニケーションやマネジメント、メンタルヘルスに関する課題が議論されています。

在宅勤務の課題

――そもそも在宅を前提にした業務フローになっていない企業が多い、と。
そうです。ただ、コロナ禍を機に今後徐々にテレワークは定着していくでしょう。そこで注視しているのが今後のワークプレイスの在り方です。
10月時点の調査結果から分かるとおり、テレワークを止めてオフィス出社に戻す企業は少数派で、大多数はオフィスのあり方を見直し、特にメインオフィスとテレワークの使い分けを想定しています。

――議論が分かれるところですね。
これらの結果を受け、将来的にワークプレイスが再定義されるのではないかと予想しています。オフィスが多様化し、集中と分散の傾向が強まるでしょう。メインオフィスに全員分のデスクがあり集まって働くのが当たり前だったのが、在宅勤務テレワークを増やすかわりにメインオフィスを縮小する企業が出始めています。また例えば、バックオフィス業務など都心のメインオフィスよりも、職住近接型のサテライトオフィスを中心に働くの方が業務効率もモチベーション業績も上げられるという分析があります。全体でみると、まだテレワーク導入で苦労している企業が多いようにみえますが、すでに企業多様な働き方にあわせて多様なが増えています。このように、複数のワークプレイスの整備を始めている企業も増えているんです。

ワークプレイスの多様化

――新しい職住近接ですね。昔はベンチャー企業中心に、会社の近くに社員を住まわせる“一駅制度“がよくありましたけど、今は逆にワークプレイスが社員に近づくイメージというか。
オフィスが郊外に分散していく傾向ですね。
これは日本における個人と会社の関係性が互いにより良い信頼関係に結び付いてくためのプロセスだと感じています。

約8割がリモートでのマネジメントに苦戦

スピーカー紹介

デロイトトーマツコンサルティング合同会社
アソシエイトディレクター
田中 公康

外資系コンサルティングファーム、IT系ベンチャー設立を経て現職。
Digital HRとEmployee Experience領域のリーダーとして、デジタル時代に対応した働き方改革や組織・人材マネジメント変革、などのプロジェクトを多数手掛けている。
直近では、HRテック領域の新規サービス開発にも従事。講演・執筆多数。



私の方からは、コロナ以降の人材マネジメントに関する調査から2つほどご紹介します。
まず、コロナ禍での従業員に関する課題についてたずねたところ、約8割がテレワーク下のマネジメントスタイルをどう確立するか(81.3%)、課題視していることが分かりました。

テレワーク下のマネジメントスタイル

我々の元にも、リモートでどう働くか、部下と上司、同僚との関係性、仕事をどう円滑に進めたらいいか等の相談が増えています。
コロナ以降、半強制的にテレワークが始まりコミュニケーションの取り方に戸惑っている人が多くいます。石崎さんから「テレワークに慣れてない企業が多い」とレポートがありましたが、それがまさに数字に反映されているのだと思います。

約半数が勤務体系と人事評価を課題視

次に、今後検討・実施したい人事施策をたずねたところ、約半数が柔軟な勤務体系の整備(56.3%)人事評価方法の見直し(55.5%)を挙げています。

今後検討したい人事施策

長年、日本企業では全員が同じ時間に一律出社するのを良しとしてきました。しかし、これからはフレックスや裁量労働制を取り入れて、勤務場所もある程度自由にしたいと考える企業が増えつつあるようです。といっても、何年も前からこういう要望は出ていましたが、進んでいなかったのが正直なところ。でも、感染防止のために出社前提の勤務体系や定時を前提にした勤務体系を、必然的に見直さないといけなくなったというのが現在の状況です。

また、人事評価については、部下の目の前にいることで上司がプロセスを把握するのではなくアウトプットを見ていく傾向が強まっていくでしょう。フリーランス業なら当たり前の話ですが、特に大企業となるとそういう評価基準が難しいので見直し対象として上位に挙がっているのではないでしょうか。

――テレワークが広まってから組織マネジメント関連のコンサルティングが増えているのでは?<
働き方改革が言われだした頃から増えてはいましたが、コロナ以降、企業側の切迫度合いが明らかに変わりましたね。
東日本大震災が起きた直後にBCP対応する企業が一気に増えたけれど、その後、継続した会社とそうでない会社に分かれました。前者は今回の緊急事態宣言を受けて素早く対応できたんじゃないかな。日ごろの備えで非常時対応の明暗が分かれるといっても過言ではありません。今の状況を変革の機会として前向きにとらえるのか、一過性でしのぐだけなのか大きなポイントだと思います。

日比谷)ここからは先ほどのデータを踏まえて、今度はお二人にワーカーの視点から実感値を含めてディスカッションしていきたいと思います。まず田中さん、先ほどのデータとご自分の働き方を照らし合わせてどう思いますか?
田中)実際に自分も働き方が大幅に変わり、ほぼフル在宅勤務が続いてます。となると本社オフィスの位置づけは見直すべきだと思いますし、サードプレイスとしてサテライトオフィスなどの必要性は今後も出てくるだろうと感じます。

ディスカッションの様子

石崎)私はフル在宅になってからメンタル的につらい時がありますね。やらなきゃいけない仕事はweb会議やチャットで済むんですけど、何かが足りない。そういう時にオフィスや自宅以外の選択肢、例えば、サテライトオフィスみたいな場所が有用だと実感してます。
あとは、テレワークがアンバランスな状況になってると思うんです。
本来テレワークに向いているバックオフィス部門が紙や印鑑に縛られて出社せざるを得なかったり、逆にフル在宅が馴染んでいるIT系やエンジニア職が「出社してコミュニケーション取りたい」と切望していたり。どの職種でもテレワークの習熟度を上げていく必要性を感じます。
日比谷)私はイベントで誰かに会ったり、異業種の方と話したり、そういう雑談できる機会が極端に減りました。無性に誰かと話したくて用もないのにコワーキングスペースに行った時もありましたね。働くことだけが目的ではない、サードプレイス的な場所が必要だと感じました。
石崎)企業が働く場所の選択肢をいくつか用意してあげると、「こんな働き方ができるんなら、もっとこうしてみようかな?」と社員自身が徐々に自律的に考えるようになるはず。単にコスト削減のために働く場所を縮小、分散するのではなく、企業戦略の一環として取り組むのが重要だと思います。
田中)一律在宅とか一律出社とか、どちらかだけに偏らない方がいい。個人の仕事や置かれている状況によって各々がバランスをとるべきじゃないでしょうか。<会社側は複数の選択肢を用意して、ワーカーに裁量権を与えるのが大事だと思います。今回をきっかけに多様な働き方を認める企業文化が浸透すればいいなと感じます。

モデレーター紹介

一般社団法人at Will Work
理事
日比谷 尚武

「社会を変える主役を増やす」をテーマに、セクターを横断して活動。広報、マーケティング、事業支援を中心に、「人と情報をつなげて価値をつくる」ことに注力している。
一般社団法人at Will Work理事、一般社団法人Public Meets Innovation理事、Project30(渋谷をつなげる30人)エバンジェリスト、公益社団法人 日本パブリックリレーションズ協会 広報副委員長、ロックバーshhGarage主催、他。

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