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パーソルプロセス&テクノロジーの働き方改革事例

働き方改革の専門家集団が目指す、100%テレワークと生産性向上

投稿日:2019-05-27  最終更新日:2019-03-28  取材日:2019-01-29

パーソルプロセス&テクノロジー株式会社が取り組んだ事

  • 働き方の原則はテレワーク、採用にも好影響
  • 残業削減やフリーアドレスの固定席化防止に、ICT技術を活用
  • 副業を解禁、週休完全三日制を目指して実証実験を開始
  • 会社規模

    3,000人

  • 業種

    情報通信業

  • 対象職種

    全社員

パーソルプロセス&テクノロジー株式会社は、総合人材サービス業・パーソルグループのIT分野を担う中核会社です。その中でも特にワークスイッチ事業部は、ワークスタイル変革のコンサルティングサービスも手掛けており、同社自体の働き方改革を推進している部署でもあります。いわば働き方改革の専門家集団が、どのようなオフィス戦略やICT活用、制度等を運用しているのか、また、週休完全3日制など将来のワークスタイルの展望についてもインタビューしました。

今回お話を伺った、ワークスイッチコンサルティング ゼネラルマネジャー 成瀬岳人様

260名に対して、座席数は40席だけ

2013年に今の豊洲本社に移転したそうですが、こちらのオフィスの概要から教えていただけますか。

この豊洲本社には約900名が働いています。
私が所属するワークスイッチ事業部は260名が在籍していて、コンサルティングという業務の性質上、クライアント先に常駐したり、定期訪問したり、働き方のスタイルが頻繁に変わるのが特徴です。コアタイム無しのフルフレックスで、原則テレワークを活用する働き方を推奨しています。
ワークスイッチ事業部全体で260名と言いましたが40席しか用意していないので、部長含め「出社しても席はないよ」という状態になっています。

部員の2割弱しか座席がない、というのはかなり思い切った設定ですね。それでも、全体的にはオープンな空間が広々ととってありますね。

現従業員900名に対して、4月には300名の新入社員が入ってきます。更に、年間通して
約100名の中途採用もしているので、席が足りません。

自然発生的に始まった働き方改革

そんな中で、働き方改革を始めるきっかけは何だったんですか。

当社の場合はかなり異質で、厳密に「始めよう!」と号令があったわけではなく気づいたらやっていた感じです。
3年前、働き方改革コンサルサービスを始める事になり、「それなら自分たちがまずやらないとだめだよね」という流れでワークスイッチ事業部が主体となって自主的にスタートしました。

自然発生的に取り組みを始められたわけですね。

そうですね。私たちが考える、働き方改革に必要な3つの要素があります。
 ①トップの明確なビジョンや意思
 ②企画推進者がいる
 ③実験しようとする風土がある

幸い当社にはこれらが揃っていますから、実験組織として機能しているんだと思います。

ワークスイッチ事業部として、働き方改革の支援ツールも開発されているとお聞きしました。

「HRダッシュボード」という勤怠時間や実労働時間を見える化するツールです。
勤怠と実働に乖離がないか管理職に毎日メールが来るシステムになっていて、勤怠時間とアプリ起動ログの乖離が数時間なら潜り残業の可能性がありますし、10時間位乖離があれば勤怠入力し忘れの可能性が高い、と分かります。
二週に一度は残業予測をとって、36協定を超えそうな社員がいればリストアップされて、部門長会議で議題に上るわけです。
このツールを導入してから、残業時間は全体傾向として下がっています。こういった社内のノウハウから、新たなサービスも生み出されています。

残業問題を解決すべく生まれた「HRダッシュボード」の画面イメージ

働き方の原則は、テレワーク

オフィスの話に戻りますが、全社でフリーアドレスを導入されているのでしょうか。

一部を除いて原則フリーアドレスで、稼働率70%と考えて900席用意しています。
部署ごとに大体の場所は決めて、その中で自由に座ってもらっています。

フリーアドレスといいながら、毎日同じ席に座ってしまう人はいませんか?

全社的にみると半々ですね。ワークスイッチ事業部は、9割がた毎日違う席に座っています。
システムソリューション事業部では、自社で開発した、席が固定化しないようにコントロールできるフリーアドレス管理ツールを使っています。

すでに手狭なところに、4月からは更に増員という事ですが、フリーアドレスの目的のひとつには床面積の効率化もあるのでしょうか。

それよりもテレワークを最大限活用するのが大前提です。在宅勤務制度は2011年からありましたが実際に使う社員はごく僅かでした。
ワークスイッチ事業部の発足にあたって、サービスの中にテレワーク導入支援のコンサルティングも入っているので、2015年から、まずは自部署内から本格的にテレワークを始めました。

フリーアドレスを導入したオフィスの様子

最初は数人だけだったテレワークが、今これだけ社内に浸透したのには、やはり一定の強制力も働かせたのでしょうか。

パワーを掛け始めたのは2016年くらいからですね。時代の雰囲気もあって、入社間もない新入社員も含めて強制的にテレワークを始めました。
ワークスイッチ事業部だけではなく、全社員にiPhoneとノートPCを貸与していて、テレワークができる環境は整っています。

実際にどれくらいの社員がテレワークしていますか?

ワークスイッチ事業部は、100%テレワークを開放していて、
70%以上が週1回以上はテレワークで働いています。

かなり高い頻度ですね。テレワークの好影響はどんなところに出ていますか?

一番効果があったのは採用面ですね。結構増員をした時期があったのですが、
決定打になったのがテレワークができる事だったんです。ちなみに、部全体の男女比率は半々なんですがコンサルティング部門は女性責任者が多く、男性部長の方が少ない、優秀な社員を表彰する際のノミネートも女性社員が多いです。だから組織課題が「男性活躍推進」になっている位なんですよ(苦笑)

シェアオフィスを活用し始めたものの…

テレワークの場所として、いくつかシェアオフィスも使っていらっしゃるとお聞きしました。

一年前から三井のワークスタイリングと東急不動産を使っています。
当社もそうですが、幾つかのシェアオフィスを契約して使い分けしている企業が多いようですね。

ワークスタイリングを選ばれた決め手は何だったのでしょう。

当社のテレワークコンサルでも用いる手法なのですが、まずワークタイプ分析つまり、働き方のタイプ分けをしました。
社員の働き方が、客先常駐型/半分常駐型/訪問メイン/本社/在宅のどれに当てはまるのか、人材ポートフォリオ上で分析し、どんなタイプのシェアオフィスがマッチするのか検討しました。
その結果、複数人が集まって協働作業することが多い当社の場合、フランクに話せるワークスペースがマッチすると分かりました。図書館の自習デスクのようなオフィス環境はマッチしないと判断しました。
ただ、コストの問題も出てきて、もう少し安価な作業場所を確保する必要性も出てきました。

シェアオフィスの利用や運用は上手くいっていますか?

実はあまり上手くいきませんでした。使う人/使わない人が二極化してしまいました。個人的には不本意でしたが、ボードメンバーから見ると「シェアオフィスを使って業績が伸びるのか?」という議論になってしまったのです。

頻繁に使っていた人からすると不満が出るかもしれませんね。

最初は「使え」と言ったのに、今度は「緊急時以外使わないで」なんてどういうことだ?って気持ちになりますよね。
でも誤解を恐れずにいえば、みんなが生産性向上につながる使い方ができれば、使い続けることもできるはずなんです。

では、今後シェアオフィスはなくしていく方向になりそうですか?

いいえ、なくすわけではなく、やり方を変えようとして検討している最中です。
先ほどお話したワークタイプ分析とは別に「ワーク動線分析」をした結果、社員の集まりやすいエリアが分かりました。ならば、そのエリアに絞ってサテライトオフィスを借りるという方向性で検討しています。
営業職とマネージャー以上はタッチダウンオフィスがあった方がいいですが、それ以外の社員にはサテライトオフィスを使ってもらうのがいいんじゃないか、と。

ダイバーシティ&インクルージョン推進で副業を解禁

副業は解禁されていますか?

はい。グループ全社員を対象にダイバーシティ&インクルージョン推進の一環として、副業ではなく「複業」を解禁したばかりです。
当社は以前から兼業申請制度があったので、すでに数十人が副業をしています。
業種は、古文書の翻訳から友人の会社の役員まで様々で、私も総務省テレワークマネージャーとしてコンサルティング業務を受託しています。

副業を認めるにあたって何か制約は設けていますか。

ガイドラインの策定をしています。従来は最低限の決まりだけ設定していました。
・利益供与にならないこと
・業務と健康に支障をきたさないこと
・公序良俗に反さないこと、くらいの最低限のルールでやっています。

オフィスは究極なくてもいい?

直近で増床と拠点新設の予定があるとのことですが、将来的なオフィス戦略について教えてください。

「もはやオフィスはなくていいんじゃない?」という意味合いの話も事業責任者とは話しています。
組織として年間150%以上の成長を期待されていて、それでも50席以上増やすなと言われていますから、
「床面積の減少と効率化をする位ではもはや対応しきれないのでは?」とも思います。

オフィス環境に社員の要望を反映する企業が増えている中、思い切った戦略ですね。

オフィスの立地や広さなど、全員の意見を聞くのは不可能です。それこそ「コンビニの近くがいい」なんて言われたら「自分でコンビニの近くの場所を探して働いてよ。本社まで来なくていいよ」と言います。
特に、ワークスイッチ事業部は、ABW(Activity Based Working)の働き方改革を推奨していますので、その時最も生産性高く働ける場所を自分で選択して働いてください、というスタンスです。
ABW(Activity Based Working):仕事内容に合わせて働く時間と場所を自由に選べる働き方。

でも、この豊洲オフィスは広々としていて、自分だったらむしろ毎日通いたくなりそうです。

全社的にみると、クライアント先に常駐する社員がほとんどなので会社への帰属意識がどんどん薄れてくるんですよね。となるとぼくらの事業とは矛盾しますが、帰属意識を持ってもらうために、戻ってきたくなるオフィス、というコンセプトを念頭に置いて空間設計しています。ですから、みんなが集まって協同でクリエイティブに働ける空間、という事をオフィスづくりでは重視しています。

オープンスペースの中で一番人気の通称”ファミレスブース”

働き方改革=働きやすさの実現、ではない

最後に、今後の課題があれば教えてください。

一連の改革は、働きやすくする為ではなく、あくまでパフォーマンスを上げるのが目的です。そうでないと意味がありません。
「権利の主張はしないこと」という、メッセージは定期的に発信していますが、まだまだ伝わっていないんだなと感じることも多々あります。
ということは、ただ一方的に発信するだけではだめで、自分自身で「何のための働き方改革か」意味づけしてもらうことが今後の課題ですね。

悩ましい問題ですね。

でも、幸い社員はみんな素直ですから。つい昨日も、そういった内容を含めて全員参加のワークショップをした所です。みんな真剣に且つ楽しそうに議論をしてくれていました。こういう機会をつくりながら、地道に取り組んでいる段階ですね。

本日は貴重なお話をありがとうございました。

こちらこそありがとうございました。

今回協力して下さった企業様

パーソルプロセス&テクノロジー株式会社

設立
1977年9月(昭和52年9月24日)
本社所在地
東京都江東区豊洲3-2-20 豊洲フロント7F
事業内容
業務プロセスコンサルティング、システム企画・開発、システム運用・保守
従業員数
3,145名(2018年3月1日時点)
Webサイト
https://www.persol-pt.co.jp/

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