CLOSE

エーピーコミュニケーションズの働き方改革事例(後編)

働く意味を、社員一人ひとりが感じられる会社であるために

投稿日:2019-03-25  最終更新日:2019-03-25  取材日:2019-02-21

  • 会社規模

    300人

  • 業種

    情報通信業

  • 対象職種

    全社員

エーピーコミュニケーションズの新オフィス。その活気のあるフリースペースで、キャリア相談室」室長の塚田さんにお話を伺っていると、その最中にも、社員同士の活発な意見交換の声がそこかしこから響いてきます。

後編では、この新しいオフィスの話題にも触れながら、社内大学の取り組みやこれからの目標などについてお届けしていきたいと思います。

フリースペースのソファ席にて、「組織能力開発部 マネージャー兼 キャリア相談室」室長の塚田裕美子様にお話を伺いました。

エンジニアとしてのキャリアを描く、APアカデミー

次は、社内研修制度について教えていただけますか。

はい。弊社には、「APアカデミー」という、全社員向けの社内大学があります。2009年に設立されたもので、基礎から応用まで、様々な種類の講座が100種類以上用意されています。その講座内容には、大きく分けて、

(1)技術
(2)KAIZEN・サービス開発
(3)経営・マネジメント


の3種類があります。

APアカデミーでの講座風景。活発に学びが交換される。

「技術」に関しては、ネットワークやサーバー、今で言うと自動化などについても学べます。もちろん座学もありますが、ほとんどは、実際の機器を操りながらのハンズオン(※)ですね。研修を受ける人は土曜日に集まってきて、現場のエンジニアが講師となって実践的な講習を行っていきます。

ハンズオンとは:体験学習を意味する教育用語。インタラクティブ体験、実習、実験、体感など、実際に体を使うことで学習効果を高めていく。

2番目の「KAIZEN・サービス開発」については、どういったことを学んでいくんですか?

主にプロジェクトマネジメントについて、ですね。エンジニアの仕事というのは、指示されたものだけを作っていくことでは決してありません。お客様からヒアリングし、必要なリソースを選定して、WBS(※)を作成し、スケジューリング、進捗管理、品質管理などを行っていく。つまり、技術力だけでなく、プロジェクトマネジメントの能力が求められるんです。ですので、ここでは、運用、設計、構築まで、案件をトータルで回していけるフレームワークの習得を目指してもらいます。また、作業効率化による業務改善のためのマクロやVBAなども学ぶことが出来ます。

WBSとは:Work(作業)/Breakdown(分解)/Structure(構造化)の頭文字を取った略語。プロジェクトのスケジュール管理に活用されるツールのひとつ。作業を分解して図示したもの。スケジュールを時間軸に落とした工程図のことをガントチャートと言うが、それと合わせて「WBS」と呼ばれるケースも多い。

それでは、最後の「経営・マネジメント」については?

ここでは、現在の管理職層や次世代のマネジメント層向けの研修を行っていきます。

なるほど。この「APアカデミー」では、システムインテグレーターとして、キャリアを積んでいくために必要なことを、網羅的に学んでいけるというわけですね。

はい、その通りです。このアカデミーでは、全社員を対象として、毎月1回、受講生を公募しています。ですので、上長との相談は前提になりますが、キャリアの幅を広げることを目指して、実際の業務の枠を超えた、新しい分野の学びにも挑戦することができます

学びの原動力になるので、「面白そう」とか「興味がある」というのは、とても大事なことですよね。でも、そこにキャリア意識がすっぽりと抜け落ちていたとしたら、「とりあえず興味があるので、色々受けてみました。でも、受講の手間だけ増えて、現場で全く活かせませんでした」という風に、本末転倒なことになりかねません。

確かに、それはもったいないですね。

ですので、受講希望者を公募するといっても、今の現場との親和性や将来のビジョンも考慮に入れ、「何のためにその学びを求めにいくのか」を、上長が確認しておく必要があるんですね。キャリア形成の道筋をつけた上で、必要な学びを求めていく。そんな意識が大切なんだと思います

オフィスに大きく記されているエーピーコミュニケーションズのモットー。エンジニアが中心となって活躍する「Engineer Driven」

会社の中にたくさんの選択肢があると示すために

今まで、事業戦略に則った社員教育の仕組みについて伺ってきましたが、その前提となる企業理念や事業戦略についての理解は、どのようにして促していっているんですか?

はい。例えば、弊社では、年に4回、全社員が集まる機会を設けています。ここで、経営層が全社的な方針等を伝えていきます。

そのうち、1回目と3回目は、経営側からの情報発信が中心です。企業理念に加え、今までの振り返りとこれからの方向性などが共有されます。

それに対し、2回目と4回目は、また毛色を異にします。弊社には、40〜50くらいの「プロジェクト」と呼ばれるチームがありまして、その2、4回目で、それぞれのプロジェクトが活動内容を発表していきます。ここで、エーピーコミュニケーションズという会社の中にも、たくさんの選択肢があるのだということを、社員に示せたらと思っています。同じような目的で、「現場報告会」という場も設けています。

なるほど。企業理念を伝えていくだけでなく、社員一人ひとりが自分のキャリアを考えるきっかけを掴む場にしているんですね。

上司との面談の風景。上司と部下の、コミュニケーションの大切な機会になっている。

上司と部下の大切な時間、1on1ミーティング

ここまで、「キャリア相談室」や「APアカデミー」など、組織としての取り組みについてお話してきましたが、それ以外に、「1on1ミーティング(※)」も行っています。

1on1(ワン・オン・ワン)ミーティングとは:上司と部下が1対1で定期的に行うミーティングのこと。米国・シリコンバレーでは文化として根付いており、現在、人材育成の効果的な手法として注目を集めている。

どのくらいの頻度で行われているんですか?

当社では、最低3ヶ月に1回、10分以上行うことをルールにしているのですが、毎月80%以上の割合で実施されていますね。常駐先に上司がいないエンジニアもいますので、帰属意識を高めていく役割も担っています。また、要所要所で1on1を行うことで、部下の仕事ぶりを正当に評価していくことができるようになります。

なるほど。大切なことですね。ちなみに、その1on1ミーティングも2013年から始められたんですか?

いえ、本当に力を入れて取り組み始めたのは、ここ2、3年のことです。最近では、1on1ミーティングのやり方がわからないと、管理職が悩みを抱くケースも増えてきていまして、管理職側が集まって、マネージャー同士の共有会「1on1 GUNSHI(軍師)」というディスカッションの場を設けたりもしています。「1on1の時に、こんなことを聞かれたら、どう答えるべきなんだろう」とか。

「1on1 GUNSHI」、面白い名前ですね。ちなみに、これは、どういった経緯で立ち上がったんですか?

弊社の取締役副社長・永江が始めたんです。永江はもともとエンジニアでしたが、そこから事業部門、人事部門へと進み、その後、大学院でヒューマンリソースについて学んできた、というキャリアを持っています。そんな人事部と事業部双方の立場を知る者として、マネージャーの悩みの声を耳にしたので、「そんな悩みがあるのなら、じゃあ、一度集まってみようか」、と。

なるほど。

そのように、永江の軽い声掛けから始まったものですので、強制ではなく、あくまでも自主的に参加したい人が集まっているという感じです。今では管理職20人ほどが参加するまでになってきています。

自分の働く意味を、自分で問えるということ

働く場所(ワークプレイス)や時間については、何か取り組まれていることはありますか? お客様先で働かれることが多いと思うので、難しいことが多々あるとは思うのですが。

「時間や場所にフレキシビリティを持たせること」を目的とした取り組みはあまりないのですが、当社のVisionである「エンジニアとお客様を笑顔にする」を実現するために、様々なことにチャレンジしています。
これまでにはオリジナルプロダクトの開発や、お客様先に常駐しているチームを技術的にサポートするチームを本社に設置するなどをしてきました。これからもこのチャレンジは続いていきます。こういった変化が起きれば、結果として時間や場所にもフレキシビリティが生まれてくると考えています。

なるほど。現状でも自宅でテレワーク、というのも可能なのでしょうか?

はい、可能なケースも出来てきました。しかし、自宅勤務をするにも、一人で仕事を完結させられる能力が必要になってきますよね。つまり、「キャリア自律(※)」という視点を持たなければなりません。「(制度面等の)会社のサポート」と「自律的な社員の育成」がセットになって、はじめて、働き方・働く環境というものは整っていくのだと思います

キャリア自律とは:自分のキャリアには自分が責任を持つという、自律的なキャリア開発のこと。組織の視点から作られていたキャリア開発の仕組みを、個人の視点から再構築すること。

全く、その通りだと思います。

「自分の働く意味って何なんだっけ」と、自分で問えること。自律的であるというのは、すごく大切なことだと、私は思います。

開放感のあるフリースペース。ここで様々な交流が生まれていく。

みんなの顔が見え、交流と創発が促されるオフィスに

次は、オフィスについて教えていただけますか?

2016年11月に、ここ東京都千代田区鍛冶町に新オフィスを開設しました。それ以前は、とても狭いフロアに島型のレイアウトで事務デスクが並ぶという、いかにも日本企業といったオフィスでした。今のようなフリースペースもなく、メンバーが常駐先から帰ってきても居場所がない、という。また、当時はフロアが2つに分かれていて、更に1つの部署は別のビルに入っており、APCとしての一体感が薄れてきていました。

そこで、「出来るだけ壁のないワンフロアに集約することで、心理的な壁もない組織にしたい」という社長の意向もあり、新しく広いオフィスを借りて、分散していた各拠点をワンフロアにぎゅっと集約させました

では、すべてのセクションがこの本社オフィスにまとめられているんですね。

はい。エーピーコミュニケーションズとしては、ここに全てが集約されています。

常駐先から、この本社オフィスに寄る方も多いんですか。

そうですね。夕方になると、ちらちら帰ってくる方もいます。英語のレッスンやアカデミーのカリキュラムを受けに帰ってくる方も多いですね。カリキュラムを作るために講師たちが集まってくる、というケースもあります。APアカデミー等はカンファレンスルームで行うのですが、ここで、年に4回「ふれあうSAKABA」という懇親会も開催しています。

3ヶ月に一度、社員同士の交流を広げられる場「ふれあうSAKABA」。これは2019年の新年会のもよう。

面白い名前ですね。

100人以上が参加する懇親会で、「幹部が社員をおもてなしする」「ねぎらう」といったようなコンセプトで開催しています。たまに、お客様もいらしたりします。

オフィスでこうした遊び心のあるイベントを開けるというのは、いいですね!

社長がなぜワンフロアに集約したかったかというと、「別々の部署で仕事をしている人間がひとつの場で交流することによって、何か新しいものを創り出していってほしい」という想いがあったからだと思います。このフリースペースを、交流と創発の場にしたい。それは社長のこだわりでもあるんです。

気軽に腰掛けられるカウンター席では、いつも新たな交流が生まれている。

カウンター席もあるんですね。

はい、立ち話に近い感覚で雑談ができ、気分転換にも適しているので、好評ですね。就業時間後なら、ここでお酒も楽しめます。最近は、ここで「内田バー」も開店されます。週に1回20時から、社長の内田が酒瓶を片手にバーを開くんです(笑)

それは、面白い(笑)! 社長との距離が近くて良いですね。そのように、新しいコミュニケーションが生まれている中で、会社が変わってきているなと実感されることってありますか?

そうですね。やっぱり、このフリースペースのおかげで、オフィスに帰ってくる人は増えましたね。会議室も前のオフィスでは、手狭で予約するにも手間だったのですが、今では会議もオープンスペースで気軽に済ませることができます。コミュニケーション量は確実に増えてきていて、社内が明るくなったなと実感しています

これからの想いを力強く語ってくださった「キャリア相談室」室長の塚田裕美子様。

課題と、これから叶えていきたいこと

この一連の働き方改革を進めてきて、強く感じたことや想いなどありましたら、教えていただけますか?

はい。会社として様々な施策を用意していますが、社員のみなさんには、自分でキャリアについて考えるきっかけとして、上手に活用していってもらいたいと考えています。会社員として「やれと言われたことしかやらない」という姿勢だと、働くことがずっとつまらないままで終わってしまうと思うんです。社員が一人一人が自分の幸せを考え、キャリアについて自律的な思考をめぐらし、それを会社が応援していく。そうして、一緒に業績を伸ばしていく。そのような状態をみなでつくっていく過程そのものが、働き方改革なんじゃないかなと思います

それでは最後に、今後、取り組んでいきたいことについて聞かせてください。

いまだ管理職に負担が集中しているということに、課題を感じています。ですので、そのサポートのためにも、管理職向けの研修については、今年度の重点施策として取り組んでいます。今、リーダーシップ研修を管理職全員が受けています。ここで、自身のマネージャーとしての役割を再確認してもらっています。さらにこの一年間で、マネージャーにしっかりとキャリアについての意識を高めてもらった上で、来年からは若手育成を、と考えています。まずは、マネージャーからです。子が親を見て育つように、メンバーもマネージャーを見て成長していくのですから

この事例と同じシリーズの事例

    • ワーカーの啓発・教育
    • 情報通信業

    エーピーコミュニケーションズの働き方改革事例(前編)

    「教育」を通して、自社の働き方を、そして業界を変えていきたい

    • キャリア自律を促していく、全社的な「教育」の仕組みを構築
    • オフィスのワンフロア化を通して、みんなの顔が見える環境をデザイン
    • フリースペースを、“学びも楽しみも共有できる場”として有効活用

今回協力して下さった企業様

株式会社エーピーコミュニケーションズ

設立
1995年
本社所在地
東京都千代田区鍛冶町
事業内容
・Webサービス、企画開発、自社サービス展開、事業化
・コンサルティングSI、自社製品開発・保守(元請案件9割以上)
・サーバ・ネットワーク設計・構築・運用・保守
従業員数
369名(2018年12月現在)
Webサイト
https://www.ap-com.co.jp/

SEARCH

SEMINAR

More

RECOMMEND

    • オフィス環境
    • 人事制度
    • ICT投資・活用
    • ワーカーの啓発・教育
    • 製造業
    • 2019-04-26

    富士通の働き方改革事例(前編)

    働き方改革を駆動させる「3つの要素」と「3つのワークプレイス」

    • 「制度・ルール」「ICT・ファシリティ」「意識改革」の三位一体の取り組み
    • ワークスタイルの選択やデザインを、現場の自主性に委ねる
    • オフィス環境
    • 人事制度
    • サービス業
    • 2019-07-11

    SMNの働き方改革事例

    健康経営~社員の健康とシアワセが企業の成長につながる~

    • 健康経営推進による会社のブランディング向上、採用力・社員のエンゲージメント強化
    • 健康施策推進で、会社のブランディング向上を超えた「人としてのシアワセ醸造」を実現し、その結果としての組織のシアワセと健康経営の実現を目指す
    • リモートワークなどの制度整備による働き方の多様化対応
    • 人事制度
    • 経営層のコミットメント
    • 保険業
    • 2019-11-14

    アフラック生命保険の働き方改革事例(前編)

    ダイバーシティへの取り組みから始まる
    イノベーション企業文化の醸成

    • 女性の活躍推進から拡大する「アフラックダイバーシティ」
    • 仕事の進め方を変える「アフラックWork SMART」
    • 続けることで、現場発信でプロジェクトが生まれはじめる
    • 人事制度
    • ワーカーの啓発・教育
    • 情報通信業
    • 2018-10-10

    サイボウズの働き方改革事例(中編)

    心と体が健全でいられる「風土」こそ、「多様性」を豊かに育む

    • 『質問責任』と『説明責任』の共通認識でモヤモヤを溜め込まない
    • 働く場所・時間、働き方を自分で決める「新・働き方宣言制度」の開始

働き方改革の事例一覧に戻る