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アサヒグループホールディングスの働き方改革事例

コミュニケーション不足解決の秘訣、「30分の1on1」とは?

投稿日:2018-12-07  最終更新日:2019-03-20  取材日:2018-09-14

  • 会社規模

    300人

  • 業種

    サービス業

  • 対象職種

    全社員

働き方改革の一環として、在宅勤務やサテライトオフィスを導入する企業も多いのではないでしょうか。
しかし、時としてネックになるのが、上司と部下のコミュニケーション不足。
上手く使えば生産性向上に繋がるテレワークも、方法を見誤れば逆効果になりかねませんが、
そんな悩みを解決できる方法があります。

今回お話を伺うのは、シェア争いが激化する国内ビール類市場にあって長年トップを走り続ける
アサヒグループホールディングス(以下、アサヒGHD)。同社の働き方改革担当、人事部門シニアマネジャーの高橋清さんは「テレワークによって離れている時間と場所を埋めてくれるのが、週にたった1回の1on1ミーティングである」と語ります。そこに至るまでの経緯と2年間の試行錯誤についてインタビューしました。

リーダーから率先して変えていこう

働き方改革がスタートした経緯から教えてください。

2016年下期から取り組みを本格的にスタートして、
生産性向上を目的に色々な施策を講じてきました。
基本方針は、優先度が高くてイノベーティブな仕事に注力できる環境をつくる事です。
つまり、ダラダラ仕事せず決められた時間の中で結果を出そう、という事ですね。

高橋さんはどんな立場で、改革に携わっていますか?

アサヒGHDは、役員以外はほぼ事業会社からの
出向者で構成されており、全体を束ねるマネジメント業務を行っています。
社員約400人の内、この浅草オフィスに約150人が在籍しています。
私はHD自体の働き方改革を担当する立場にいます。

HDに連なる事業会社の働き方改革も、高橋さんがご担当を?

いえ、事業会社の方はそれぞれに委ねていますが、
各社とも生産性向上を基本方針に掲げています。
例えば、業種柄、営業担当は宴席も多いですが基本的には22時までに
切り上げるなど、会社や職種に応じた改革を実行しています。

実際にどのような進め方を?

各部門の部長にあたるゼネラルマネージャーが積極的に率先して
取り組む形で始めました。ある程度トップダウンでないとなかなか先に進まないと思います。
私とは別の働き方改革担当者が旗振り役となって、定期的に進捗報告を行っています。

トップからのメッセージは、一連の改革に関してありましたか?

HD社長から「全社を挙げて取り組むように」と強い指示がありました。
総労働時間の削減が数値目標になっていますが、あくまでも
「決まった時間の中でいかに成果を出すか」が求められています。

指標は、総労働時間と年休取得回数

具体的な目標設定は?

各部門の目標は長時間労働の改善です。そのために、個人目標として
月間総労働時間と、あとは、オンオフのメリハリを付けるために
年休取得の目標設定をしています。
部署によっては必須目標を立ててテレワークを推進している所もあります。
私のいる人事部門でも月に一度の有給取得と在宅勤務を目標にしています。

目標に対する現状は?

目標の年休取得率70%(14日)に対してあと一歩という所です。
そこまで高い目標でも、取得が難しい環境でもないと思うんですが
なかなか達成できていないのが実情ですね。

できない、じゃない。どうすればできるか、を考える

改革スタート時、社員から反対はなかった?

反対はありませんが、全員が同じ働き方をしているわけではないので要望が出る事はあります。
例えば、海外事業部門は取引先の時差に合わせた通常とは異なる時間帯に働くので、
フレックスを活用して昼から出勤して海外とTV会議をするなど、現場ごとに最適な運用をしています。
できないじゃなくて、どうすればできるのか、考えて取り組んでいます。

社員に配備しているモバイル端末はありますか?

全社員にiPhoneを配備しています。iPhone一台あれば、外にいてもメールチェックや
稟議書の承認ができますし、iPhoneが内線代わりにもなっているんです。
パソコンは全てノートタイプで、必要であれば社外持ち出しもできます。

RPAの導入も進んでいますか?

はい。人事総務関連でいえば、旅費精算の伝票処理のシステム化に代表されるように、
AIやRPAなどテクノロジーを活用して、定型業務や付随業務をなるべく効率化しています。

拠点が多いですが、TV会議はよくしますか?

実はTV会議は20年前から導入しているんです。
今ももちろんありますし、スカイプを使う時もあります。
個人的にはまだ慣れない部分もあって…、もう少し活用しなければとは思っています。

業務によって、紙とデータを使い分け

ペーパーレス化の取り組みは?

人事異動など例外を除いて、稟議書関係は電子化しました。
総務からも印刷費用削減でペーパーレスを言われていますが。
リストを一覧で見たりチェック作業したりは、やはり紙の方が適しているので
多少は紙で印刷して夕方にまとめて処分して…という感じでしょうか。

業種柄、契約書類など紙資料が多いイメージですが。

事業会社の方は、小売店との契約書など紙で保存しないといけない資料が
多いですが、HDの方はそこまで多くないかもしれないです。
ただ、稟議書が電子化されていても決済を取る時には印鑑が必要ですし、
完全にペーパーレス化、とまでは行っていないのが実情ですね。

テレワークは信頼で成立する働き方だと思う

テレワークを導入したのはいつですか?

自社の働き方改革が本格化した2016年下期から
在宅勤務と「ちょくちょく…」の利用を始めました。
当初から全員が使える制度としてスタートさせました。

テレワーク制度を始めた目的は?

やはり移動時間を効率化して無駄を削減するのが目的です。
外出先でポッとスキマ時間ができたって
iPhone一台あればメールチェックなり仕事ができるわけですから。

ルールはありますか?

理由ありきで、上長の承認がその都度必要です。

場所の制限は?

自宅や「ちょくちょく…」以外、自社以外のグループのオフィスでもOKです。

ICT環境は?

基本的に、全員にノートPCと社用iPhoneを配備しています。
iPhoneを繋げば会社のサーバーに接続して社内システムにアクセスできるので、
会社でも家でも同じ環境で仕事ができる状態になっています。

どんな所にテレワークのメリットを感じますか?

在宅勤務だと移動がない分、やはり身体も楽ですし仕事も捗ります。
社員も場所の使い分けをうまくしてくれているようです。
家だと集中できない場合や、外回り、出張時のスキマ時間には
「ちょくちょく…」を使うなど、活用シーンが色々ありますよね。

逆にデメリットを挙げるとすれば?

ノートPCや紙資料の持ち運びはちょっと手間に感じますね。
あとは、全社員の自宅近くに必ずしも「ちょくちょく…」があるわけではないので、
多少の移動が発生する事でしょうか。

さぼるかも、という懸念はありませんでしたか?

HDはほとんどが出向者で、入社したての社員は少なく
自律できる社員が多いんです。テレワークの意義や目的の理解度が
高いので「さぼるかも」という心配はありませんでした。

ちゃんと働いているかのチェックは何かしていますか?

一応、社員のPCに履歴やアプリのログを監視するソフトが入っています。
システム部門や直属上司もログは確認できますが、それを評価材料にしたり
ずっと監視することはないです。

勤怠管理はどうしていますか?

始業と終業の一報をメールで入れます。
お互いの信頼がないと成立しない働き方だと思っているので、
成果については各個人に任せています。

新人や若手もテレワークOKですか?

HDには新人は基本的に配属されないので事業会社の例にはなりますが。
入社から半年間は研修で、9月から本配属になります。そこからブラザー・シスター制度で
半年間OJT方式で面倒を見るようになります。その間、あえてテレワークをさせることは
しないと思いますよ。

フリーアドレス化で空席のムダを解消

オフィスはフリーアドレスですか?

現在、本社は固定席ですが、半年以内にフリーアドレス化の予定でまさに準備を始めたところです。
17Fのビール会社の一部は、東京、大阪拠点含めてフリーアドレスです。

フリーアドレスの目的は?

やはりイノベーティブな仕事をして欲しいからですよね。
それと面積の効率化。特に営業担当の多いフロアは日中空席が多いので、
その分の固定席を撤廃すれば、空いたスペースに関連会社なり支店を
統合移転できますから。

オフィスのハード的な改革は?

まず、慢性的な会議室不足を解決するためにレイアウト変更をしました。
以前は、10人用の会議室を2~3人で使っている、なんて事もあったので
大会議室に可動式の間仕切りを付けて、小会議室にもなるようにしました。
それと共用スペースも作りました。4人用のテーブル席にはモニターを設置して、
軽いミーティングならそこでできるようになりました。
来年には立ち会議室やコミュニケーションスペースも作る予定です。

コミュニケーションスペースは、最近のオフィスのトレンドですね。

本社の13Fには社員クラブがあって、昼は社員食堂、夜はスーパードライを楽しめる
交流の場所になっていますよ。

13F社員クラブ

フレックス、代休取得etc…制度をブラッシュアップ

働く時間に関してどんな制度がありますか?

出社/退社時刻が自由で、かつコアタイムの縛りもないスーパーフレックスを
導入し、1ヶ月あたりの総労働時間だけを設定して管理しています。
ただ、部署によっては繁忙期とそうでない時の差が激しく「1ヶ月単位では
調整が難しいから年間単位にできないか」という要望も出ています。
ただ、みんな制度としてうまく使っていますね。

コアタイムなしのフレックスだと皆の時間が合わない、ということは?

Outlookでスケジュール共有をしているので、それを見ながら会議の時間なり
出勤時間なり決めて調整しているので支障はないと思いますよ。

他に特徴のある制度はあったりしますか?

休日出勤した時の代休取得推進をしています。
昨年までは、休日出勤の2ヶ月以内に代休を取るきまりだったので、
夏の繁忙期にあたると代休の期限が切れて消滅する事もありました。
今年からは、半年まで期限を延ばしたので代休取得がしやすくなりました。

育児介護離職は顕在化していないが…

育児を理由にフレックスする方は多いですか?

育児中はフレックスよりも、育児中時短制度を使って
毎日の勤務時間の前後一時間をカットできるようになっています。

介護を理由に時短で働く方は多いですか?

介護を理由に週一回在宅勤務していた社員が以前はいました。
最長1年間の介護休暇制度はありますが、利用する人はあまりいません。
法廷給付が3ヶ月間だけで、その後の9ヶ月間は給付が出ないからだと思うのですが…。
育児介護離職の問題は、まだ顕在化していないです。

週一回の対面ミーティングを大切に

働く時間と場所がバラバラになってマネジメントに悩む方も多いです。

メンバーがどういう状態なのか知っておくために、各ゼネラルマネージャーは
週一回30分程度のミーティングをメンバーと1on1の対面でやっています。

1on1は遠隔ではなく対面でなんですね。

そうです。月に一回、公式の会議はありますが、インフォーマルな雰囲気で
進捗管理や課題の整理、悩みや行き詰まりを相談できる場になっています。

オフィス改修で、改革は次のステージへ

2016年から始まった同社の働き方改革。
働く時間や場所の緩和、制度整備などソフト面の土台を固めてきた2年間を経て
来期からはいよいよハード面の改修に乗り出し、変革も加速していきそうです。
Outlookでの予定共有や1on1ミーティングなど、テレワークで会えない事による
弊害を打破する方法を参考にしてみてはいかがでしょうか。

今回協力して下さった企業様

アサヒグループホールディングス株式会社

設立
1949年(昭和24年)9月1日
(吸収分割を行ったアサヒビール株式会社が、2011年7月1日商号変更を行い、純粋持株会社のアサヒグループホールディングス株式会社になりました)
本社所在地
東京都墨田区
事業内容
グループの経営戦略・経営管理
従業員数
274名(2017年12月31日現在)
Webサイト
https://www.asahigroup-holdings.com/

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