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リモートが「主」、出社は「従」。コロナ収束後も在宅継続を決断
御社がリモートワークを始めたのはいつ頃ですか?
国内で感染が拡大する前、2020年2月18日からです 。2月15日の週末に初めての感染経路不明者が出たニュースを受けて、これはまずい事になると考え、急いで経営会議メンバーのチャットルーム上で相談し 、その2日後にはリモートワークをスタートさせました。翌々月に緊急事態宣言が出てからは、さらに対応を強化して原則全員リモートに切り替えました。
判断がすごくスピーディですね。
感染の不安が社内に広まるのは良くない、とにかく急ぐべきだと思ったんです。
だから、週末に経営会議メンバーのチャットルーム上での相談した翌朝には「明日から在宅に切り替えようと思う。やれるかどうか分からないけど動こう!」と、各部署を周って調整したり、一日でVPNを手配したりもう必死で動いたのを覚えています。
執行役員 コーポレート本部 戦略人事部部長 秋岡和寿様(写真右)、同本部 戦略人事部 総務担当 細谷圭野様(写真左)
コロナが収束してもリモート主体の働き方を続けると決めた経緯をお聞かせください。
収束後もリモートメインで行こうと決めたのは在宅勤務を4~5ヶ月間つづけた夏ごろ。感染収束が見通せない上に、リモートでも大きな問題がないばかりか、むしろ生産性高く仕事ができたからです。コロナの影響で業績が多少落ち込んだのもあって、コスト削減のためにオフィスの縮小移転を同時に決めました。
コロナの収束を待たずに新しい働き方に舵をきったと。移転完了まで動きがかなり速いですが、以前からリモートワークは導入していた?
いいえ。一定の役職以上かつ育児介護理由の社員にしか許可していなかったので、ほぼ全員未経験でした。ただ、オリンピックを見据えて検討していたのが功を奏したかなとは思います。
ある程度は準備していたんですね。
準備というほどではないですが、ピクスタの事業自体がオンラインサービスですし、海外拠点とやり取りするためにクラウドサービスやチャット、モバイル端末などが社内に定着していて、既にワークスタイルがリモートに適した状態ではありました。
コロナをきっかけに在宅勤務を始めて、最初からスムーズにいきましたか?
最初の頃は、単身の若い社員を中心に「自宅に適当な机やイスがなく疲れる」、「ネット環境が悪くて仕事しづらい」という声が出ていたので、環境整備費用として1万円を2回、全社員に支給しました。
現在はリモートワーク手当として毎月1万円を全員に支給して、イスを買ったり水道光熱費の一部にあてたり自由に使ってもらっています。
コミュニケーション促すオンライン企画に次々トライ
リモートではコミュニケーションのしにくさが課題になりがちですが、御社ではいかがですか?
今のところおおむね上手くいってますが、特にオンボーディング (※)のプロセスは今まで以上に手厚くケアしたり、1on1の時間を長めに取ったりするなど意識しています。他にもオンラインランチ会や社長発案のオンラインお茶会、オンライン納会など、あれこれ手は打っています。
※オンボーディング(on-boarding)とは、「船や飛行機に乗っていること」を意味する「on-board」から派生した言葉。新規採用した社員に対して職場定着を促し、戦力化するために行われる一連の施策。従来の一時的な新入研修と違い、戦略的かつ中長期にわたってサポートを継続する点に特徴がある。
新メンバー専用チャットルーム「駆け込み寺」 。ちょっとした疑問を誰に訊けば良いかわからない時、まず人事に訊けるので気軽に質問できると好評。他にも在宅勤務tips共有など様々なルームが立ち上がった。
オンラインでも活発なやり取りが全社ぐるみであるんですね。
ただ、オフラインの集まりが一切なくなってから、人に関する情報量が圧倒的に減ってしまいましたね。それを補うために、社内報で誰がどんな業務に取り組んでいるかスポットライトを当てて広報したり、これまではマネージャー以上だけに公開されていた各事業部の月次レビューを全社公開に変えたりするなど、積極的に情報開示するように心掛けています。
社内の動きが見えなくならないように意識的な“見える化”が大事だと。
ええ。とはいえ、試行錯誤ですけれどね。社内ラジオをやってみたりもしました。全てのイベントが強制参加だと面倒に感じる人もいますから、これは自由参加にしました。役員や社員の人となりがわかるようなインタビュー形式の番組を目指して放送してみました。
社内ラジオは企画側の力量が試されますよね。
そうなんです。リスナーの反応が返ってくるわけじゃないので、楽しんで聞いてもらえているか不安に感じる時も。 ただ、何が正解か分からないので、手探りで進むしかありません!
仕事に支障が出ない最低限のコミュニケーションだけで良しとする人もいますが、業務を円滑に進め、企業が成長するためには豊かなコミュニケーションが大事。企画会議やブレストなど場合によってはface to faceの対話も今後は必要だと思います。
採用エリアが拡大、社員の居住地にも変化
リモートがメインになると、住む場所の選択肢も広がりそうですね。
引越しした社員も少なくないですよ。実家のある東北や九州に移住する人もいれば、関西や北関東在住のフルリモート前提で入社する人も出てきましたから、採用面でもメリットを感じています。
ちなみに出社が必要なら通勤手当か出張費として交通費を実費精算。その代わりに定期代と近距離手当(※)を廃止しました。
※会社から一定の距離以内に住んだ場合に手当を支給したり、家賃補助したりすること
リモートは全社員が対象?
全社員が対象ですが、一定数オフィス出社が必要なメンバーもいます。総務の2人も隔週交代制で出社してもらっています。業務の電子化は進めていますが、押印対応や郵便対応など、アナログ対応の業務も残っています。
リモートメインを前提とした大幅な制度改革
リモートメインに移行する際、新設した制度はありますか?
中抜けも可能なコアタイムなしのスーパーフレックスを導入しました。
スーパーフレックスにするとはかなり思い切りましたね!
昼前から夕方くらいまではアクティブな状況にしておくのが大前提ですが、コアタイムを決めなくても支障が出ないように工夫して働けていますよ。
ルールで縛りすぎないのが良いのかもしれませんね。
それぞれの業務内容や生活リズムが違いますから、そもそも決められません。それでも “自律自走“を合言葉に、各自がプロの自覚を持って行動できていると思います。
フルリモートの課題を挙げるとすれば?
顔が見えないゆえの不安感はあるかもしれません。実際、直近のサーベイでは健康面のスコアが全体的に低めに出てしまったんです。特に1人暮らしだと孤独感を感じてしまうメンバーがいるようですね。
リモートだとマネジメントが難しいという声が多いですが、いかがですか?
顔が見えれば「何か困ってそうだな」と雰囲気で察知できるけれど、リモートだと積極的にヘルプを出してもらわないと気づけないので、その辺りの難しさは確かに感じます。
オフィス=ピクスタの象徴とコミュニケーションの場
次はオフィスについて伺いたいと思います。今回の移転ではオフィスを1/3にまで縮小したそうですね。
ええ。出社率の記録を元に、社員約120人に対して20席あれば十分だと判断しました。実際、今は1日に5~6人程しか出社していません。
それでもコロナが収束したら、ちょっとした集まりや撮影に使える場所が欲しいね、ということでフリースペース(左下)を作りました。あとは会議室を一つに減らした分、2人用のフォンブース(右下)を幾つか設けています。
左)着席時最大30席弱とれるフリースペース。打ち合わせや雑談もリラックスしてできる。右)会議は基本的にオンライン。他の出社メンバーの集中を妨げないためにも通話やWeb会議はフォンブースを使う。
社員の方の反応はいかがでしたか?
「日差しが一日中入って気持ち良い」、「前のオフィスより居心地が良い!」とおかげさまで好評です。これまでは数年に1度くらいの頻度で拡大移転を繰り返してきましたが、今回は初めての縮小移転。費用を抑えるところは抑えてミニマム設計しつつ、コミュニケーションしやすい環境になることを意識しました。
左)フリーアドレスに移行するため仮想デスクトップを導入し、デスクトップPCを全て廃止した。 右)ちょっとした立ち話がしやすく、座りすぎ防止にもなるスタンディングテーブル兼ロッカー
明るくてスタイリッシュなオフィスですよね。企業によってはオフィスをリッチに造りこんで社員を呼び戻そうとするところもあるようです。
当社の場合、緊急事態宣言が解除されても出社する社員が増えなかったので、そういう考えにはなりませんでした。ウォータサーバーやオフィスコンビニ等の福利厚生も一旦全部解約しました。今はバランスを取りながら再び取捨選択しているところです。
リモートがメインでありながら、オフィスを残す判断をしたのはなぜでしょう?
会社組織って人の集まりだから、実体がないものです。
だからこそ、1人1人が帰属意識を感じられるリアルな何かが必要だと思いました。
それがオフィスだと
はい。何かあれば来て誰かに会える、話せる、集まれる。そんな場所をピクスタの象徴として持ちつづけたいと今は考えています。
本日は貴重なお話をありがとうございました。
こちらこそありがとうございました。
今回協力して下さった企業様
ピクスタ株式会社
- 設立
- 2005年
- 本社所在地
- 東京都渋谷区澁谷三丁目3番5号
- 事業内容
- デジタル素材のオンラインマーケットプレイス「PIXTA」の運営、出張撮影プラットフォーム「fotowa」の運営
- 従業員数
- 連結146名、単体90名(2020年12月末時点)
- Webサイト
- https://pixta.co.jp/