前編では、日立ソリューションズが取り組む働き方改革の中でも、テレワークの導入トライアルについてお届けしてきました。
さて、今回の後編では、この日本を代表するシステムインテグレーション企業が、働き方改革を通して実現しようとしているイノベーションについてまで、お話を広げていきたいと思います。
テレワーク導入における課題について
テレワークを導入して、『会社に対する満足度が高まった』など、社員の皆様からポジティブな声が多く寄せられたとのことでしたが、反対に課題などはありましたか?
そうですね。通勤時間削減や私生活の充実化などについては大きな効果が認められるのですが、その一方、総実労働時間の縮減については、まだまだ課題がありますね。通勤時間が減って心の負担と不満解消にはつながったものの、仕事量が変わっていないという指摘も受けています。なかには、『むしろ残業が増えた』『ちょっと働きすぎてしまった』などという声も出てきています
なるほど、オフィスやチームから物理的に離れると、どうしても個人でワーク量の調整やタイムマネジメント等をしなくてはいけない面が増えてきますもんね。
そうなんです。当社の場合、テレワークにおいての勤怠管理面では、勤務時間や業務の進捗が把握できるようなICTツールと、Skypeでのコミュニケーションとを併用して、社員の“働きすぎ”の抑止に努めています。テレワークをする時のルールとしては、Skypeを起動しておくこと、と定めています。Skypeに関しても、まずは役員から導入を進めました。その上で、役員から一般社員に向けて、Skypeで『おはよう』『今の進捗はどう?』などとメッセージを送ってもらって、それらのやりとりを社内で公表したんですね、事例紹介として。すると、徐々にSkypeの利用が浸透してきまして、今では社内におけるコミュニケーション手段の一つとして、だいぶ定着してきたのかな、と手応えを感じています
やはり、働き方改革を進めていくにあたっては、ICTツールの活用がとても大切な要素になってくるんですね。
はい、そうだと思います。特に当社は働き方改革のICTソリューションを支援している会社でもありますので、テレワークの就業管理システムやRPA(※)を実際に導入し、会議ソリューションやAIアシスタントなども先取的に活用するなどして、さまざまな課題対策に取り組んでいます。
※RPA:ロボットによる業務自動化(Robotics Process Automation/ロボティック・プロセス・オートメーション)の略。人工知能(AI)を備えたソフトウェアによって、定型的な事務作業(主にホワイトカラー的な繰り返しの多い間接業務)を自動化・効率化する仕組み。「仮想知的労働者」「デジタルレイバー(Digital Labor)」とも。
そのような先進ツールですが、社員の方々に馴染んでもらうまでには、やはり苦労されましたか?
そうですね。事前に情報の共有を図り、SkypeからAIアシスタント、RPAまで、とにかく使ってもらうことを第一に周知に努めていきました。初めのうちは不満や戸惑いの声があっても、慣れていくにつれて、みなさんツールの価値を感じられるようになっていったみたいでして。社員の教育・啓発という観点でいうと、初めのうちは、ある程度の強制力も必要なのかなと思っています。たとえば、テレワーク導入の際には、“週1回は所属部署のオフィス外で働くように”と促す、などですね。
テレワークという、今まで社内になかった文化を定着させるには、初動を力強く後押しすることが大事だったんですね。
はい。しかし、そのようにテレワーク推進を促していく一方で、テレワークができない社員もいるという事実を見落すことはできません。当社の場合、現時点では、一部の社員は、職務上、どうしても会社で実施しなければならない業務もあります。そうすると、テレワークできる立場の社員とテレワークできない立場の社員との間に、“満足度”や“負担感”においてギャップが生じてきてしまいます。ですので、『おかげさま』という気持ちを持って、社員一人ひとりがお互いの立場を理解し、配慮し合えるような関係性も作っていけたらと思っています。
なるほど。難しいことかもしれませんが、本当に大切なことですよね。
テレワーク以外の取り組みについて
さて、これまでは、主にテレワークにおける取り組みについてお話を伺ってきましたが、それ以外の取り組みについても教えていただけますか?
はい。たとえば、部署ごとに業績評価を前提に『平均残業時間』『年次有給休暇取得率』『長時間残業率』の3つの評価項目ごとにポイントで競わせて格付けしインセンティブを出したり、あとは社内ポイント制度の仕組みを作ったり。
社内ポイント制度?
はい、感謝の気持ちをポイントとして付与していく制度です。もっとざっくり言えば、社員同士で褒め合ってもらうための仕組みですね。社員のモチベーション低下を防いでくれる面白い仕組みなのですが、これは、若手が出してくれたアイデアを元にして、形にしたものなんです。
そうなんですか! 若手のアイデアがこうして形になっているというのは、他の若手社員にとっても大いに励みになることですね。
あと、お子様のいる社員を対象としたものとしては、 『ワーキングマザー交流会』 や、 『育児・仕事両立支援金制度』 などがあります。交流会の方は、育児中のお母さん社員から現場ならではの意見を吸い上げて、色々な施策の立案に活かしていこうというものです。
お子さんのいる社員さんたちにとっては、とても嬉しい制度の数々ですね。
おかげさまで、これらの制度を利用しながら、育児などと仕事を両立してくれています。
今後の取り組みについて
これまで、御社の働き方改革について伺ってきましたが、最後に、これからの展望をお聞かせいただけますか?
はい。2016年から始まった全社キャンペーン『ワークスタイル改革運動』をより力強く推進していき、『テレワーク検証』から得た知見や、積み重ねてきたダイバーシティ推進のノウハウを活かして、 『ライフスタイルイノベーション事業』 としてより大きく展開していきます。豊富なソリューションを全体最適の視点で組み合わせ、ワンストップで提供することが当社の強み。時代に求められるクラウドサービスやシステムを提供し続けることによって、これからも、働く人びとのライフスタイルイノベーションを応援していきたいと思います
本日は、貴重なお話、本当にありがとうございました!
こちらこそ、どうもありがとうございました。
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今回協力して下さった企業様
株式会社日立ソリューションズ
- 設立
- 1970年
- 本社所在地
- 東京都品川区
- 事業内容
- ソフトウェア・サービス事業
情報処理機器販売事業
(参照:日立ソリューションズ. 会社概要. https://www.hitachi-solutions.co.jp/company/about/) - 従業員数
- 4,675人(連結ベース 11,522人)(2018年3月31日現在)
- Webサイト
- https://www.hitachi-solutions.co.jp/