国内で初めて「がん保険」を提供した、「生きるための保険」のリーディングカンパニー・アフラック生命保険。
2014年から、女性の活躍推進を中心にダイバーシティへの取り組みを始め、テレワークの推進においても、2018年に、厚生労働省が主催する「テレワーク推進企業等厚生労働大臣表彰(輝くテレワーク賞)」の「特別奨励賞」を受賞するなど、アフラックの事例は、現在、新しい働き方を模索する数多くの企業から注目を集めています。
今回は、そんなアフラックの働き方改革について、ダイバーシティ推進部の若濱靖樹様、髙代公美様にお話を伺いました。
INDEX
はじまりは、ダイバーシティへの取り組みから
早速ですが、働き方改革にまつわる取り組みとして、御社が実践してきたことについて伺えますか?
はい。当社では、まず2014年から「ダイバーシティ」への取り組みを始めました。
当社の従業員の男女比率はほぼ半々なのですが、男性と比べると、指導的立場や管理職に占める女性社員の割合が低いといった、女性のキャリア形成における課題が多くありました。
そこで、まずは女性が当社でキャリアを築いていけるように働きやすい環境を整えようということで、ダイバーシティ、特に女性の活躍推進を主眼に据えて、「働き方」に関する取り組みを実践していきました。
そして2015年に、創業50周年にあたる2024年に目指すべき姿として「Aflac VISION2024」を策定するとともに、「ダイバーシティ」と対になる両輪として、「アフラックWork SMART」という働き方改革をスタートしました。
まずは「ダイバーシティ」への文脈で取り組みをスタートさせていった、ということですね。
はい、そうですね。当社が目指すのは、「イノベーション企業文化の醸成」です。新しい価値を継続的に生み出していける企業であるために、多様な属性や価値観をもった人財の育成=ダイバーシティ推進に力を入れています。
イノベーション企業文化の醸成
「イノベーション企業文化の醸成」というのは、創業当時からずっと言われてきたことなのですか?
当社の企業理念には「新たな価値の創造」が明示されており、表現は異なりますが、創業当時からの理念が現在にも受け継がれています。
アフラックは、日本で初めてがん保険を販売した会社です。「がんに苦しむ人々を経済的苦難から救いたい」という創業の想いのもと、がんにまつわる社会課題を解決しようという確固とした覚悟があります。
そういった意味で、がんにまつわる新たなサービスや商品をどんどん生み出していこう、イノベーションを起こしていこうというのは、当社の行動原理のようなものなのです。
目まぐるしく変化していく現代にあって、様々なバリエーションの保険商品を開発していますし、売り方に関しても、対面だけでなくウェブ販売も始めています。また、ソリューションの枠組みを広げるため、外部の企業とコラボレーションする「キャンサー・エコシステム」を構築しています。
エコシステム、ですか?
はい。エコシステムとは、複数の企業や団体が商品開発や事業活動などでパートナーシップを組み、お互いの技術や仕組みを活かしながら、業種や業界の垣根を越えて共存共栄していく仕組みです。
がん保険を販売するだけでなく、未病に対する働きかけを行ったり、がんに罹患した場合、あるいは、亡くなってしまった場合にサポートするしくみを整えたり…。多様な視点と柔軟な手法で、がんに対してアプローチしていこう、ということです。
なるほど。確かに、エコシステムを構築することで、一社だけでは得られなかったソリューソンが見つかりそうですね。
そうなんです。そして、そのことは、社内でイノベーションを醸成しようという場合でも同じことで、すべての社員の多様性を尊重するダイバーシティが大事だと思います。
当社には、新規事業推進部やベンチャー企業への出資を行うグループ会社があります。しかし、それらの部門だけにイノベーションの醸成に向けた取り組みを任せるのではなく、全社員が日常業務の中で意識して動いていきましょう、としています。
どんな専門家集団であれ、特定部署における同質な人たちの間だけでは、イノベーションは生まれにくいと考えています。
社内外の知見を広く活用しながら、新たな価値を創って成長していこう。そして、そのストーリーを前進させていく両輪が、競争戦略としての「アフラックWork SMART」と「ダイバーシティ」である、ということです。
ダイバーシティ推進:女性の活躍推進
それでは、両輪の内のひとつ、「ダイバーシティ推進」について、詳しく教えていただけますか?
はい。2014年にダイバーシティへの取り組みを始めたのですが、その頃は、女性と男性とでは、グレードを構成する形に大きな差がありました。
女性社員は、指導的立場である管理職や課長代理の下の3グレードという層に多く滞留していて、ここから上の層に上がるのは非常にハードルが高かったんです。
そこで、3グレードからパイプラインを強化していきましょうということで、14年から継続的に、意識の啓発や研修によるスキルの定着を図っています。
3グレードの女性は30歳前後の方が多く、結婚したり出産したりと様々なライフイベントが集中する時期でもあります。ですので、そのタイミングでキャリアが断絶されないように、在宅勤務などの人事制度を整え、スムーズに復職できるよう環境整備に努めています。
ダイバーシティ推進の文脈でいうと、やはり、女性がメインの対象になるのでしょうか?
そうですね、女性の活躍推進はダイバーシティ推進の第一歩だと思っています。まずは、女性が活躍しやすい環境を整備するために、在宅勤務やフレックス勤務など様々な制度を導入してきました。その結果として、女性だけでなく多くの社員のニーズを満たすことにも繋がっているので、まずは女性の活躍推進に力を注いでよかったなと思っています。
ダイバーシティ推進:社内コミュニティーの広がり
女性の活躍推進以外に、ダイバーシティに関わる取り組みはされていますか?
当社は、2017年12月にがんを経験した社員によるコミュニティー「All Ribbons」を立ち上げました。All Ribbonsでは、がんを経験した社員がその経験を活かし、がん治療と仕事の両立に悩む社員のサポートやがん就労支援に関する各種制度の充実などに取り組んでいます。
All Ribbonsメンバーの体験をもとに、2018年9月にはがん治療のための休暇制度として日数制限なしで取得できる「リボンズ休暇」を新設しました。
それは素晴らしい取り組みですね!
その他にも、最近育児や介護LGBTに関する社内コミュニティーメンバーを募集しています。
当事者たちから、社内に話し合えるコミュニティーが欲しいという声が寄せられたので、立ち上げに向けて鋭意動いているところです。勇気を出して上げてくれた声に対しては、しっかりと応えていきたいと思っています。
取り組んでいくにあたって、やはりナイーブで難しいところもありましたか?
そうですね。LGBTについて考え始めた当初は、実際にその当事者の方が当社にどれくらい居るのかすら分かりませんでした。当社では、LGBTに対して目立った差別はないながら、配慮も足りていないという状態でした。
例えば、「今日はピンクの服を着ていて、何だか女子っぽい格好だね」とか、私たちが何気無く交わしている会話でも、当事者を居心地悪くさせ得るんですよね。
LGBTの方々は、同性のパートナーがいても、カミングアウトできていないがゆえに、パートナーの看護が必要な場合も「自分が体調不良なので休みます」といったふうに、小さな嘘をつき続けていかなければならない。そして、それが積み重なってストレスになっていき、仕事への集中力が削がれていく…。と、そんな話も聞いています。
なるほど…。
当社では、役職員一人ひとりが「チームとして働くこと」を常日頃から意識し、体現しています。
同じ会社で働くチームメンバーが、そういったことで働きにくいと感じているのであれば、一緒に考えながら、心地よいコミュニティーを丁寧に作っていきたいと思っています。また、コミュニティーメンバーとも意見交換しながら、会社が抱えている課題の解決に向けて取り組んでいきたいと考えています。
社内コミュニティーの取り組みには、大きな可能性を感じますね!
はい。実際に、育児に関するコミュニティーでは、面白いことが起こっています。女性ばかりが応募してくるかなと想定していたのですが、フタを開けてみたら男女半々だったんです。我々としては嬉しい誤算ですね。
ここでママ友、パパ友のつながりがたくさん出来れば、仕事と家庭の両立にも役立ててもらえるのかなと思っています。
ダイバーシティ推進:ダイバーシティカウンシル
このように社内コミュニティーを立ち上げたほか、ダイバーシティの取り組みを現場で浸透させるべく、「ダイバーシティカウンシル」という社内公募で集まった社員が参加する会議体があります。
同カウンシルでは、テレワークなどの新しい働き方に対する悩みを解消するためのセミナーを開くなど、ボトムアップ型で情報発信やイベントを行っています。
カウンシルはいつ頃立ち上げたのですか?
2016年です。応募は全国からあり、テレビ会議等を通じて、地方支社の現状も知ることができる良い機会になっています。年齢、性別、社歴、部署もバラバラで、管理職や入社して間もない一般社員もいます。ある意味、この場自体がダイバーシティです。
カウンシルでトライアルした取り組みは、社長をはじめとした役員で構成されている「ダイバーシティ推進委員会」で、カウンシルメンバー自らが報告を行います。
若手社員も、社長の前で課題を報告できるということで、貴重な直言、提言の場ですよね。そんなこともできてしまえるというのが、当社の社風とでもいいましょうか。
アフラックWork SMART:5原則
それでは次は、両輪の内のもう一方、「アフラックWork SMART」について、詳しく教えていただけますか?
はい。「アフラックWork SMART」とは、“仕事の進め方を変える”ことで、
・仕事の付加価値の創出
・ライフの充実化
を目指していこうという取り組みです。仕事に取り組む姿勢を社員一人ひとりが意識して、自分の働き方を見直しましょう、ということです。
「SMART」というのは?
「SMART」とは、
・S=See the big picture(視野を広く持つ)
・M=Maintain focus(目的を考える)
・A=Act with initiative(自分から動く)
・R=Respect dialogue(対話を重ねる)
・T=Think time-value(時間を意識する)
を意味しています。代表取締役社長の古出眞敏が、2015年頃に、当時の役員たちとともにディスカッションを重ね策定したものです。
この中で、当社が特に強く意識しているのは、「T(時間を意識する)」へ至る道筋です。残業を削減すれば「働き方改革」というわけではありません。
「S」「M」「A」「R」をそれぞれ実行することで、仕事が効率化され、付加価値が上がり、その結果として残業時間も削減され「T」が実現されるということなので、残業削減ありき、というわけでは決してありません。
なるほど。
当社ではそれら「S」「M」「A」「R」「T」を「5原則」と呼んでいます。そして、この「5原則」に「時間と場所にとらわれない働き方」と「ワークライフマネジメント」を加え、その3つをテーマとして、「アフラックWork SMART」を推進しているところです。
アフラックWork SMART:現場の声を聴くということ
その「アフラックWork SMART」を進めるにあたって、具体的にはどういったアクションを起こしていかれたのですか?
目標を掲げやすいのは数値化できる「T(時間を意識する)」だったので、まずは「会議を17時以降には行わないというルールを設定する」といったようなことから着手しました。このように、限られた時間の中で、業務の最適化を図っていくところから始めたのが、2015年のことでした。
そして、「2020年までに20時間未満に削減」という目標を掲げ、そこから、毎年10%ずつ残業時間を減らしていきました。この目標については、現時点で(2019年8月時点)すでに達成しています。
すごいですね! ところで、この経営層が策定した「アフラックWork SMART」を一般社員にまで浸透させるには、色々とご苦労があったと思うのですが。
そうですね。やはり、理念的な部分は、対面でコミュニケーションを取らないと浸透しづらいので、「タウンホールミーティング」というディスカッションの場を当初から設けています。
これは、経営陣が支社などに出向いて一般社員と直接対話をするもので、「アフラックWork SMART」を掲げる前の2014年からコミュニケーションの一環として実施していて、今年も継続しています。
どういった社員が参加していたのですか?
一般社員や所属長などです。現地の支社で10名程度選定してもらって、90分くらいの枠を設けて実施しています。
参加された方の満足度はいかがでしょうか?
「アフラックWork SMART」に込めた想いを経営陣自らが語ってくれるので、腑に落ちると好評です。また、職場の課題を経営陣に直接伝える、良い機会でもありますし。
参加人数には制限は設けているのですか?
特に設けていませんが、10名程度が適当だと思っています。あまりに多いと社長の話を聴くだけで終わってしまうので、意見交換がしやすいように、多くても15人くらいまでに留めています。
実際に、どのようなことが話し合われるんですか?
経営陣からは、「なぜ、『ダイバーシティ』と『アフラックWork SMART』なのか。そして、これは福利厚生ではなく、あくまでも経営戦略・競争戦略であること」などが伝えられ、「職場では、どんなことを実践していますか」と参加者にそれぞれ訊きながら、ディスカッションが進められていくという形が多いですね。
なるほど。
このディスカッションの場が、経営陣と一般社員(特に若手社員)の間にある認識の溝を埋める役割を果たしてくれていると思っています。
このタウンホールのような直接対話ができる場以外に、情報発信などはしているのでしょうか?
はい、しています。浸透させるには継続性が大事だと思っているので。管理職に対しては、四半期に一度、全社の管理職会議を通じて発信しています。
一般社員に対しては、社内ポータルに働き方の取り組み事例を載せたり、毎年実施しているeラーニングを通じて周知をしています。
現場から自発的にプロジェクトが
その甲斐あってか、今ではかなり浸透してきていて、働き方を変えるためのプロジェクトが各部署で立ち上がっています。
例えば、どんなプロジェクトが立ち上がっているんですか?
テレワークがしやすいIT部門では「テレワーク強化デー」を設けたり、テレワークしにくいオペレーション部門では、どういったインフラや仕組みがあればテレワークが可能になるのかを考えるプロジェクトが立ち上がったり…。
現場から、自発的に課題解決に向かおうとする動きが出てきているのは、本当に嬉しいことだなと思っています。「できない」ではなく、「どうすればできるのか」を、現場と一緒に考えていけるようになっているのは、今年の新しいステップですね。
継続は力なり、ですね!
本当にそうですね。全体的なインフラは会社側で整備できても、個々の部署の課題については、どうしても把握しきれないところもありますので、こうして現場から声を上げてもらえるというのは、とても良い流れだと思っています。
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今回協力して下さった企業様
アフラック生命保険株式会社
- 設立
- 2018年(アフラック生命保険株式会社)
- 創業
- 1974年(アメリカン ファミリー ライフ アシュアランス カンパニー オブ コロンバス・日本支店)
- 本社所在地
- 東京都新宿区西新宿
- 事業内容
- 生命保険業
- 従業員数
- 5,113人(2019年3月時点)
- Webサイト
- https://www.aflac.co.jp/