日本初のWeb地図検索サービス「マピオン」と国内最大の電子チラシサービス「Shufoo!」の事業統合により、2019年4月に新たなスタートを切った株式会社ONE CONPATH(ワン・コンパス)。前身である株式会社マピオン設立の22年前と比べて大きく変わった社員のライフステージに寄り添うべく始まった働き方改革についてお話を伺いました。
INDEX
ライフステージの変化と共に始まった改革
働き方改革がスタートしたきっかけからお伺いできますか。
きっかけは社員の平均年齢が上がってきてライフステージが変化してきた事でした。
私が入社した13年前は、社員の平均年齢が28~29歳くらい。個人に負担が掛かるような無茶な働き方をしても勢いでカバーできてしまう時期でした。
でも、今は平均年齢が38歳くらいまで上がって結婚や出産を迎えたり、育休を取る社員も増え始めました。創業当時から休暇・福利厚生制度はあったものの、いざ制度を使ってみたら「実は育休が取りづらい」など制度の穴が分かってきました。
更に世間の風潮の変化や法令順守の問題もあって、少しずつ制度をブラッシュアップしてきた感じです。
もともと御社は凸版印刷株式会社のグループ会社としてスタート(※)されたのですよね。
そうですね。凸版印刷自体は法令順守の意識が高く、創業当時は、凸版印刷らしい文化が根付いていましたね。でも、段々ワン・コンパス自体で採用した人たちが増えてくると、制度の枠からはみ出たいろいろな働き方が混在するようになってしまいました。
※1996年に凸版印刷とNTTの共同事業としてマピオンのサービスが開始、2019年4月に凸版印刷の「Shufoo!」事業を株式会社マピオンに継承したのに合わせて現在の株式会社ONE COMPATHに社名変更した。
混沌としつつあった働き方を、会社の成長と共に整備していったわけですね。
はい。凸版印刷の就業規則を参考にしながらルール作りを進めました。
出社や退社にはフレックス制度を取り入れているそうですね。
コアタイムを10~15時として運用しています。
子どもがいる社員は7~16時とか、週末は15時退社をするなど、社風的にも問題なくやっていますし帰りづらい雰囲気はないですね。あとは、プレミアムフライデーも推奨しています。
プレミアムフライデーが風化している企業も多いようですが。
当社では「今日早いね」「プレミアムフライデーですからね!」というやり取りをよく見かけます。周りに説明しやすいですよね。
早上がりすれば残業時間が減りますし、休めるわけですから、退社を促すきっかけになればいいかな、と思って当社では続けています。
5,000円を支給、おでかけ休暇とは?
堂々と早帰りできる雰囲気は大事ですね。では、有給休暇の取得を促す為にしている事はありますか。
上長や人事総務からアナウンスを続けて改善を目指しています。
有給をまったく取らない文化の会社から転職してくると、有給=悪みたいな固定観念が拭えず「休んで」と言っても休まない社員もいますから。有給も早退と同じく取りやすい雰囲気を作るのが大事だと思います。やはり、しっかり休んで、元気に仕事をしてほしいですからね。
御社の場合、有給休暇は何日くらいありますか。
年次有給休暇が22日、その他にリフレッシュ休暇が5日、傷病休暇が5日、おでかけ休暇が1日あります。
おでかけ休暇とは?
お出かけするために休んでもらう休暇で、1人あたり5,000円の支給もあります。
お出かけの軍資金まで支給するのはすごいですね。なぜそのような休暇を?
2014年に、当時の社名であるマピオンのビジョンを明確にするため「ココロも、カラダも、動かすマピオン」という企業スローガンを制定したんです。外出が楽しくなるようなサービスを発信し、お客様の心と体を動かせるような会社にしよう、と。
そこで、「まず自分たちがお出かけを楽しまないと!」という話から、この休暇を設けることにしました。それ以来、社名が変わってもこの文化は継承しています。
出掛ける姿勢を支援したいですし、そして、サービスを考えるきっかけにしてもらえればと思っています。
出かけた後にレポート提出などあるのでしょうか。
ないですね。最初は、強制的に業務として外出を促す案もありました。ですが、仕事モードで出かけて楽しめなかったら、意味がないですよね。
だから、社員にはおでかけ休暇の意図は伝えてはいますが、報告などは求めません。
それでも、社内チャットで「おでかけ休暇を使ってこんな所に行ってきました!」と写真を投稿してくれる社員が沢山います。
活用する社員は多いですか。
はい。おでかけ休暇に限れば休暇取得率は99.4%。年次有給取得が平均16日ですから、全ての有給を合わせれば平均20日くらいは取得しています。
給与制度刷新で残業時間を是正
長時間労働を是正して仕事を効率化する為にした事はありますか。
残業時間を意識してもらう為に、ノー残業デーを設けています。18時以降の会議を禁止した時期もありましたが、急な会議が必要になる状況もあるので、やめました。
あとは、過重労働気味の社員を把握して本人に不調がないかヒアリングしたり、仕事の分散ができないか本人ではなく上長に掛け合うなど、人事総務側でも動くようにしています。
人事側が積極的に動く、と。ダラダラ残業や付き合い残業をやめるには意識改善も必要ですよね。
そもそも労務費予算のうち残業時間を15時間/月で組んでいますから、超えると数字上もインパクトが出ます。だから、予算を達成するためには「長く残業しよう」とは思わないし、上長も長時間残業を良しとしません。
ただ、生活のために残業代を稼ぐ「生活残業」も一部では実態としてありますが、御社ではいかがですか。
それは、給与制度を変えた事でクリアになったと思います。
年2回の賞与制だったのを月に均して毎月払うように変えました。賞与分が給与に含まれるイメージです。
賞与分も給与の算定基礎に入るようになったので、残業の単価が以前よりも上がった計算になるわけです。だから、この給与制度変更の時に社員達に伝えたのは「給料を減らしたいわけではない。残業を減らしても同じくらいの給料になるので効率よく働いてほしい」と。
もちろん、会社側としても残業されると費用対効果が悪くなるので、そこを抑えていこう、という流れに自然となっています。
パーティションをなくして生まれたコミュニケーションの活性化
在宅勤務などのリモートワークは実施していますか。
制度上はありません。
業態的にはリモートワークを活用するのもアリだと思いますし、あれば採用面でもアドバンテージにはなるでしょう。集中して作業したいエンジニア職は在宅勤務のニーズも多いと思います。
やらない理由としては何がネックになっていますか。
遠隔の状態で評価をどうするのかは課題ですし、顔を合わせた方が企画のアイデアも生まれやすいよね、という意見もあって今は出社するスタイルにしています。緊急時対応の為にもリモートワークも取り入れられたらとは思いますが、そこまで検討が行っていないのが実情ですね。
執務スペースはフリーアドレスですか。
固定席ですね。フリーアドレスを検討したこともありますが、誰がどこにいるか分からないなどデメリットの方が多いと判断しました。デスクトップパソコンも一定数ありますし、フリーアドレス化に伴う個人ロッカーの新設などは面積的に難しそうです。外回りの営業マンが少なく社員のほとんどが内勤なのも、固定席を続ける理由かもしれません。
働く場所の改善で何かしたことは?
ウォーターサーバーや自販機の設置などやっていますが、
机の上にあった目隠し用のパーティションをなくしたことは大きかったですね。以前は向かいの人の顔が見えない高さで、誰かと話すのにも立ち上がって「お~い」と探していました。それを取り払ったら、社員同士のコミュニケーションが増えました。
表彰制度でモチベーションUP
社員の働く意欲をUPする為にしている事などありますか。
表彰制度といって、部長がノミネートし役職者が投票してMVPを決めるイベントを3年前からやっています。MVPに選ばれると一ヶ月間自販機のマスターキーを自由に使える!なんていう特典も一時期は付けたりして(笑)。
正直、営業マン以外は成果が数値化しづらいので選出するのに悩んだりしませんか。
悩む時もあります。でも、光の当たりにくい部署にこそ焦点を当てよう、と始まった制度でもあります。成果が売上などの数値で見えない所をちゃんと見ていこう、という意図がありますから今でも続けています。
最後に、これから取り組みたい事を教えてください。
休憩スペースをうまく活用してコミュニケーションが自然発生するようなスペースを作りたいですね。
でも、まずは社員が増えて執務スペースがぎゅうぎゅうになっているのを解決するのが喫緊の課題。これから増床の交渉など取り組んでいきたいです。
今回協力して下さった企業様
株式会社ONE COMPATH
- 設立
- 1997年1月20日
- 本社所在地
- 東京都港区芝浦3-19-26 トッパン芝浦ビル
- 事業内容
- プラットフォーム事業,ビジネスインテリジェンス事業 ,メディア事業 ,コンシューマ課金サービス事業
- 従業員数
- 116人(2019年4月時点/他社からの出向者含む)
- Webサイト
- https://onecompath.com/