前半の【オフィス編】では、気軽な交流やコラボレーションを促進させる新オフィスの様子をお届けしましたが、ミクシィが大事にする「すべてはコミュニケーションのために」というミッションは働き方や制度にどう反映されているのでしょうか?対面のコミュニケーションを大事にしつつ、リモートワークの働きやすさも担保する独自の「マーブルワークスタイル」やコロナ禍でのスピーディで手厚い社員支援など、同社の働き方についてインタビューしました。
INDEX
強制在宅勤務でリモートワークの理解が進んだ
まず、数年前から進めている働き方改革のお話から教えていただけますか。
西)はい。当社では2018年頃から残業対策や育児・介護しながらでも働きやすい職場づくりなど、働き方改革に取り組んできました。まずは2019年4月に時短フレックス制度を導入しました。この制度は、時短勤務者でもフレックスを利用できるよう、もともとあった時短勤務制度に時短フレックス制度を追加し、働き方によって選択ができるように設計しました。その後、リモートワークの導入検討のために、2019年6月頃から一部の部署と社員に限定してリモートワークのテストを始めました。
改革はボトムアップで進めていったんですか?
西)働き方改革に関しては経営陣からトップダウン的な指示は特になく、ちょうど育児しながら働く社員が全社的に増えていたタイミングだったので、まずはそこに特化することにしました。なので、トップダウンではなくアイデアを練った上で、上層部の意見も反映しながら制度として作り上げていきました。
上層部に提案した時、反対意見などはなかったのでしょうか。
西)特にはありませんでした。というのも働き方改革チームの中に人事本部長が入っていたため、経営層との橋渡しを担っていたからだと思います。
リモートワークテストの反応も上々で、今年は育児介護中の社員を中心に認めていきながら、徐々に全社に開放していく予定でした。
全社員にリモートワークを開放していこうとした矢先にコロナが…
西)はい。まさに2020年3月、リモートワーク規定を固めて全社員可能にするはずのタイミングで新型コロナウイルス。段階を踏んで進める予定だったのに突然強制的に全社員在宅勤務になり、結果的に3ヶ月も続きました。
お話を伺った西様
それは大変でしたね。
西)ただ不幸中の幸いといいますか、実はリモートワークのテスト段階では「メリットはわかるが、オフィスでみんなで楽しく働くことのほうが目指す姿だと感じる」という意見も経営陣からありました。
でも、全社員が在宅勤務をやってみたら「成果はそこまで下がらないし、むしろ上がることもあるよね」と、経営陣や上司陣の意識が徐々に変化していったんです。
リモートワークへの抵抗が薄れたんですね。
西)そうだと思います。その上で緊急事態宣言解除後、「さて、これから働き方をどうしようか」というタイミングでアンケートを取ったところ、「リモートワークを実施してみて良い効果についても浸透してきたので、このまま制度化を目指したい」という意見も多くあり、「マーブルワークスタイル」構想が始まりました。
多様な働き方が融合して進化する「マーブルワークスタイル」
マーブルワークスタイルとは?
西)ひとことで言うと、リモートワークとオフィスワーク(出社)が混合している状態。ミックスのように混じり合うのではなく、それぞれの働き方の良いところがマーブル模様のように上手く融合してより進化したい、という思いが由来です。大きな施策は以下の2つで、7月からしばらくはテスト期間で、その後正式な制度化を予定しています。
①基本はオフィス出社、週3回までリモートワークOK
西)コロナ前は毎日出社が基本でしたが、適正なリモートワーク回数をマネジメント層にもヒアリングして(下図参照)、今後は出社を基本としながらも週3回まではリモートワークを可能としました。
ただし、コロナの状況を見ながら臨機応変に対応しているので、8月~9月は週4日在宅、残り1日は出社を推奨しています。
マネージャー職以上を対象としたアンケート(2020年5月下旬集計、回答者109名)。週2~3回のリモートワークが適正とする回答が約7割を占めることが分かった。
フルリモートの会社も増える中、そうしないのはなぜですか?
西)新オフィスのコンセプトでも嵯峨がご説明したように、当社はコミュニケーションを要にしたサービスが強みです。出社してリアルにコミュニケーションを取りながら仕事を進めたりクリエイティブを生み出したりすることに価値があると考えていますので、現時点でフルリモートにはしていません。
マーブルワークは出社と在宅勤務がベースですが、サテライトオフィスの活用は?
西)サードプレイスオフィスを会社側が提供するのも案としてはありますが、まずは、本社か在宅かうまく選択ができるようになってからかな、と。サテライトの方が近いし楽だからなんて理由で選んでほしくない。生産性向上のために自ら選ぶ理念が浸透してからの検討かと思っています。
②コアタイムを12~15時に短縮
西)今まで10時~15時だったコアタイムを12時~15時に短くしました。これにより、育児介護と仕事をうまく両立できるようになりますし、通勤ラッシュを避けられるメリットもあります。
このように今までと働き方が少し変わっていきますから、ガイドラインを設けることにしました。(下図参照)
マーブルワークスタイルのガイドライン
緊急事態宣言下を振り返って
御社で在宅勤務が決まったのは、やはり突然でしたか?
西)そうですね。要請とは言え半強制的でしたから、急きょ在宅勤務を決めました。ノートPCとiPhoneは元々支給されていたのを使うとして、それ以外に業務に必要なものはとにかく個人で買ってもらって。
でもゲームやアプリ制作にはノートPCだけじゃ厳しいですよね。
西)ええ。デザイナーやエンジニアは高性能PCが必要ですが、とても個人で買える値段じゃありません。だから、総務系の社員が出社して約100台を梱包して発送してくれました。
個人機材配送受付スポットを急ごしらえで設置。社内周知から最初の発送までわずか2日間で対応した。
コロナ禍の在宅勤務を支援、最大9万円を全社員に支給
在宅勤務中の手当は何かありましたか?
西)はい。まずは3月末に「環境構築支援費」。モニターや椅子、机を買うのに一人最大2万円の補助を在宅勤務が決まってすぐに支給しました。そのあと5、6月には「リモート環境維持のための手当」。光熱費やネット回線費用として一律1万円を支給しました。ちなみに定期代を中止した分を原資にあてています。
すぐに手当を支給してくれるのはありがたいですね。
西)あと、緊急事態宣言中は社員食堂やオフィス内コンビニが閉まってランチに困る社員が多かったんです。だから、出社している社員には、一律1,000円のランチサポート手当を支給して気兼ねなく出前などを頼めるようにしました。
6月には「新型コロナウイルスへの対応に関する特別賞与」として全社員に一律5万円をボーナスに上乗せして支給しました。先の見えないコロナ禍で頑張ってくれた社員をねぎらう感謝の気持ちと、自宅の就業環境を更に整えるのに使ってもらえればということから決めました。
小売業などで危険手当というのはたまに聞きますが、リモートワークの長期化を理由とした特別賞与はかなり珍しいんじゃないかと思います。
従業員への対応にかなりスピード感がありますね。
西)特に環境構築支援はスピードを重視しました。肩こりや腰痛などで健康を害してしまうといけないので、1~2日で決定、実行しました。普段から従業員とのコミュニケーションができてるからこそのスピード感だと思いますね。それに、コロナ対策委員会には執行役員も入っていたので素早い決定ができたのだと思います。常駐の保健師を含めたコロナ対策委員会がほぼ毎朝集まって、報道や感染者数とにらめっこしながら対策を練る日々でしたね。
最後に、今後正式に制度化予定のマーブルワークですが、今後の展望は?
西)開始から約1ヶ月が経ち、ちょうど今、全社員アンケートを取ってヒアリングをしている所です。部下は順調でも上司はそうじゃないかもしれませんし、ギャップも注視したいですね。人によって違いがあるはずなので、全員の声をすくえるようにしたいです。
ただ、アンケートは大事な指標ですが、コミュニケーションが会社の根幹であるのは変わりません。社員の声も聞きつつ、コミュニケーションの質を維持・向上に気を配って制度を確立したいと思います。
本日は貴重なお話をありがとうございました。
こちらこそありがとうございました。
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- どこよりも快適で働きやすい空間設計
今回協力して下さった企業様
株式会社ミクシィ
- 設立
- 1999年
- 本社所在地
- 東京都渋谷区渋谷2-24-12 渋谷スクランブルスクエア
- 事業内容
- スマホゲームを中心としたゲームの提供、プロスポーツチーム運営及び公営競技ビジネスの推進、インターネットを活用した人々の生活に密着したサービスの提供等
- 従業員数
- 1080名(連結・正社員のみ)(2020年6月末現在)
- Webサイト
- https://mixi.co.jp/