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株式会社ポーラ・オルビスホールディングスの働き方改革事例(前編)

“感受性のスイッチを全開にする”働き方改革って?

投稿日:2019-07-04  取材日:2019-02-26

株式会社ポーラ・オルビスホールディングスが取り組んだ事

  • 制度の活用率を上げるための工夫
  • グループ全体を巻き込んだ制度運用
  • 会社規模

    4,000人

  • 業種

    その他

  • 対象職種

    全社員

    企画・管理

化粧品を中心に、美と健康に寄与する事業を展開するポーラ・オルビスホールディングスでは、グループ全体が掲げる理念に則った働き方改革が進行中です。ダイバーシティや生産性の向上など、言葉だけ聞けばよくある取り組みですが、ポーラ・オルビスホールディングスらしいこだわりをプラスすることで、全社員が分け隔てなく使える制度の実現をめざしています。独創的なグループ理念やメッセージ性の高い企業テーマにも注目です。

改革のミッションは、グループ理念を体現すること

今回お話を伺ったみなさん。左から、ポーラ・オルビスホールディングスHR室の熊澤倫之様、岩井明子様、ポーラ人事戦略部ワーキングイノベーションチームの菅原悠様。「リモートワークスタイルは、まさにこんな感じです」とのこと。

改革のミッションは、グループ理念を体現すること

御社が働き方改革に取り組み始めた時期、きっかけを教えてください。

働き方を見直そうという話は昔からあったのですが、特に3年ほど前から盛り上がってきたように思います。やはり事業を行う上で働き方改革は必要だという声が社内で広まってきたんです。

実際には、どういった取り組みを?

弊社の場合、企業としてやらなければならないことを大きく3つ掲げております。1つ目が最も大きく、他の2つを内包するものなのですが、「弊社グループ理念の体現」です。弊社には「感受性のスイッチを全開にする」というグループ理念があり、ポーラ・オルビスホールディングス(以下、ホールディングス)も、ポーラも、その他グループ会社もみんなこの理念に則って行動しています。そこで、このグループ理念を体現する術をひとつ考えようということになりました。
2つ目が「ダイバーシティ」です。多くの会社で言われていますが、今後はさらにいろいろな認識や背景、価値観を持った人間が集まる必要があります。弊社でもダイバーシティを推進していく上での仕組みづくりが必要と考えました。
3つ目は「社員一人ひとりの生産性を上げていく」ことです。もちろん少子高齢化もありますが、できる限り一人ひとりが効率的に働いて、仕事も頑張りながらプライベートも楽しんでもらう形で生産性の向上を図りたかったんです。

感受性のスイッチを全開にするにはどうしたらいいか、ということが一つの焦点ですね。

はい。「感受性のスイッチを全開にする」という理念には、さまざまな解釈があると思うんです。たとえば日ごろの感受性を高めることであったり、お客さまの感受性を高めることであったり。では、働く社員の感受性を高めるにはどうしたらいいかと考えたとき、おそらく仕事だけしていたらダメでしょう。仕事もするし、家に帰ったらまったく別のことをするし、会社の人とも話せばまったく別の業種の人とも話すし、ときには美術館に行ったりして。「いかに効率的に働くか」にもつながりますけど、社員がそれぞれの感受性を高めるためにプライベートの時間を確保し、感受性を高める機会をいかに確保できるかが大事かなと思います。

すると、グループ理念そのものが働き方改革の軸になっているわけですか?

はい、グループ理念を体現するためにこの働き方改革を掲げているといえますね。ダイバーシティも推進し、生産性も向上させたい、何よりも我々のグループ理念を体現したいという気持ちが強かったです。また、ポーラのテーマのひとつになっているのが、「常に新しい価値を見出していくこと、生み出していくこと」。もっと効率的に働いて新しい価値を生み出そう、という意思が働き方改革の動機になっていると思います。

取り組み自体も、グループ全体のものとポーラさん個社としてのもの、両方あるのですか?

そうですね。ホールディングスとして働き方改革をやっていますが、ポーラ独自の施策も展開しているところです。そのあたりは後ほどお話しできればと思いますが。

では、3つの指針「グループ理念の体現」「ダイバーシティ」「生産性の向上」を打ち出したのはどのタイミングだったのでしょうか。

働き方改革が本格的に始まったときに、我々は何をしなければならないのかという議論になりました。特に会社として求めていることは何かと考えたときに、この3つが上がったんです。具体化してきたのは、働き方改革に着手したタイミングですね。

活用率を上げるための“こだわり”とは?

御社のホームページに、2018年3月にリモートワーク制度を導入とありますが、具体的にはどのような取り組みをされたんですか?

会社以外で仕事をすることを、当グループとしては初めて仕組み化したというものです。今日の我々のように出社して勤務することも当たり前ですが、例えばある日、「今日は自宅でパソコンを使って仕事します」「今日は外出先近くの図書館で仕事します」ということを可とした仕組みです。
我々なりにこだわったのは、まず社員の区分で制限をしていないところです。たとえば管理職だけというわけでもなく、正社員だけというわけでもなく。当然、会社から離れて仕事をすることになるので、自立して仕事ができることが前提になりますが、上司が許可すれば社員区分にとらわれず、契約社員や再雇用で勤務されている方も、みんなが活用できる仕組みにしたところがこだわりです。

自分を律して働くことができる社員であれば可ということですね。

そうですね。あと、「在宅勤務」と言っていないことにもこだわりがありまして。あくまで「リモートワーク」なので、どこで働いてもいいんです
ちなみにリモートワークというのはホールディングスの中での名称でして、ポーラですと「どこでもワーク」という名称で打ち出しています。
在宅に限定することもできたんですけど、人それぞれ働きやすい場所って違うと思ったので、そうしませんでした。たとえば自宅が落ち着かない人は近所のカフェに行ってもいいし、カフェが落ち着かない人は図書館に行ってもいいし。場合によっては外出先から会社に戻って来ずに、カフェにいてもいいですよ、と。あくまで在宅ではなくてリモートワークというところがポイントかなと思います。

ほかにもこだわりはありますか?

あとは、理由を制限していないところです。もちろん世の中にリモートワークはたくさんあると思うんですけど、中には育児や介護など、ある事由に限定してリモートワークを許可する会社さんもあるようです。弊社ではそういったことに限定せず、誰がどういう理由があっても、基本的には上長が認めればOKとしています。

事由を限定しない理由は何でしょうか。

みんなが使えないと本当に使いたい人まで使いにくくなってしまうと思ったので。それに、我々の目的とする業務の効率化やグループ理念の体現に関わってほしいのは、一部の人ではなくすべての社員なんです。だから、できる限り制限なく、社員みんなが使えるものを目指しました。
リモートワークについては、社員向けに説明会を行いました。そこでは、育児している方、介護している方だけでなく、理由がない方もぜひ制度をお使いくださいと話しました。往復の通勤時間がなくなった分、今までできなかったことや趣味に時間を費やす、行きたいところへ行く、そういったことを勧める仕組みであることをアピールしました。

社員のみなさんには、どの程度浸透していると感じますか?

ホールディングスの場合、社員の7割超がリモートワークの利用申請をしています。昨年もかなり使われていて、人によっては月に数日間も使っていたりするので、だいぶ浸透は進んできたかなと思います。

ホールディングスさんとポーラさん、その他グループ会社さんとの間で、運用の進め方はどのようになっているんですか?

ホールディングスがリモートワーク制度を始めたのが2018年の3月なのですが、その結果を見てからポーラが正式に導入した形です。まずはホールディングスで運用を始めてみて、そこで上がった課題を汲んだ形で社員数の多いポーラが導入をする。これは非常にいい流れだなと感じています。
ほかにもグループ会社がありまして、たとえば「THREE(スリー)」というブランドを展開するACRO(アクロ)では、ホールディングスの制度を少しアレンジした形で運用され始めていますし、敏感肌向けのブランド「DECENCIA(ディセンシア)」も、元々のものをベースに自社で制度を考えました。こうした仕組みを徐々にグループ内に広げられている状態です。もちろん、ホールディングス個社だけよくなっても我々の本意ではないので、最終的にはグループ全体が3要素(「ダイバーシティ」「生産性の向上」「グループ理念の体現」)を満たしてくれるのが理想です。

生産性の向上がなければリモートワークも意味がない

リモートワーク推進の前段階として、アンケートを取ったりなどはされたんでしょうか。

取りました。制度を始める前に、ホールディングス内で、ポーラともにトライアル運用を実施したのですが、その後、トライアルをした従業員本人だけでなく、その上司やトライアルをしていない周りのメンバーを含めてアンケートを取りました
結論から言うと、約9割の社員から「こういう働き方を入れていくべき」という極めてポジティブな回答を得ることができました

マネジメントの面では、どうやって部下を見てあげるかとか、新入社員をどうやって教育していくかが課題になると思いますが、そのあたりはどのように考えていらっしゃいますか?

マネジメントに影響があるかどうかは、アンケートである程度調査はしています。上司からは、一日いない部下との連絡手段はほしいがあとは問題ないとか、周囲の人からも特に問題ないという回答があり、そういった裏付けを持った状態で運用をGOさせています
ホールディングスの運用においては、やはり各マネージャーの判断という要素が大きくなってきますので、そこを会社としてどのように見て、場合によってはもう少し細かいルールづくりをしていくべきという継続的な課題はありますね。
また、3つの指針で挙げている「生産性の向上」という目的はぶれてはいけないと考えています。会社に来て、直接話し合うことも大事だと思っているので、100パーセント自宅のみの勤務というわけではなく、顔を合わせて意見交換とかディスカッションをすることで高めていければいいなと思っています。

フレックス制度に関してはいかがですか?

フレックスも導入しています。ホールディングスの本社である銀座ビルで勤務している人間は、ほとんどフレックスタイムで勤務しています。もちろんポーラの本社である五反田もそうですし、グループにもある程度浸透しています。

フレックス勤務といっても、コアタイムの設定の有無とかあると思うんですが、どういった形で運用されていますか?

基本的にコアタイムありですね。部門ごとに異なるコアタイムで運用をしていますが、近年コアタイムはかなり短くはなってきています。弊社ではよく使われています。
中には朝早く来て16時に帰る人もいます。そこがかなり浸透してきたなと思うところですよね。今、徐々にコアタイムを短くしています。ホールディングスの人事、ポーラの人事も短くなっていて、一番短くてコアタイム13時~14時ですね(笑)

え、1時間ですか(笑)!?

ええ(笑)1時間だけ出社するという社員はあまりいませんが、人事自らが自律した勤務のさきがけになれればと思っています。

3つの指針による働き方改革のこれから

最後に、ポーラ・オルビスホールディングスとしての働き方改革の取り組みで行っていることはありますか。

昨年、グループ全社を巻き込んで朝活推進をスタートしました。どこまでやるかは各社次第ですが、ホールディングスではテスト期間中は朝8時半までに来た社員には朝食を用意しました。
フレックスタイムは浸透しているんですが、より積極的に使ってみたらどうだろうということで、朝活だけでなく「時にはフレックスを活用して、15時に帰ってください」という活動もやってみたりしています。社員からの反響がなかなかよくて、「早く帰ったのでジムに行ってきました」「習い事に行きました」「自己研鑽のための資格の勉強をしました」なんていう声も聞かれます。我々が働き方改革を通じて求めていたことをやってくれているようなので、できれば今後も続けたいと思っています。

いいですよね、朝早くに来て、逆に夜の時間が自由になるというのは。 最後に、今後取り組んでいきたいこと、今までの活動を受けて今後やっていきたいことはありますか?

ある程度できてきた仕組みの浸透は引き続きやりたいですね。制度自体は浸透が始まっているものの、じゃあ完璧かというと決してそうではありません。たとえば業務の種類によってはリモートワークが実施しにくい、などです。
そういった要因をつぶしていくことや、まだ雰囲気的にやりにくいと感じる人が残っていれば、社員がより利用しやすい働き方となるような風土、雰囲気づくりが必要だと思っています。
今回の話に出た施策に限らず、「グループ理念の体現」「ダイバーシティ」「生産性の向上」につながる運動、施策、制度はこれからも検討、導入していくつもりです。

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今回協力して下さった企業様

株式会社ポーラ・オルビスホールディングス

設立
2006年
本社所在地
東京都中央区銀座
事業内容
国内事業:トータルビューティ事業、百貨店事業、BtoB事業)
海外事業:化粧品・健康食品の企画・販売、ボディファッション、アパレルの企画・販売など
従業員数
連結4,181名、単体127名(2018年12月31日現在)
Webサイト
https://www.po-holdings.co.jp/index.html

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