CLOSE

コニカミノルタジャパン株式会社の働き方改革事例(前編)

本社移転から始まった、働き方変革プロジェクトの歩み

投稿日:2019-05-23  取材日:2019-03-19

コニカミノルタジャパン株式会社が取り組んだ事

  • トップリーディングとボトムアップ、双方向からのアプローチ
  • 働き方改革を自社事業の提案力につなげる
  • 会社規模

    3,500人

  • 業種

    専門・技術サービス業

  • 対象職種

    全社員

昨今、「働き方」への関心が日々高まっていますが、「働き方改革」が叫ばれる以前から「ワークスタイルデザインカンパニー」のビジョンを掲げ、ワークスタイルや働く環境についてのソリューションを提案し続けている企業があります。それは、複合機を始めとした情報機器の販売・マーケティングなどを行うコニカミノルタジャパン。
今回は、働き方改革の黎明期(あるいは、それ以前)から、ワークスタイルの変革を提案し続けてきた同社の取り組みについて、「マーケティング本部 オフィス事業統括部 ITS事業企画部2グループ」リーダー・牧野陽一様、「取締役 経営管理本部」本部長・鈴田透様にお話を伺いました。

本社移転を好機と見て、働き方改革を本格着手

今回お話を伺った鈴田透様と牧野陽一様(コニカミノルタジャパン・ショールームのエントランスにて)。

本社移転を好機と見て、働き方改革を本格着手

早速ですが、働き方改革に取り組み始めたきっかけについて教えていただけますか?

直接のきっかけは、本社移転です。ですが、もともと当社は、「ワークスタイルデザインカンパニー」というビジョンを掲げており、十数年前から、今で言う「働き方改革」に通じるような取り組みを実践していこうという想いは抱いておりました。

ワークスタイルデザイン、ですか。

はい。当社は、複合機の営業やサービスなどで様々な企業様のオフィスにお邪魔していますので、「オフィスや働き方をデザインする」「モノ売りからコト売りへ」という考え方を必然的に抱きながら仕事をしていくことになります。ですが、そのような想いはありながらも、自社オフィスでは旧態依然とした働き方を切り替えるきっかけが長らく掴めないでいました。

なるほど。

そんな中、2014年に本社を移転させることが決まったんです。もともと日本橋に本社があったのですが、ワンフロアの大きさが十分でなく、執務スペースが複数階にまたがってしまっていたためコミュニケーションが取りづらいという課題もありました。それならば、この移転を機に、もっとコミュニケーションを活性化でき、なおかつコストダウンできるようなメガフロア物件を探そうじゃないか、と。そこで、2013年くらいから移転先の選定に着手するとともに、ただ移転するだけでなく、同時に「働き方改革」にも挑戦していこう、ということになりました。

その決定は…?

当時の社長が下しました。「今後、複合機ビジネスが成熟していく中で、ハードだけでなく、ソフト面の充実も必ず求められるようになるそして、それに伴って、これから働き方改革というものがどんどんメジャーになっていくだろう」ということで。
そうして、2014年には「本社移転」と「働き方改革」への取り組みが、いよいよ本格化していきました

お客様に何を提案していけるか

移転を機に、「ワークスタイルデザインカンパニー」というビジョンを引き継ぐかたちで「働き方改革」に取り組み始めたわけですが、当社の事業展開に関わることとして、ここでは大きく分けて2つの側面に目を向けて目標を定めました。
ひとつは、内向的な側面。これは、「当社自身の生産性向上」を目指すということ。
そして、もうひとつは、外向的な側面。当社は販売会社ですので、オフィスで働いていらっしゃるお客様に提案を行なっていく立場にあるわけです。ですので、「オフィスにおける働き方の提案力向上」を図っていくということです。

なるほど。でも、かなり大胆な転換ですよね。働き方改革の推進というものは、ペー パーレス化の取り組みなどは特に複合機を扱われている御社のビジネスを伸ばすことには 必ずしも繋がらないように思うのですが。そういった中で、働き方改革にドライブしてい かれたのは、どうしてでしょうか?

ひとつには、「トップの強い想い」がありました。そして、もうひとつには、「提案の差別化への必要性」が高まっていたからです。

提案の差別化、ですか?

はい。当社のビジネスは、「お客様に何を提案していくのか」というのがポイントです。今まででしたら、オフィスで働いている人たちに、複合機のスペックとお値段の提示・提案をしていればよかったのですが、複合機事業が成熟していく中で、モノ(商品)というのがどんどんコモディティ化(※)していき、結果的に、どのメーカーの商品も同じようなスペックや価格帯に集約されてきています。

コモディティ(英:commodity)化とは:市場に流通している商品がメーカー(製造会社や販売会社など)ごとの個性を喪失して同質化すること。消費者にとっても、どこのメーカーが提供している商品を購入しても大差のない状態。

このようにハード面での差別化が難しくなっていく中、これからは「ソフト面での提案の時代」になっていくはずです。現に、「ハードだけの提案から、ソリューションを含めた提案へ」と叫ばれて久しいですよね。

ITソリューションの提案などは、その代表格でしょうか?

そうですね。でも、それもすでに多くの他社さんがやっていることですので、当社が同じことをやっても効果は限定的なものになると思います。
当社の強みは、やはり「お客様のオフィス現場に深く入り込めている」ということです。ですので、その強みを生かして、「当社自身が働き方を変革して、その経験に基づいてオフィスや働き方の提案を行なっていき、そこから独自のソリューション創出・提案につなげていく」、と。それこそが大事なのでは、と考えました。

「自分たちでやる」を旨とする移転プロジェクト

機能的にデザインされたライブショールームは、訪れる人に新しい働き方を体感させてくれる。

「自分たちでやる」を旨とする移転プロジェクト

「自身が働き方を変革して…」ということでしたが、どのあたりのところから手をつ けていかれたんですか?

差し迫ったこととして「本社移転」がありましたので、まずは「移転プロジェクト」を進めていきました。移転を決定して実際に引っ越すまで、わずか半年しかなかったのですが、そんな中でも、移転後のオフィスの設計やファシリティデザイン、ICT環境の構築などは、全て当社自ら実施していきました

え!? それはすごいですね。

せっかくの「移転」という機会ですから、ベンダーさんに任せてしまうのではなく、自社実践しようと決めました。自分たちでやろう、と。

自分たちで知恵と労力を傾けていくことで、ノウハウを蓄積させていこうということですね。

はい、そうですね。そして、そのように「移転プロジェクト」を走らせていく中で、次に生じてきたのが、「新しくなったオフィスで、私たちはどういう働き方をしていくべきか?」という問いでした。

働き方変革! まずは課題抽出と整理から

プロジェクトチームでは、働き方に関するディスカッションを重ねていく。

働き方変革! まずは課題抽出と整理から

ということで、オフィス移転までの時間が限られている中、オフィス運用の仕組みや、ICTの活用方法等を、同時並行で考えていきました。それが「働き方変革プロジェクト」です。
ここでは、各部署から若手・中堅どころを40〜50人くらい集めてプロジェクトチームを作り、「どんな働き方をデザインしていこうか」とセッションを重ねていきます。そして、抽出された意見を、オフィス・ファシリティ設計に反映させていきました。

なるほど。若手・中堅クラスにも、ハードのデザインやその活用方法について考える 機会を設けた、ということですね。

はい。「移転に際して間仕切りをなくすように」というような、社長の方針は大前提にしつつも、その中で、「各部署ではどんな働き方をすべきか」「その働き方に見合うレイアウトはどのようなものか」などについては、そのプロジェクトメンバーが主体的に考えていきました。
この「働き方変革プロジェクトワークショップ」では、まずアイディアをたくさん出してもらいました(400施策ほど)。そして、それを350程度に整理し、さらに目標シーン(具体的なシーンのイメージ)でグルーピングして25に絞り、最終的に戦略課題として7つに集約させていきました。
そうして抽出された7つの戦略課題は、次のようなものです。

(1)部門を超えた自由闊達なコミュニケーション
(2)チームプレーを重視した働き方
(3)俊敏で能動的な行動様式
(4)効率性と創造性の高い働き方
(5)情報・知識の組織知化
(6)いつもお客様の視点で考える
(7)新本社を商談の武器とする行動様式


こうして、新しいオフィスでの働き方のルールを定めていったわけです。まずは、そこからでしたね。

トップリーディングとボトムアップ

働き方のアイディアをグルーピングし、ありたい姿や戦略課題を導出、共有化。

トップリーディングとボトムアップ

そのようにグルーピングされた7つの戦略課題について、実際の実行部隊というとこ ろで言うと、おそらく総務、人事、システム部門などを絡めながら、ということになると 思うのですが、そのあたりの意思決定のプロセスはどのような?

はい。まずは4〜50名からなるプロジェクトチームを、7〜8名ごとのグループに分けました。例えば、「ショールーム活性化プロジェクト」や「会議円滑化プロジェクト」など、課題ごとにプロジェクトグループを作っていきました。これらは、会社の組織や部署とは独立した、社長直轄の横断型プロジェクトグループです。
当然、それらプロジェクトグループの存在だけでは、会社全体に活動を広げていくには限界があるので、それぞれの部長・課長にも協力してもらいながら進めていきました。
そして、トップにも常日頃の発信が求められます。働き方改革は、トップ層が自ら旗を振らなければ、大体においてうまくいかないのです

トップ層の継続的なメッセージ発信は、本当に大切なことですね。

はい。そういったトップメッセージを受けて、事業部長クラスは現場に則した「働き方改革宣言」を行なっていきます。そして、各現場では、“現場リーダー×トップ層”というかたちで働き方改革推進の環境と機運を育みながら、改革に志のある人材をプロジェクトに参画させていきます。
そのように、「トップダウン(自らを改革しながら部下を導いていく=トップリーディング)」と「ボトムアップ」という、両方のベクトルから生じる“推進力”をしっかりと組み合わせていきます

トップリーディングとボトムアップのイメージ。双方向にベクトルが伸びている。

この「トップ」と「ボトム」双方からのアプローチが大切だと思われた理由というのは?

世の中に認知されてまだ日の浅い「働き方改革」ですので、そういった新しい事柄に向き合うなら、若い人の柔軟な発想も取り入れるべきだと考えました。そして、「柔軟で創造力のあるボトム側(若年層)」と「会社組織に責任を持つトップ側(社長など経営層)」にブリッジをかけることで、バランスを取っていこう、と。ただ、それだけだと、中間層が抜け落ちてしまうので、部長クラスに「推進リーダー」という役を担ってもらいました。

会社全体に関わる「働き方改革」である以上、全社員に当事者意識をもってもらいたい、ということですね。

はい、そうですね。世の中的にも働き方改革が年々広がりつつあるので、その機運も随分と追い風になったという気がしていますね。

現場のニーズに合わせて、フリーアドレスをブラッシュアップ

移転後のオフィスについて、集約化し間仕切りをなくした以外にも、何か工夫された点はありましたか?

まず大きなところで言うと、「フリーアドレス化」ですね。移転前のオフィスでも一部フリーアドレスを採用していた部署もあったのですが、うまくいきませんでした。その時の失敗からフリーアドレスにアレルギーを持っている人も少なからずいましたが、せっかくの移転の機会なので、コミュニケーションとコラボレーションを創出する場のデザインに挑戦しました。今は、以前の失敗体験を活かして、フリーアドレスもうまく機能させられているかなと思っています

以前の失敗の要因は何だったのでしょうか?

ずばり「袖引き出しがあった」ということですね。

なるほど。名目上はフリーアドレスだけど、特定個人の荷物が収納できてしまう引き出しがデスクについていたんですね。

はい。それでは基地化しちゃいますよね。結果、あまり人が動かない状況が生じてしまいました。当時も、部署ごとに、固定式・可動式のデスクを選ぶなどして、様々な工夫を凝らしてはいたんですが…。
そこで、移転後は、袖引き出し付きのデスクを全部なくして、収納量をぐっと絞った個人ロッカーを振り分けていきました。通信環境も有線をやめて無線にしたり、会議室にすべてモニターを置いたり。ファミレス席多目的スペースなども設置していきました。

新しいオフィスのレイアウト。役職や部署を超えたコラボレーションを創発させる仕組みに満ちています。

これは、現在で言うところの「ABW(※)」を意識して組み立てていかれたのですか?

ABW(Activity Based Working)とは:アクティビティ・ベースド・ワーキング。会社によって定められたオフィス・職場に限らず、ワーカーが自由に働く場所を選択することによって、その一人ひとりがよりクリエイティブな成果を発揮していけるよう促していこうという仕組み。

そうですね。当社には、レイアウト設計を専門にする者も在籍しており、先端の働き方を実現するオフィス事例も集めています。そうしてオフィスにおけるファシリティデザインが組み立てられていく一方で、現場の分科会(プロジェクト)からは、実際のオフィスシーンで生じるニーズに即した課題解決策が挙げられます

具体的に言うと、どのような?

例えば、「ちょっと5分いい?」というシーン。今までは、ライトな議題でもわざわざ会議室で打ち合わせをしていたので、会議室が予約で常に埋まっていました。そこで、数人でモバイル端末を持ち寄って、ぱっと短時間打ち合わせができるコーナーがあればいいよね、と。

なるほど。

このように、「オフィス研究の結果としての専門的なオフィス設計」と「若手が現場から掴んだ生のニーズ」をミックスして、移転後のオフィスデザインに生かしていきました

どこでも働ける環境を整備

この移転のタイミングで、モバイル端末の充実化なども同時に進めていかれたんでしょうか?

一気にはやりませんでしたが、徐々にですね。今までは、オフィス内、固定席、デスクトップ、という環境の中で業務が行われることが普通だったのですが、そこをなんとか改められないかなということで。そうして、先日(2019年3月当時)、ようやく90%以上の社員にモバイルPCを配布し終えました

テレワーク環境を着実に整えてこられたんですね。ちなみに、リモートワークを行う場所の制限などは?

特に制限は設けていません。インフラは整備されていますので、あとは、本人のセキュリティ意識に委ねているというところです。SSL-VPN(※)によってセキュリティ環境を整えてもいますし。ただ、物理的にカフェなどで横から覗かれるのが不安という声も少なくなかったので、プライバシースクリーン搭載パソコンの導入を開始したところです。これは、特定キーで簡単にプライバシースクリーンをON・OFFできるといったものです。

※SSL-VPNとは:暗号化にSSL(Secure Socket Layer=インターネット上でデータを暗号化して送受信するひとつの仕組み)技術を使用したリモートアクセスVPN(Virtual Private Network=仮想専用線)のこと。

では、リモートワークの日数の制限については?

1 週間の稼動の内 1 日以上の日数、会社に出勤することを原則としています。

リモートワーク時のコミュニケーションについては?

基本的にはメールやチャットを活用しています。Outlookの予定表を活用して、全従業員はあらかじめ個々のスケジュールを記入していますので、テレワーク実施日も一覧的に可視化できるようになっています。
中でも「Skype for Business」は良く活用しています。社外で作業する時に限らず、仕事をする際はSkype for Businessを立ち上げています。そうすれば、プレゼンス(在席情報)によって、上長が正しく部下の様子を把握できますので。会議もSkype for Businessで行うことが多いですね。

「どこでも働ける環境づくり」を着々と進めておられるんですね。

この事例と同じシリーズの事例

今回協力して下さった企業様

コニカミノルタジャパン株式会社

設立
1947年
本社所在地
東京都港区芝浦
事業内容
複合機(MFP)・プリンター、印刷用機器、ヘルスケア用機器、産業用計測機器などの販売、並びにそれらの関連消耗品、ソリューション・サービスなど。 
新規注力事業の強化・拡充のための開発、企画、マーケティングなど。
従業員数
3,526名(2019年4月現在)
Webサイト
https://www.konicaminolta.jp/business/index.html

SEARCH

RECOMMEND

働き方改革の事例一覧に戻る