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エムステージの働き方改革事例

産業医と連携し、長く働きつづけられる健康経営を実現

投稿日:2019-03-28  最終更新日:2019-03-28  取材日:2019-03-11

株式会社エムステージが取り組んだ事

  • 産業医とタッグを組み、長く健康に働ける職場・制度づくりを実践
  • ライフステージに応じた働き方を自分で選べる“3つの総合職制度”
  • 社員がハイパフォーマンスを発揮できる快適で上質なオフィス
  • 会社規模

    100人

  • 業種

    サービス業

  • 対象職種

    全社員

医師の転職支援などを手掛ける株式会社エムステージでは、健康増進に関わる企業として「健康に長く働き続けられる職場づくりのロールモデル」となるべく、働き方改革に取り組んでいます。今回は、同社広報の関矢瑞季様にハード面とソフト面、両輪で進めてきた様々な施策についてお話を伺いました。

すべては、持続可能な医療の未来をつくるために

最初に御社の業務内容から教えていただけますか。

当社は医師のキャリア支援を主力事業として2003年に創業しました。特に、非常勤医師のマッチングサービスは日本初の医師アルバイト専門サイトとして話題になりました。今、急成長事業として注力しているのが産業医サポートサービスで、当社のもうひとつの柱になりつつあります。

産業医サポートサービスとは。

「労働安全衛生法」では、労働者の健康管理のために医師の専門知識が必要だとして、従業員数50人以上の事業所で産業医の選任が義務づけられています
最近は働き方改革の追い風もあって、従業員の働き方を気遣う企業からの問合せも増加していますが、企業側も産業医を選任するにあたって不慣れなケースが多いので、どうやって取り組むのか、業務管理や運用のアドバイスまで含めて産業医を活用した健康経営のサポートを行っています。

どうしてこのような事業を始めようと思ったんですか。

社長の杉田が医療コンサルティング会社に勤務する中で、無理な働き方で疲弊していく医師や旧態依然とした医療の職場環境に危機意識を感じたそうです。そこから、医師の勤務スタイルを柔軟にすることで医療業界の働き方を改善していけるんじゃないか、と思い起業に至ったわけです。

そのころの想いが、まさに今、事業として実現できているんですね。

そうですね。医師を助けたい想いと同時に、医師が活躍できる環境をつくることが日本の医療を持続可能にすることに繋がるはずだと考えています。
医療崩壊、という言葉が囁かれていますよね。このまま医師が疲弊する一方で国の医療費が増大していけば、20~30年先に今と同じ安全な医療を一般市民が受けられない可能性が出てきています。
それを阻止するための事業のひとつが医師の働き方改革だったり、労働者が健康で働き続けるための産業医サポートサービスだったりするわけで、当社では両方のミッションを掲げているんです。

お話を伺った広報 関矢瑞季様

自分たちが健康経営のロールモデルになろう

今は全国11拠点に支社を展開していますね。

社員は全部で110名いて、そのうち半数が東京本社に在席しています。

東京本社は社員数に対して広々とした感じがありますね。

ストレス軽減のためにも一人あたりの専有面積を広くとるように設定して、今は50名に対して約130坪賃貸しています。

働き方改革を始めたきっかけは何だったのでしょう。

強く意識しはじめたのは、産業医サポート事業がスタートした2016年頃です。顧客企業に「健康的に働くことが労働者のため、ひいては生産性向上と会社のためにもなります」と言い続けている当社自身がロールモデルにならないといけない、と思ったからです。

特に注力している分野はありますか。

全般的に進めていますが、特徴的なのは3つでしょうか。
 ①産業医の活用…法制化前から産業医を選任・活用をスタート
 ②オフィス環境…全拠点すべてのオフィスを快適かつ働きやすく
 ③福利厚生…健康経営を含め手厚い人事制度を整備

①の“産業医の活用”というと具体的にどのような取組でしょうか。

2018年4月から産業医の先生とタッグを組んで、自社の健康経営に取り組みはじめました
社員の健康管理を効果的に行うためには医学的知見が必要ですし、社員一人一人が「健康に働く事が生産性向上につながるんだ」と意識を持ってもらうためです。
毎月、産業医の先生が本社にいらっしゃって、衛生委員会に参加したりオフィス内を巡視したり、他にも過重労働がないか等の就労チェック、必要に応じて社員の面接指導、衛生講話などをしていただいています。

衛生講話とはなんですか。

時季に応じた健康に関する講義のようなもので、最近では「インフルエンザが流行しているからこういうことに気を付けて」という内容のお話をしていただきました。出席できるのは一部の社員だけなので、出席できない社員も健康知識を蓄積できるように、講話の内容をクイズや動画にして配信もしています。

産業医を選任しても形骸化されるケースが多いなか、ここまで力を入れるのは凄いですね。

本業が忙しいのにここまでパワーを掛けることに対して、もしかしたら是非があるのかもしれませんが、産業保健サービスを手掛ける私たち自身がやることに意味があると信じて続けています。
それに、「産業医訪問はあるけれど、衛生委員会って何したらいいの?」という声も顧客からは多いので、社内資料をアレンジしてお渡しするなど、サービスにも活かせています。

同社の産業医サポートサービスのHP(https://sangyoui-navi.jp/)。法律で定められている産業医制度だが、厚生労働省の平成28年労働安全衛生調査によれば約2割の事業所では産業医の訪問が一度もない“名ばかり産業医”が常態化している。

能動的に考え動くことが求められるオフィス環境

オフィス環境で重視しているポイントは。

一点目は、来社した方に信頼感を与えられるような見た目です。創業当時は他社のオフィスを間借りしていたのですが、そのときに「医師や病院の方が安心して当社とお付き合いしていただくためにはオフィスの見た目も大事だ」と社長が強く感じたからです。
二点目は、ABW(=Activity Based Working)です。「自分で考えて動く」をキーワードとして、自分が今からどの仕事をするか能動的に把握したうえで、一番生産性高く働ける場所を自分で選ぶスタイルを導入しています。

たしかに雰囲気の違うエリアがいろいろありますね。

移転してきた2013年からマイナーチェンジを繰り返して今のかたちに落ち着きました。
いくつかご紹介しますと、
執務エリアに隣接するフリーワークエリアは簡単な打ち合わせだとここでやることが多いですね。

畳エリアは、企画出しなど考え事をしたいときや、執筆作業など集中したいシーンでよく使われており、私も愛用しています。

THE PITは給湯室的なたまり場のようなエリアで、コーヒーメーカーや冷蔵庫を置いています。

リフレッシュエリアはランチタイムやざっくばらんに大人数でアイデア出しをする時にも使いますが、夕方になると一息つきたい人が増えるのか自然と人が集まって、社員人気も高いエリアです。

特徴的な見た目の什器がありますね。

スイスの家具メーカーUSM社の“モジュール家具”を採用していて、チューブとボールをつないで形を自由に組み替えられるのが特長です。社員=プロフェッショナルが働く場にふさわしい本物志向の家具であり、当社のコンセプトである「持続可能」と一致する、流行りすたりに影響されず長く使い続けられるものとしてセレクトしました。

USM社(https://www.usm-shop.jp/)のキャビネット。時代に左右されないデザインと機能性が評価されたUSM社のモジュラー家具はMoMA(ニューヨーク近代美術館)の永久コレクションにも加えられ、世界中で人気が高い。

執務エリアはフリーアドレスになっているんですね。

「人の動きをもっと作り、面積を有効に使おう」と考えて2017年に固定席からフリーアドレスにしました。
社員が増えてきたうえに、医師紹介事業ひとつとっても医師の勤務スタイルや地域によって細かく担当者が分かれていますから、うまく流動することで偶発的なコミュニケーションが生まれれば、と考えています。

フリーアドレスエリア

毎日どこに座ってもOKですか。

総務部とクライアントサポート担当者は電話用インカムやデスクトップPCがある関係で固定席になっていますが、それ以外の社員はフリーアドレスなので毎日違う席に座ります。
ときどき席替えもしますが、6人で1つの島が8つあって「今日は総務絡みの仕事が多いから総務の島に座ろう」とか「新事業が始まる島があるから、そこに座って情報を集めよう」とか業務によって近づく人が変えられるのが良いですね。

実際にコミュニケーションは増えましたか。

そうですね。座る場所でもそうですし、エリア移動することで違う人とも話す機会が増えました。
1日の中で何人もの人と顔を合わせて仕事できるのが面白いと思っています。

フリーアドレスにしても、いつの間にか席が固定化してしまうケースも多いようですが。

前日と同じ席に座らないルールはありますが、固定化してきた雰囲気を感じたら総務からアラートを出すなど、気づきを与えてやっていくしかないですね。ただ、能動的に動ける人ほど日によって座席を変えている印象はあります。

対面のやり取りでスピーディな連携

オフィスに出社して働くのか、逆にテレワークを推進するのか、働く場所についてどちらに軸足を置いていますか。

もともと社員同士が向き合ってチームで仕事する文化があります。
医師の紹介業は”求職者(=医師)”と”求人者(=病院)”、それぞれに別の担当者がいるので、スピード感を持って連携するには直接やり取りするのが一番だからです。とはいえ外回りも多いので2018年11月頃からは外部のシェアオフィスを使い始めました。ただし、一日中ずっとそこで仕事するわけではなくて、外出の多い社員が移動のスキマ時間を有効活用する目的に限って使うように、一応制限は設けています。

外出中でも仕事ができる環境になったわけですね。テレワークする上でセキュリティに関するルールはありますか。

ISMS(Information Security Management System=情報セキュリティマネジメントシステム)の取得をしているので厳しくしています。例えば、
・むやみに紙に出力しない
・PCを持って直帰する場合は寄り道しない
・PCを網棚に置かない
・覗き見防止フィルターの貼り付け
・半年ごとのパスワード変更  など、こまごまとしたルールはあります。

あとは、離れて仕事するとメンバーのマネジメントに悩む管理職の方も多いですが、御社ではどうですか。

テレワークの機会自体が少ないので課題は感じていません。シェアオフィスも利用者を限定していますし、在宅勤務も相談があれば臨機応変に対応しますが制度としては導入していませんから。ただ、オフィス以外で働く時には、居場所の周知・共有だけはお願いしています。

残業と転勤の可否を選べる“3つの総合職制度”

働く時間に関する制度があれば教えてください。

9~18時を定時にしています。21時~翌朝8時の間は勤務禁止にしていますが、どうしてもその時間しか医師と面会ができない場合もあるので、インターバル勤務で出社時間を遅らせて過重労働を防いでいます。育児などを理由に時短勤務する社員も5名ほどいます。

女性比率6割と高いのに、時短勤務者がたった5名だけなのは意外です。

“選べる総合職”制度のおかげかもしれません。当社は全員総合職ですが、残業の有無と転勤の可否の希望をあらかじめ申請して、自分のライフスタイルにマッチした勤務スタイルを選べるんです。
 ①総合職…残業あり、転勤あり
 ②エリア総合職…残業あり、転勤なし。※ただしマネージャー職には就けない。
 ③限定総合職…残業なし、転勤なし。※基本残業禁止、18時退社。

半年に一回、切り替えができますからライフステージの変化に合わせて働き方も柔軟に変えられます。家庭の事情で転勤や残業が難しい社員もいる一方で、自分に負荷を課してスキルアップしたい社員もいます。お子さんがまだ小さくて残業ができない社員は③を選ぶパターンが多いです。

初めて聞きました。ユニークな制度ですね。

去年導入したばかりなので、今後変化していく可能性もありますけどね。社員の平均年齢が35歳、かつ女性比率が6割ですから、ちょうどライフステージの過渡期にいる社員が多いんです。そういう社員にも働き続けてほしい希望が会社側としてもありますから、常に制度のことは考えながらやっています。

これ以外に柔軟な働き方を支援する制度はありますか。

ユニークなものだと、5つの健康指標条件(①有休消化率50%②残業時間月45時間未満③禁煙④無遅刻・無欠勤⑤BMIが標準値)をクリアすると5万円が支給される“健康増進達成手当”があります。
他にも、副業制度や託児費補助(月額1万円)、引越し準備金支給(10万円)、近距離手当(月額2~3万円)、禁煙支援(2万円)、レクリエーション補助etc…どんな制度があれば健康で働き続けられるのか、常に考えています。

毎月の1on1ミーティングで改善提案が更にしやすく

先進的でユニークな人事制度がたくさん立ち上がっていますね。

“快適なオフィス環境”や”健康的な働き方”に対する社長の想いが強いので「こんな事どうだろう」と、トップダウン的な雰囲気ではなくあくまでフランクに話がくるんですよね。同時に現場からの声も上がってくるので、双方向からアイデアがどんどん出るイメージですね。特に、産業保健事業チームからは「他社でこういう良い事例があるから、うちでもやってみない?」と案が出されることも多いですね。
更に、2018年からは毎月上長との1on1ミーティングが制度化されて、四半期ごとの目標に対する進捗をすり合わせるのと同時に、「こういう制度があったらいいな」という話も出しやすくなりました。

風通しの良い職場、というのがポイントのような気がしますね。

職場の風通しは良いと思いますね。いつでも話せる雰囲気がありますから。社長も意識的にオフィスの中を歩き回る時間を取っていますし、つい先週も大阪支社に行っていました。会社の規模的にも、まだ社長の目が届く規模だからかもしれませんが。
それに、年に一度は全ての拠点から社員が集まって全社会議をしています。年間の活動報告や懇親会、表彰式がメインの内容ですが、「社員数がどんなに増えても全社会議は続ける」と社長も言っていますね。

先ほど支社の話が出ましたが、「本社の働き方改革に支社は置いてきぼり…」と拠点間の不公平を感じるケースもあるようです。

「支社ごとに不公平があってはいけない」との意向が社長にありますから、制度はもちろん、地方支社の内装や什器も本社と同じグレードに統一しています。

最後に、今後の課題や展望があれば教えてください。

まずは、始めたばかりの産業保健関係を強化したいですね。「もっとうまい活用法や運用の仕方ができるのでは」と思っています。
あとは、社内でも職種によっては過重労働気味の社員もいるので改善を進めたいです。平均残業時間は21時間なので他社に比べれば良い方ですが、医師の人材紹介という業種柄、夜遅くでないとアポが取れなかったりします。インターバル勤務や有給消化ができているか総務から声掛けは始めていますが、業務の効率化なり人員補強をして過重労働の緩和は早めに解決したいですね。

本日は貴重なお話をありがとうございました。

こちらこそありがとうございました。

今回協力して下さった企業様

株式会社エムステージ

設立
2003年5月9日
本社所在地
東京都品川区大崎2-1-1 ThinkPark Tower
事業内容
医師人材総合サービス事業、医療機関の経営支援事業、企業向け産業医サポート事業等
従業員数
110名
Webサイト
https://www.mstage-corp.jp/

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