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ソウ・エクスペリエンスの働き方改革事例

子連れOK!相性が合う人と長く働くために

投稿日:2018-12-07  最終更新日:2018-12-07  取材日:2018-11-05

ソウ・エクスペリエンス株式会社が取り組んだ事

  • まずは始めてみる、という考え方
  • 社員が長く働けるように働き方を制限しない
  • 会社規模

    100人

  • 業種

    その他

  • 対象職種

    全社員

「みて、これ~!」あどけない女の子の声が、大人たちの会話に混じって聞こえる。
ここはソウ・エクスペリエンス株式会社のオフィス。同社が商品として扱うのは、モノではなく「体験」を
ギフトとして贈れるサービスで、創業13年目にして累計体験者数が40万人を突破するほどの人気ぶりだ。
そのユニークな事業内容と共にたびたび注目されるのが、7年前から始まった子連れ出勤。
「子連れ大歓迎!」なイメージをしていたのだが、意外にも「そういうわけじゃないです」と西村社長。
では、なぜ生産性が下がるリスクさえある子連れ出勤を続けてきたのか?まずはYESから始めてみる、という社長の考え方が社員達の働き方にどのように反映されているのか、お話を伺った。

ソウ・エクスペリエンス株式会社 西村琢社長。7歳と4歳のお子さんを持つ父親でもある。社名の Sowは「種をまく」、Experienceは「経験、体験」を意味し、「多くの人に新しい経験・体験の種まきをする」きっかけになりたいという思いが込められている。

ある日、社長が赤ちゃんを連れてきた

子連れ出勤を始めたきっかけから教えてください。

きっかけは6~7年前、僕の長男が0~1歳くらいの頃でした。
我が家は共働きなので当時は保育ママ(※)に預けていましたが、熱を出したら預けられないし、
祖父母も無理、子守りを代わってくれる人がいない、という時ありますよね。
その時に休むという選択はしたくなくて、子どもを連れてきてたんです。
子連れという選択肢があると、色々な事を諦めずに済む日が増えます。
例えば、「午前中は父親が会社に連れて行って、どこかのタイミングで母親にパスする」とか。

※保育ママ…保護者が病気等で子どもの面倒を見られない場合や保育園に入れなかった場合に、保育ママの自宅内で子どもを預かってくれる制度。

社長自身がきっかけだったんですね。

自分は大学卒業1年後くらいに起業していて、社員の中には学生時代からの仲間も多いんです。
当時は会社も小さくて社員数も10~15人だったし自分で立ち上げた会社という事もあって、
子どもを連れてくる事に違和感がなかった。
だから、普通の会社に子どもを連れてくる感覚とは違うものがあるのかもしれませんが。

そこから子どもを連れてくる社員が徐々に増えていったんですね。

オフィスに子どもがいるのが日常的な風景として馴染んできた頃に
産休中の社員の中に「やっぱり復職したい」という人も出てきて、産後3か月くらいに
「じゃあ、働いてみる?」となって、赤ちゃんを連れての子連れ出勤が僕以外にも始まりました。
やってみると、意外と普通に仕事ができて、大丈夫だね、皆も問題ないよね、となって。
1歳未満の赤ちゃんって、おむつ替えや授乳を除けば、意外と手間がかからないんです。
泣く時は泣くけどそれ以外は基本的に寝ているので、子連れ出勤には向いてるんですね。

そして2~3歳児にも間口が開いていく、と。

「2歳でも連れてきていいですか?」という社員に対して「一回やってみよう」ということで
トライしてみました。それなりに大変でしたが3ヶ月間試してみて、これは大体OKだな、
となって、これも日常化したわけです。
課題は未だにあります。ただ、致命的ではなくて話し合って解決するレベルがほとんどなので、
今に至る、という感じです。

仕事とプライベートを切り分けなくてもいい、という思考が社長に元々あったのですか?

子連れ出勤を始めた頃は土日も仕事だし、仕事もプライベートも入り乱れてカオス状態でした。
今は平日頑張る分、休日にはほとんど仕事はしませんけど。
逆に妻がここ1~2年で新しい事業を立ち上げたばかりで「そこまで頑張るか」ってくらい、
忙しくやっていますね。でも、色々なケースに対して柔軟でいたいんです。

効率が落ちるかも、とか周囲への理解に不安はありませんでしたか?

最初は様子見していました。
でも、新人を採用するより、既存の社員がずっと働いてくれるのが一番ありがたい
社員が10人位しかいない状況で、新人教育する余裕なんてないわけですから。
赤ちゃんのお世話で離席して生産性が落ちるかどうかは分からないし、数値化もできないけれど、
それでも出社してくれる方が助かるのは、疑う余地がありません。

新人採用って大変ですものね。

仕事や会社に慣れてもらう、って大変ですよ。
僕自身、転職経験はないですが新しく入った社員を見ていて感じます。
新人だけじゃなくて既存の社員の方も、合わせていかなきゃいけないから。
人同士のケミストリーってあるじゃないですか。
だから、必要以上に採用する必要がない、離職率が低い、長く安心して働いてくれる
これって、長期的に見たらプラスです。
例えば、おむつ替えで業務の手が止まって一時的に効率が落ちるとしても、
充分おつりが来るくらいのプラス。
誰も文句を言わないのは、そういう合意があるからだと思います。

子連れ出勤は福利厚生サービスじゃない

子連れ出勤に関して、何か制限は設けていますか?

一応の制限として、大きい子になるとどうしても飽きちゃうので
3歳までにしてほしいとは言っていますが絶対ではないです。
今は、1~2歳の子どもが常時3~4人オフィスにいる感じです。
広さの問題もあるので子どもはMAX5人になるくらいに調整はやんわりしてます。

子連れ出勤の趣旨も、社員に対する福利厚生サービスじゃないんです。
子連れ大歓迎、ってわけじゃないです。いてもいいよ、くらいです。
子連れで働きたい人の場所では全くなくて、基本は保育園に入れてほしい。
でも、入れない、預ける人もいない場合に緊急措置として仕方なく…と
言ったら語弊があるかもしれませんが。
できるだけコストも手間も掛けたくないので保育士も雇わないし、なるべく子ども専用グッズも買わないようにしてます。

赤ちゃんも安心してはいはいできる、子どもだけで移動可能な土足禁止エリア。

男性社員も子連れ出勤しますか?

CFOは週一回は必ず連れて来ますし、先月入社した男性社員も6ヶ月くらいの赤ちゃんを連れて来ました。
女性の方が多いですが、本当の「緊急措置」として連れてくるのは男性の方が多いです。

良い人と長く働けるメリットを社員も理解

子連れ以外の社員さんはどのような反応をされますか?

子どものいる/いないに関わらず、基本みんな優しくしてくれますよ。
元々、社長が連れてきていて、子どもがいるのが自然だから
子どもが嫌いな人はそもそも入りづらいですよね。
良くも悪くも入社の時点でフィルタリングされるという。
採用コストを掛けずとも、いなきゃ困る人がいてくれるメリットを
社員達も分かってくれてると思います。

3歳以降はどうしていますか?

まあ課題はありますよね。「小1の壁(※)」なんて言葉もありますし。
僕の場合は、学童やご近所さんと助け合ったりしてなんとか乗り切ってます。
※小1の壁…小学校入学を機に共働き家庭が働き方の変更を迫られる問題。保育園と違って夜間まで子どもを預かってくれる学童が少ない事が主な背景だが、そもそも定員オーバーで学童に入れない地域もある。

営業職だと子連れはさすがに難しいですか?

いや、そんなことないです。
創業メンバーの一人は、子どもを置いて外出することもありますよ。
それで泣くわけじゃないですし、子どもによって慣れの度合いが違うので一概には言えませんが。

他の社員が受け入れてくれるのが大きいですよね。

だから、他社でそのままやろうとしてもハードルが高いかもしれません。
全員がOKとは思わないだろうからそこをどうするか、場所を分けるとか、それなりに大変かと思います。
ただ、新しく立ち上がる会社で、現代の価値観ならば絶対NGにはならないのでは?

良い体験が、いつか良い商品に繋がる

カタログの発送業務も自社で行う。大切な人の特別な日に贈るギフトだから、箱を開ける瞬間やカタログを見てじっくり選ぶ時間も大事にしてほしい、そんな思いが感じられる。

良い体験が、いつか良い商品に繋がる

長時間労働の問題は、御社ではありませんか?

それは結構強く言ってます。じゃないと、みんな遅くまで頑張っちゃうので。
誰が何時までいるかチェックするわけじゃないし、僕は基本18時以降会社にいないので
話に聞くレベルなんですが。
19時以降いつも残っている人を「常任理事国」なんてわざと呼んだりして。
「またかよ」と。そういう空気を作るのも大事だと思うんですよ。

改善してきました?

今は、19時以降はほぼいないと思います。
直らなかった時は、「19時以降は基本帰るように」と明確に伝えました。
ルール化まではしてませんが常態化しているなら、組織の編成や業務内容を考え直さなくてはなりませんから。

それ以外で働き方改革的な取り組みは?

僕たちの事業は、体験が重要なパーツ、商品になります。
だから、日ごろからどういう体験が面白いのか知っておいた方が良い。
「早く帰宅して」と言っているのも、根詰めて働かないと成立しないなら事業として
成り立っていない証拠だし、ゆっくり家族と過ごして欲しい、という意図もあるけれど
色々な体験をしてきなよ」というメッセージでもあるんです。
その為に、エクスペリエンス軍資金といって、月に一度、何でも良いから体験費用の半額を
上限1万円として、会社が支給する制度を二年くらい続けています。

軍資金で社員さんはどんな体験を?

例えば、旅行や水族館、TOEICの受験費用ってのもありました。
こうした体験が巡り巡って仕事につながると考えているんです。
体験内容に細かい事を言うのもチェックするのも面倒だし、よほど公序良俗に反しない限り
NGは出しません。

働き方を制限する方が非効率

勤務時間など働き方のルールは?

一応「10~17時は会社にいてね」と言ってますが絶対ではないので、
11時に出社する人もいれば、午後から別の会社に行く人や週4日だけの人も当たり前にいます。
そりゃ、週4日より週5日出社する人の方がアウトプットは多いですよ。
でも、それよりも相性が合う人と、5年、10年、100年でも長く働けるやり方を優先する
子連れ出勤と同じ考え方です。
このやり方で利益が出ているわけだから、短期的な生産性の低さはごちゃごちゃ言わない

制度を先に考えたわけではなく、相性が合う人ありきでこうなった、と。

そうですね。「こういうふうにしたい」と言われたら、基本NOは言わないです。
「副業やっていいですか?」
「週3勤務にしたいんですけどいいですか?」
「子ども連れてきていいですか?」
全て、社員や新しく採用する人の要望に対してYESと返答した結果です。
だから、制度ありきじゃなくて一緒に働きたいから。
そこで矛盾や問題が生じたら、整合性を取る為に制度を変えるなりちょこちょこ対応する、と。

副業やテレワークもOKなんですね。

会社がまだ小さいから、禁止する方が非効率だしデメリットが多くなると思っています。
テレワークでも良いんですが、困りごとや新しい事は日々発生しますし、
ミーティングを減らしたり短縮する理由もないのでミーティング自体は多いです。
オンライン参加でも良いんですが、会って話すことは大事だと思っています。
だから来てもらった方が良いんですが、午後しか出社できないなら
「午後からでいいから来てください」と。子連れと同じ論理です。

働き方について、今後の課題は?

子連れ出勤は福利厚生サービスではないし、どこまでやるかという話もありますよね。
子連れ出勤できる会社として取材を受ける事が多くて、ありがたいんですが裏腹な部分もあります。
この環境って特別ではないと自分は思います。でも、当たり前になりすぎて、
「子どもを預かってくれるんですよね」なんて誤解される事も。
「そうじゃない。預かるわけじゃないし連れてきても別にいいよ、受け入れ態勢がなくはないよ
という事なんです。そこに過度に期待されすぎるとお互い不幸になります。
子連れじゃない人から見ればひいきに映るかもしれない。
あくまで、企業が生き残る為。長期的にコストを少なく抑えて良い人と働き、成果を上げる
という目的から外れないように、という事でしょうか。

休憩時間には子どもと一緒にランチ。

今回協力して下さった企業様

ソウ・エクスペリエンス株式会社

設立
2005年(平成17年)5月25日
本社所在地
東京都渋谷区千駄ヶ谷3-60-5 オー・アール・ディ原宿ビル B1F
事業内容
モノではなく体験を贈れる体験ギフト事業
従業員数
81人
Webサイト
http://corporate.sowxp.co.jp/

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