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サイボウズの働き方改革事例(後編)

「真剣」になれば、どんな会社でもきっと変われる

投稿日:2018-10-19  最終更新日:2019-04-09  取材日:2018-08-29

サイボウズ株式会社が取り組んだ事

  • 人が集まる理想のオフィスを自分たちで育て、共同体意識を共有
  • サイボウズの「問題解決メソッド」を学ぶ研修の実施
  • 会社規模

    500人

  • 業種

    情報通信業

  • 対象職種

    全社員

前編、中編と、サイボウズの「働き方改革(働き方の多様化)」への取り組みについて、ビジネスマーケティング本部コーポレートブランディング部広報リーダー杉山浩史氏にお話を伺ってきました。

企業トップの「覚悟」をきっかけに、そこから長い年月をかけて、多様な働き方を尊重し合う「風土」を育ててきたサイボウズ。その自由闊達で躍動感のある取り組みを見て、これは「サイボウズだからこそ、できることなのでは?」と感じてしまう方も多いかもしれません。

しかし、果たして、本当にそうなのでしょうか? 本気で望めば、もしかしたら…! さあ、「サイボウズの働き方改革・後編」をお届けします。

“集まる場所”としてのオフィス

「さて、次はオフィス空間に関する働き方についてお話を伺っていきたいと思うのですが、やっぱり、リモートワークされている方は多いのでしょうか?」

「はい、とても多いですね。2016年に、東京オフィスを水道橋からこの日本橋に移転させた時などは、離職率が低下してきて、ちょうど人が増えていたころでしたので。水道橋のオフィスが手狭になっていたんですよね。そんな中、『そもそも、オフィスっているの? リモートをメインにしていいんじゃない?』と、そんな意見も出されるほどでした」

「なるほど。でも、こうしてオフィス空間は維持されたんですね」

「はい。オフィスをなくしてリモート中心にするということに対して、大反対があったんです。主に若手の社員たちから」

「え、若い社員さんたちが、ですか?」

「そうなんです。新入社員や社歴が浅い社員たちですね。先輩の働き方が見たい、と言うんです。そういうニーズがあるのならば、新しいオフィスに引っ越そう、と。そして、コストをかけて引っ越す以上、新オフィスというツールをより良いものにしよう、人が集まってくる場所に育てよう、社内外の人たちがワクワクできるスペースにしよう、ということで。そうしてできたのが、この日本橋の新・東京オフィスです」


オフィス内にあるカフェ風スペース。奥には椅子のないリビング風のスペースもある。

「本当に、ワクワクできる空間ですよね」

「ありがとうございます。みんな、楽しんでくれているようで、他の場所でも仕事できるんですけど、オフィスに来ちゃうんですよね(笑)」

「あははは。来たくなっちゃいますよね」

「集まりたい、このオフィスで働きたい、コミュニケーションをとりたい、と。だから、“オフィスで働くこと”と“リモートで働くこと”の役割を、切り分けていますね。全会議室にテレビ電話がついていますので、遠隔でのミィーティングの際にも不便はありませんし。リモート環境から、オフィスとのやりとりは全てできる環境にあります。だから、出社する意味・意義は、各人で見出してもらっています

「リモートはリモートで、オフィスはオフィスで、と。働き方の自由がある上で、“集まる場所”としてのこちらの本社の意味もちゃんとある、ということですね」

オフィスは、自分たちで作る

「ちなみに、オフィスというハード空間をより良くプランニングしていこうというような、そんなミッションを担った部署や担当者を、御社では用意されているんですか?」

「それも有志ですね。総務部門が先導はするのですが、この移転プロジェクトに関しても、参加したい人たちが有志で集まったというかたちです」

「それでは、コミュニティエリアや執務スペースのレイアウトなども、有志のメンバーが主導していったんですか?」

「業者さんも一緒にやってくださったんですが、社員の意見もかなり反映されていますね。例えば、エントランスには動物のぬいぐるみ等がたくさん並べられているんですが、これ、ひとりの女性社員に好きなようにやってもらっているんです」

「あ、そうだったんですね」

「一応、『サイボウ樹(さいぼうじゅ)』という樹を中心とした“パーク(公園)”というテーマは設定されていたものの、動物などを置く予定は、元々はなかったんです。青野が最初、モアイ像を置きたいなんて言い出したんですが、大反対を受けまして(笑)」

「あはは、渋谷みたいですね」

「そこで、その女性社員がキリンを置きたいということで、そこから動物たちがどんどん増えていったという次第です。きっかけって、そんなもんですよね。今は後付けで、“多様性の象徴”とか何とか言っていますけど(笑)」

「その動物を提案したという女性は、担当の総務部というわけではなかったんですよね」

「そうですね、全くの畑違いの部署です。でも、イベント企画などが得意な女性でして、立候補してくれて、今でも楽しそうにやっています。クリスマスの時には、どこからかツリーを持ってきたりとか、正月には正月飾りをつけたりと、自発的にやっています。誰に頼まれるでもなく、やっています(笑)」

「それも風土ですよね(笑)。ちなみに、執務室のレイアウトなどでは、最近、フリーアドレスABW(※)などが注目を集めていると思うのですが、そういったものは、もうすでに取り入れられているんですか?」

※ABW(Activity Based Working):アクティビティ・ベースド・ワーキング。会社によって定められたオフィス・職場に限らず、ワーカーが自由に働く場所を選択することによって、その一人ひとりがよりクリエイティブな成果を発揮していけるよう促していこうという仕組み。


『サイボウ樹』にはキリン以外の動物も!

共同体意識が共有できるオフィス環境

「はい。サイボウズの場合、「バーチャルオフィス」という考え方もあって、サイボウズのソフトウェアにアクセスした段階で出社扱いにする、という土壌がすでにあるので、ABWのようなものは抵抗なく取り入れられていますね」

「先ほどお話いただいた、“集まるオフィス”と“リモートで働けるオフィス”という、役割の切り分けですね。ちなみに、こうして、御社の新オフィスを眺めていると、固定席っぽいスペースもあるみたいですね」

「はい、もちろん、固定席もあります。営業はほとんどフリーアドレスですが、どんどん席が足りなくなっていますね」

「そのような場合はどうするんですか? 例えば、社員数に対して7割くらいの席数は確保してみようか、とか。他社さんは、色々と試行錯誤されているようですが」

「今考えているのは、横浜などの東京近郊に、自社のサテライトオフィスを作ろうか、ということです。現状、本社オフィスを拡大させるような方針はないので。分散の方向に動くかもしれませんね」

「具体的に、分散させる拠点数は決まっているんですか?」

「はい、少しずつ話は進んでいます。が、とにかく、どんどんフロアを拡大していって、自社ビルを取得して、みたいなベクトルではありませんね。それよりも、今あるスペースを、より効率的に、創造的に、レイアウトから機能性のデザインまで、みんなで作っていっている、という感じですね」

「働く人たちが自らで、理想のオフィス像を描いていっているんですね」

「手前味噌ですが、今、風土・空気感を含めて、サイボウズのオフィス環境は、どんどん理想に近づいていっているんじゃないかと、そんな実感を抱いています。個人にとって一番の理想型、幸せな状況って、『共同体意識が共有されている集団に身を置けている』ということだと思っています」

「共同体意識…」

「ただの仲良しグループではなく、ちゃんと他者との分離ができていて、依存しあう集団ではない、ということですね。自立したもの同士が、自分たちの選択でもって、共に居るという集団、組織。それを体現しているような環境が、今のサイボウズには出来つつあるのかなと思っています」

サイボウズでもできたんだから、きっとどこでもできる

「次は、教育面での取り組みについてお聞きしたいと思います。先に『自立』というキーワードが出ていましたが、そういった社風の中で、特に若い社員さん、社歴の浅い社員さんなどは、場合によっては戸惑われることが多いんじゃないかなと思いました。そういった方たちへのフォローはどうされているんですか?」

「入社して間もなくは、研修でフォローしていきます。その間に、サイボウズの『問題解決メソッド』というものを学んでもらうんですね」

「問題解決メソッド?」

「はい。要は『事実』と『解釈』の2つに物事を分けて捉えること。物事の本質の捉え方、理想への到達の仕方ですね。理想を描いて、今の現実に足りないもの、すなわち課題を挙げていく。そうして、それをネクストチャレンジにしていく。そのようなことを学ぶ場として、研修を設定しています」

「ちなみに、研修以外の教育の場としては?」

「そうですね…、特には設定してはいないですね。“教育”というと、どうしても“誰かから与えてもらえるもの”みたいなニュアンスがありますが、繰り返しになりますが、サイボウズでは自分で選んでいくことに重点を置いています。なので、学び取るべきことも、自分たちで判断して掴んでいってもらっています

「なるほど。やはり、教育に関しても、求めているのは自立的な姿勢、ということですね」

「『サイボウズだからできるんでしょ』とか、『サイボウズだから変われたんでしょ』なんて結構言われるのですが、2005年のサイボウズを知っている私からすると、『サイボウズでも変われたんだから、変われないはずはないですよ』という感覚なんです」

「2005年以前は、それほど、自由や自立性からかけ離れた雰囲気だったんですか?」

「良い悪いではないですが、時代も時代でしたし、ITベンチャーだったので。今とはまた違う雰囲気でした。仕事が全て、みたいな感じです。そんな中、多くの要因が重なって、それで、どんどん社員が辞めていってしまったんですね。また補充しても、どんどん辞めていく。これだと疲弊するだけなんですよね」

「そこで、多様性の尊重へと舵を切ったと」

「本当に、やむにやまれぬ舵きりです。流れで変わっていったんですね」

「でも、そこで舵を切れないという企業も多いんじゃないかと思います」

「それでも、変わりたいという願いがある企業は、それこそ「真剣」になれば、変われると思うんです。変わるために、成功事例をトレースしたり、誰かの指導を受けたりするというのでなく、“自分たちで考える”ということですよね。その方が、何より、楽しいと思います

「自立性が楽しさにつながっていくんですね。本日は本当に貴重なお話を聞かせていただきました。ありがとうございました!」

「はい、こちらこそ、ありがとうございました!」

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今回協力して下さった企業様

サイボウズ株式会社

設立
1997年
本社所在地
東京都中央区日本橋2-7-1 東京日本橋タワー 27階
事業内容
グループウェアの開発、販売、運用
従業員数
586名(2017年12月末 連結) 414名(2017年12月末 単体)
Webサイト
https://cybozu.co.jp/

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