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働き方改革記事「 オフィス環境 」

サテライトオフィスがもたらす各企業の働き方改革の効果とは

投稿日:2018-12-18

ザイマックスインフォニスタザイマックスインフォニスタ

2018年7月9日、赤坂のザイマックス本社ビルにて『ちょくちょく...(現ZXY)会員企業 公開座談会第2弾!~女性の働き方×ワークプレイス~』が開催された。現在、政府も積極的に進める『働き方改革』。それに伴い、自社拠点以外のサテライトオフィスを利用した働き方を実践する企業が増えてきている。実際にザイマックスのモバイルワークオフィス『ちょくちょく...(現ZXY)』を利用している企業の担当者と、働き方改革を進める総務省がサテライトオフィス活用の実態を伝えた。

メインスピーカー紹介

■株式会社日立ソリューションズ 人事総務本部労政部 小山氏、山田氏

『休める環境』と併せて『働ける環境』を実現するため、育児・介護を抱える社員にはタイム&ロケーションフリーワーク(=テレワーク)といういつでもどこでも働ける制度を整えており、病児保育や延長保育などで利用できる支援金も準備している。
テレワークは、全社5000人中4000人の総合職を対象とし、カフェ、サテライトオフィス、自宅と、どこでも普段会社で働くのと同じように勤務ができる。その中で『ちょくちょく...(現ZXY)』や、日立グループのサテライトオフィスの約40~50ヶ所を利用している。

■株式会社リクルートコミュニケーションズ ダイバーシティ&インクルージョン推進部 高木氏

2015年度からダイバーシティ推進をスタートし、『働き方の多様性を実現する。それによって多様な価値観・経験を持つ人材が
さらに集う会社とする』『制約の有無に関わらず、自律的に働く時間・場所をデザインできる状態を目指す』という考えのもと働き方改革を進めている。現在までに、女性管理職比率を従業員比率と同じ割合まで伸ばすなどの成果にも結び付いている。

同社 ICTソリューション局 アドバンスドテクノロジー開発部 阿部氏
二児の父として『ちょくちょく...(現ZXY)』を利用している。組織としてエンジニアのパフォーマンスを上げるために、働き方やその他の質をいかに高めるかということを模索しながらマネジメントに取り組んでいる。

■株式会社リコー CEO室働き方変革PT 児玉氏

ダイバーシティとワークライフマネジメントの両輪で取組みを推進した結果、総実労働時間が着実に短縮。また、男性の育休取得率は昨年度で96%、平均取得日数が18日とかなり伸びている。女性の平均勤続年数も、2015年に男性を逆転し、取組みの成果が少しずつ出て来ている。働き方変革においては、会社主体で効率化を図るだけの『働かせ方改革』ではなく、社員主体の『働きがい改革』を目指している。サテライトオフィスは古くから事業所内にもあるが、今後社外のサテライトの利用を進めようと、『ちょくちょく...(現ZXY)』を6月から3ヶ月間トライアルで利用中。

■総務省 情報流通高度化推進室(テレワーク推進担当) 渋谷氏

働き方×ICTという観点からテレワークに取り組む。「テレワーク=在宅だけではなく、サテライトオフィスやモバイル環境も重要」と語る。テレワークは使う側の就労者、雇用する企業、社会全体に様々なメリットがある「三方良し」だという。2か月前から部署内のオフィス改革として、朝にくじ引きで席を決めて、夜に机上を片付けてから帰る取り組みも始めたところ紙の量が圧倒的に減ったそう。

データからひも解く!テレワーク普及率

「現在全国で、20%を超える企業がテレワークを導入している ○か✕か?」 という質問に対し、会場は9割ほどが×と回答。総務省の渋谷氏が現状を解説した。答えは×だ。
5月末に発表したテレワークの普及状況では、全国で導入済の企業の割合は13.9%、今後導入予定の企業を含めても18.2%。地方、特に中小企業の方に話を聞くと、「うちはまだテレワークなんか全然」という声が多いそう。
また、そのような就業規則を設けていても実際に利用しているのは5%未満と制度があっても使われていない企業がまだ多く、導入企業の拡大と同時に、導入済の企業の利用率も拡大していくことが必要だと考えている。

大手と中小で導入に大きな開き

2018年1月に毎日新聞が行った大手企業対象のアンケートでは、テレワーク制度があるという企業が60%。今後導入予定の企業を合わせると8割を超える。一方で、中小企業が多く加盟している東京商工会議所のアンケートでは「導入している」が5%、「前向きに検討している」と合わせても16.4%ということなので、かなり開きがある。総務省の調査では、導入しない理由は「テレワークに適した仕事がない」という回答が多かった。
テレワークの導入目的は、昨年は「生産性の向上」が1位だったが、今回は「通勤時間の短縮」が最も多く、2番目が「生産性」、3番目が「健康的な生活の質」という結果となった。そして、実際にテレワークを導入した効果を聞いたところ、「効果があった」との回答が8割を超えた。テレワークを導入している企業は導入していない企業よりも約6割生産性が上がることが分かった。
ワーカー個人の観点からデータをみると、約45%の方が自分の仕事に合わせてテレワークを実施したいという意向を持っているよう。

女性の働き方の実態は?

ザイマックス石崎氏がザイマックスグループで行った首都圏のオフィスに勤めるワーカーへの調査の結果を紹介した。
テレワーク実施者をセグメント別にまとめてみると、男性は若い年代と、40歳~45歳などの管理職の年代のテレワーク率が高い。一方、女性は35歳~39歳が高くなっていて、まさに育児する世代という印象。小学校低学年以下の子どもがいる方の割合が一番高く、15%を占めていた。

「郊外の住宅エリアにお住まいで、ご自宅の近くにキッズスペースを併設しているサテライトオフィスがあったら使いたいか?」という質問に対しては、男女ともに20歳~34歳で使いたいという結果が多かった。子育て中の女性は想定していたが、男性の希望率も高いのが気になると語った。







【使い方は自由!みんなの『ちょくちょく...(現ZXY)』活用法】

会議に参加して保育園のお迎えに行ける

ワーキングマザー代表として、日立ソリューションズの山田氏が実体験を紹介した。
職種はSEで、普段は事務所で仕事をしたり、お客様のところへ出向いて打ち合わせを行っている。『ちょくちょく...(現ZXY)』を利用し始めたのは、2年ほど前。普段は子どもを保育園に預けているが、朝の登園時に「熱が少しありますので、お迎えをお願いするかもしれません」と言われた時は、自宅から会社まで少し距離があることもあり『ちょくちょく...(現ZXY)』で仕事をしている。案の定「お迎えに来てください」と電話があった際にすぐに迎えに行けるメリットがあるという。
さらに、定時近くに会議があるとき、以前は保育園のお迎えに間に合わないため欠席をしていたが、『ちょくちょく...(現ZXY)』には個室もあるため、Web会議や電話会議に参加できるようになったそう。

息子との距離が縮まった

ワーキングファーザー代表として、リクルートコミュニケーションズの阿部氏が会社の取り組みと合わせて自身のケースを紹介した。
リクルートコミュニケーションズは2016年よりリモートワークを全社で導入している。それに先駆けて、阿部氏が所属するエンジニア中心の部署では2015年から試験導入を実施。積極的に制度を活用する雰囲気が出来上がっているという。阿部氏もキッズスペースつきの『ちょくちょく...(現ZXY)』をよく利用していて、平日の日中は専業主婦の妻が子育てをしているが、妻が体調を崩した時などは阿部氏が子どもをキッズスペースに連れていくそう。
「実際利用してみて思ったのは、自分が仕事をしている横で子どもが遊んでいる姿が見えるというのは、私にとってすごく楽しい『俺得』な環境ですね」と笑顔をこぼした。
家から『ちょくちょく...(現ZXY)』まで向かう電車の中で一緒に過ごしたり、朝、阿部氏自身がお弁当を作り、お昼に一緒に食べたりと、息子との距離が近くなっているのを感じているという。

フレックスの推進に活用

6月から『ちょくちょく...(現ZXY)』を利用するリコーは、いつでもどこでも働くことを実現する制度を拡げ、移動時間の削減などの効果を期待しているそう。多くの社員が育児支援制度を利用しているため、通勤時間が少なくなる分多く働いたり、別の日は時短で働いたりと調整できれば、メリハリがつけにくかったフレックスもやりやすくなると考える。

【ちょくちょく…(現ZXY)の利用企業に聞きます!管理者側の生の声】

ここまでは利用者の視点から紹介があったが、一方で「社外のどこかに場所を借りて働くスタイルを新しく導入するのは、管理者側としてはハードルが高いのでは?」という懸念について、外で働くことを承認している企業から生の声が発表された。

自由な働き方が実現

2015年にテレワークのトライアルを実施した日立ソリューションズは、施策を実行する時はトップダウンで、施策の検討内容はボトムアップで拾うようにしている。社員から「こういうサテライトオフィスがあるから、契約してほしい」と要望があり、『ちょくちょく...(現ZXY)』の利用を始めた。テレワークの実施に際してビフォーアフターでアンケートを取ったところ、トライアル後のアンケートでは「仕事の効率が上がった」「両立しやすくなった」という声が多くあがったそう。

単身赴任解消も可能

名古屋から単身赴任で来ている社員から「自宅でテレワークができるなら、単身赴任を解消したい」と相談があり、直属の上長と話をして、結果として単身赴任を解消したそう。同時に単身赴任の住宅補助や手当も解消されたケースもある。他にも、名古屋に住む本部長は単身赴任を命じられたが断り、テレワークをしつつ週2回ほど東京に出張するというスタイルで働いている。

導入後に見えてきた課題

日立ソリューションズでは2018年4月からテレワークの対象を拡げたが、郵便物の受付や電話対応などはこれまで通りに発生するため、かえって事業所勤務社員の負担増になるケースもあり、テレワークができない社員もいることが課題だという。
別の課題としては、通勤時間が減って心の負担と不満解消にはつながったものの、仕事量が変わっていない点。テレワークの就業管理システムやRPAを導入して、会議ソリューションやAIアシスタントなどを使い対策をしていると語った。

1度みんなでやってみることで見えた課題

リクルートコミュニケーションズでは、基本的に入社半年を経過した全ての従業員を対象としてリモートワークを導入している。試用期間を経て、2016年度より全社導入へと舵を切ったのち、現在までに全体の95%の従業員がリモートワークの活用経験がある状態になった。月次でならすと従業員一人あたり約20%の業務がリモートワークで行われている計算になるという。
制度・仕組みを整える以外では、活用する本人や周囲の人の『気持ちの観点』を重視して、浸透・促進施策を進めてきた。制約の有無にかかわらず、全ての従業員がリモートワークを気兼ねなく行える状態を目指し、まずは全員が1回はリモートワークを経験するよう浸透施策を進めたところ、特に子育て中の女性従業員は、時短やリモートワークといった働き方をすることが「周囲の人に迷惑を掛けているのではないか?」ということを強く気にしていることが分かった。子育て中でも、そうでなくても、全ての従業員が自分のライフスタイルに合った働き方を選び、活躍できる環境を作るため、リモートワークを皆が公平公正に実施することが分かりやすさという面で有効だと語った。

責任者クラスに導入することで会社全体へ広めた

リクルートコミュニケーションズの阿部氏は責任者側の観点から、リモートワークの課題は、コミュニケーションであると説明。
エンジニア部門はリクルートコミュニケーションズにおける全社導入に先駆けて、試験的にリモートワークを行った。リモートワークを行うと従業員の出社機会が減るため、必然的に対面コミュニケーションが減ってくる。リモートワークを導入するだけではなく、場所や時間の制約を緩和できる仕組みや環境の整備が重要だと考え、対面コミュニケーションを非同期で補完する手段としてチャットなどのITツールを導入し、また議事録などの各種情報を集約することで、リモートワークの活用を促進した。
リモートワーク導入推進におけるポイントとしては、マネージャーなどの責任者クラスが率先する形で積極的にリモートワークを行うことで、「責任者がやっているんだ」「上長が使っているんだ」と、メンバーも使いやすい環境を作っていくことができたという。
リクルートコミュニケーションズにおいては、リモートワークの活用の仕方も人それぞれ。制度上は一週間ほとんど出社しないといった働き方も可能だが、エンジニア組織では午前中だけ・午後だけなど、朝の交通機関が混んでいる時間を避け、午後から出社して皆で対面ミーティングをするというようなチームパフォーマンスを重視する働き方をする人が多いという。自分の意志で時間をコントロールしやすくなったので、海外カンファレンスへの参加やプライベートでの新しい技術の習得に向けたチャレンジができたり、休みを取った時になにかトラブルがあった場合でもすぐに対応できるメリットがあるそうだ。

マネージャーの意識改革も必要

リコーでは2018年3月まで旧在宅制度があり、登録者がその時点で240名と、会社全体で見ると少ない数字だった。研究・開発・生産現場と色々な部署がある分、マネジメント層の理解を得ることが難しいという課題があったため、1~3月の間に全管理職900人弱全てにマネジメントワークショップを行い、離れて働くメンバーとのコミュニケーションを密にするためにも、1on1のマネジメントを行っていくと決めた。6月末にはリモートワーク登録者も1630人にまで伸びている。

「私たちはいつでもどこでも働くことはできないですよね。」とリモートワークができない生産現場からは不満の声もあがったそう。そのため、フレックス制へのチャレンジなども含め生産現場での働き方変革についても考えている。

費用対効果は?

質疑応答では、参加者からサテライトオフィスは場所代を企業が負担することになるが、その費用対効果を得るためにどのような仕組みを整備しているのか?という質問があった。

それに対して、リクルートコミュニケーションズの高木氏から「同時に本社オフィスをフリーアドレス化して、最適化を目指している。働く場所をどれだけ自分たちが利便性高く使えるかどうかを考えて、サテライトを含めたオフィスコストの適正化について、5年や10年計画で見ていくという考え方で今は進めている」と回答があった。

日立ソリューションズの小山氏からは、「定量効果だけではなく、定性的な効果も見ている。サテライトオフィスを導入した2015年は、会社負担ということで始まった。ところが、予算編成時期に利用者負担に変更したところ、利用率が1桁に減りました(笑)。それを受けて、3ヶ月後に会社負担に戻した。」というコメントがあった。
それぞれ社員の声と費用を擦り合わせながら運用している様子が伺えた。

社内全体に納得してもらうには

また、「サテライトオフィスや働き方改革を導入するにあたって、社内全体に納得してもらうためのポイントが聞きたい」との質問もあがった。

日立ソリューションズでは施策をボトムアップで拾うことで社内全体の納得を得ている。まず現場の社員を巻き込んで施策を検討し、それぞれの現場で他の社員からも意見を吸い上げてもらい、施策検討のワーキングに持っていく。『ちょくちょく...(現ZXY)』も社員からの要望があっての契約。最終的に決まった施策は社長や本部長からトップダウンで、各クラスに落とす。社員の声を大事にする仕組みが不満を減らすコツだといえる。

社外にいると迅速な対応ができない?

次に出たのが「週に1回テレワークを行ってみたが、印鑑が必要な時や部下の相談を受ける時など、社外にいると迅速に対応できない。そうした対策は、各企業様ではどのように取り組んでいるのか」という質問。

これに対し、リクルートコミュニケーションズの阿部氏が回答。社内ではだんだんペーパーレス化が進み、電子決裁等の環境が整ってきているという。チャットの活用が浸透しているので、メンバーから相談したいことがあればまずチャットでフランクにコミュニケーションをとってもらい、対面で会話した方が良いと判断した場合は改めて時間を設けている。管理職だけでなく、従業員全員が必ずアウトルック等でスケジュールを共有し、会社で相談できる時間帯が分かるようにしている。
日立ソリューションズの小山氏は、テレワークを強制せず「必ず使うというわけではなく、あくまで柔軟な働き方の一つ」ととらえている。ただし、テレワークをする時のルールとしてスカイプを起動しておくことを決めていて、社員のコミュニケーションも大切にしている。

【より働きやすい環境づくりをしていくには?】

規模や勤務内容、部署の仕組みまで各社によって環境はさまざま。社員の多様性を重んじ働きやすい環境を整えていくため取り組んでいる各社が、本日の座談会で実例や意見を共有した感想を述べた。

ザイマックス石崎氏は「キッズスペースを利用してくれている方が来ると聞いてワーキングマザーの方かと思っていたが、パパで驚いた。同時に企業がワーキングファーザー向けの制度の策定も始めていると実感した。社内でそれに続くお父さん達が出てくると良い」と述べた。

日立ソリューションズ山田氏は「今の30代は、1人目より2人目をどうするかということに悩んでいる。2人子どもがいると、1人が熱を出した場合、もう1人の世話をするために大人が2人必要になる。そういったシーンが今後スタンダードになることを考え、『ちょくちょく...(現ZXY)』のキッズスペースも2人目がいる方や学童に預けられず、子どもを連れて来たいパパやママに多く利用して欲しい」と子育て世代の利用への期待を語った。

日立ソリューションズ小山氏も「弊社はキッズスペースの契約はしていない。私としては今すぐ契約をしたいが、まだ1人の声しか聞けていないので、他の社員の意見も吸い上げて、今後利用ができるよう進めていきたい。色々な事例も聞けたので参考にして、より社員が働きやすい制度にしたい」とキッズスペース付きオフィスに魅力を感じたようだ。

リクルートコミュニケーションズ高木氏は「働くオプションをたくさん持てたら良い。働き方も業務の内容も自分でデザインしていく権限を持つことが働き甲斐に繋がると私は信じているので、そういう観点で選択肢を多く持つことが大事」と話す。

リコー児玉氏は「現状は弊社も導入を悩んでいる企業様と同じような立ち位置にいるが、色々調べたり悩んだりして止まってしまうよりも、まずは一歩踏み出してトライアルをしてみて実際の状況などを見ながら進めていきたい」と。

総務省渋谷氏は「総務省では、テレワークデイズという国民運動を行っている。2020年に開催される東京オリンピックの開会式の日である7月24日をテレワーク・デイと定め、皆でテレワークを実施することで課題やメリットを洗い出し、テレワークを浸透していきたいという国民運動。参加団体数は去年の同じ時期に比べ約2倍になっている。本日お集まりいただいた企業様もぜひご参加いただければ」とテレワーク導入の入り口としてイベントへの参加を促した。

まとめ

サテライトオフィスを提供する側・利用する側、そして働き方改革を進める側と、三者三様の立場のお話を伺うことができた。社員が働きやすい環境を作ることは、多くの企業が抱える課題。本日の座談会の内容はそれぞれの会社で実践中の施策、もしくは検討している改革案を組み立てるヒントになるのではないだろうか。