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【セミナーレポート】Beyondコロナのオフィス最適解!

~1,500人の実験から得たオフィス戦略実践術~

投稿日:2021-07-12

2021年4月21日、株式会社ザイマックスが主催するセミナー「Beyondコロナのオフィス最適解!」がオンライン開催されました。
第一部「データと企業動向から考える”働く場所”の最適解」では、働き方改革を専門とする経営戦略コンサルタントでありリデザインワーク株式会社の代表取締役を務める林宏昌様をお迎えして、ワークプレイス戦略について実践的なレクチャーをしていただきました。第二部では、ザイマックスがBeyondコロナを見据えて1,500名規模で行ったハイブリッドオフィス戦略の実証実験から得られた知見をお伝えします。

第一部「データと企業動向から考える”働く場所”の最適解」のセミナーレポート

登壇者

株式会社ザイマックス ジザイワーク事業部
新しい働き方推進サポート部 マネジャー
関戸友香

2009年ザイマックスグループ新卒⼊社後、一貫して企業のオフィス移転やテレワークなど「働く場所」に関した営業に従事。2015年にはグループ社長賞を受賞。現在は新しい働き方推進サポート部に所属。営業と兼務として、自社の働き方改革PJリーダーやフリーアドレス運用委員長を歴任しており、コロナ禍の2020年9月に新設された「これからの働き方働く場所検討推進プロジェクト」に着任。自社の働き方を通して学んだ気づきを他企業に展開するべく、日々奮闘している。

ザイマックスグループの働き方の変遷

ザイマックスでは、「ZXY」を展開しワークプレイスに変革を起こす企業として自らが1~2歩先の新しい働き方を推進し、それを社外に対して発信していくことに意味があると考え、ハイブリッドオフィス戦略(※)の実証実験にチャレンジし、今後の働き方、働く場所の方針を検討してきました。
試行錯誤を経て体得したノウハウの中には皆様のお役に立てる内容もあるはずだと思い、本日、一連の取り組みをご紹介させていただくこととなりました。
※ハイブリッドオフィス戦略とは、本社か在宅かの二者択一の議論ではなく、テレワークとリアルの掛け合わせ、在宅・本社だけでなく本社ではない郊外エリアでの自社拠点(=自社専用サテライトオフィス、以後「自社サテライト」と表記)やタイムシェア型サテライトオフィスも組み込んだオフィス戦略を指す。

今後の働き方と働く場所の変化

コロナ前 ~在宅禁止、自社サテライトは上手く機能せず~

まず、コロナ前までどんなワークプレイスでどんな働き方をしていたか簡単に説明します。

ビルメンテナンス職など一部職種を除いて、基本的にはテレワークを積極的に活用する一方、在宅勤務は原則禁止されていました。本社オフィスは固定席を廃止し、大まかな部署ごとに島を分けたグループアドレスがメインでした。
ZXYは営業職を中心に希望があれば全従業員利用可能で、平均8,000時間/月の利用実績がありました。また、ノートPCを支給されていない事務スタッフ職(約300名)がテレワークできるようにと約30坪の自社サテライトを首都圏に10か所開設。しかしセキュリティレベルは高いものの、業務フローやシステムの都合上、できる業務が制限され使い勝手が不十分だったことから平均稼働率は40%程度で、会話や交流もあまりなく上手く機能していない状態でした。

自社サテライトオフィス
2017年から横浜や船橋、練馬など10拠点に開設した自社サテライト。

Withコロナ ~在宅解禁で残業増加、ZXY利用コスト1.5倍に急増~

それがコロナ以降、次のような変化がありました。

■感染防止の為、在宅勤務が解禁。
→感染リスクは減ったが、残業時間が増えてしまい生産性の低下、従業員間のコミュニケーション減少が課題に。
また、守秘性の高い業務は在宅ではできない為、やむを得ず出社する社員もいた。
ZXYの利用が急増。
コストが1.5倍にまで増えてしまった。

これらの状況を目の当たりにし、本社ではない郊外エリアでの自社サテライトの必要性を改めて感じました。
とはいえ自社サテライトの稼働率はコロナ前から低い状態が続いており、利用促進にはずっと苦戦を強いられていたのです。
さて、どんな空間にすれば、社員が自社サテライトを活用してくれるのか?
社員を自社サテライトに呼び戻すため、実証実験がスタートしました。

Beyondコロナの働き方 実証実験

以上の課題を元に、「ハイブリッドオフィス戦略を成功に導くため、本社・自社サテライトは具体的にどのような場であるべきか?」を目的として行った実証実験について、本社オフィスと自社サテライトで行った実験、2段階でお話しします。

メインオフィス(本社)での実験

コロナ以降、あまり使われなくなった本社の大会議室を廃止し、ニューノーマルの働き方に対応した実証実験用オフィスに改装し、以下の5項目について実験を行いました。

1)適正な座席数は
≪施策≫
以下のようなフリーアドレスにレイアウト変更し、座席稼働率を検証した。

本社オフィスでの実証実験

≪結果≫
在席数60人に対して執務席20~32席でも最大稼働率は75%だった。このことから、執務席は在籍者数の半分~1/3あれば必要十分と判断する。ただし、先が読めない状況が続くので、可動式の什器を採用したり、床にコンセントを多めに仕込んだりして、手軽にレイアウト変更できる工夫を継続している。

2)不動産価値の高い都心でのソロワークはできるだけ抑えるべきではないか
※次のテーマと重複する為、そちらで説明。

3)チームワークの質・量を高める工夫が必要ではないか
≪施策≫
オンライン会議やミーティングなどチームワークを重視した什器(写真参照)を試験導入した。
≪結果≫
このような什器は今まで使ったことがなかったが、75%が「従来より話しやすかった」と好評だった。しかし、ハード面だけでなくソフト面も併せてより研究と社内議論が必要と感じる。

チームミーティング什器
対面でのチームMTGがしやすい什器を導入

4)WEB会議に適したファシリティを充実させるべきではないか
≪施策≫
コストの異なる3種類(完全個室、調音ブース、机上パーティション)のWEB会議用個室・ブースを試験導入した。
≪結果≫
通常の声より小さくても相手に届くという、医療現場などで使われる特殊素材を使った調音ブースがコストバランスも良く大変好評だった。また、座席予約システムの利用データを元にWEB会議用の必要座席数の算出が可能になった。

WEB会議用ファシリティ
機能とコストの異なる3種類の個室スペースを設置し、様々なシチュエーションで繰り返し実験を行った。
※ご希望の方に比較実験結果と遮音性能テストの詳細データをお送りします。お気軽にお問い合わせください。お問合せフォームはこちらから。


>5)ニューノーマルの新しい機能としてウェビナー配信用施設が有用ではないか
≪施策≫
オフィスの一角にスタジオ(写真参照)を新設、機材や什器を購入した。
>≪結果≫
全社キックオフや全体会議、ウェビナー配信などを自社スタジオからオンライン配信できるようになり、新しい本社機能の在り方のヒントを見出すことができた。

オンライン配信用スタジオ
オンライン配信用スタジオの様子

自社サテライトでの実証実験

1)サテライトオフィスコストの最適化(ZXY⇒自社サテライトへ)
≪課題≫
自宅近くのZXYを1日中使う社員が増え、タイムシェア型サテライトのコストが急増していた。個室を中心としたZXYの便利さはそのままに自社サテライトに誘引してコストを適正化したい。
≪仮説≫
ZXYに利用が集中する主な理由は以下の3点が考えられる。
・WEB会議のやりやすさ ・アメニティが充実していること ・家から近い
これらの機能を自社サテライトに付加すれば良いのでは?
≪実行≫
本社実験でも使った3種類の個室とブースの新設、およびアメニティの充実を図った。
≪結果≫
やはり完全個室は人気が高く全員が「利便性が向上した」と回答したが、個室よりコストの安い調音ブースでも6割が効果を実感できた、と回答。以上のことから、WEB会議用機能を設けることで利便性は大きく向上し、ZXYから自社サテライトへの誘因が可能になりオフィスコスト最適化に繋がると言える。しかし、完全個室ほど遮音性がない調音ブースにはクレームが入ることも。新しいファシリティを導入する際の利用マナーの周知徹底は今後の検討課題に挙がっている。

自社サテライトオフィス
個室を増やし利便性が上がった横浜にある自社サテライトの様子。

2)場所に縛られない働き方をより進化させる(本社⇒自社サテライトへ)
≪課題≫
本社でしかできない仕事が多く、テレワークが難しい社員がいる。
≪仮説≫
本社機能の一部を自社サテライトに移管すれば本社出勤が減り、将来的なオフィスコスト削減や地方採用強化に繋がるのではないか。
≪実行≫
郵送受け取りや印刷、特殊システムなど、業務フローやシステム改修を実施して自社サテライトでできる業務の幅を増やした。
≪結果≫
本社機能を移管してから、在宅より自社サテライトを選ぶ社員が増えた。しかし、物理的に本社でしかできない仕事はまだ多く、今も検討を継続中。

本社機能に近づける

確実なのは、本社機能こそ万人受けを狙うより、当社だとCADや経理系の基幹システムを使えるようにするなど、かなり細かく業務内容に落とし込んで組織にヒアリングを重ね、それぞれの業務で使いやすく、なおかつ無人運営でも回せるような機能を充実させていくことが重要だと感じました。
この機能抽出には大変手間がかかりますが大きな効果があり、今後も更に向き合っていくべき項目だと考えています。

3)在宅課題の解消(在宅⇒自社サテライトへ)
≪課題≫
残業時間の増加、コミュニケーションの希薄化。
≪結果≫
機能とアメニティを充実させた自社サテライトを実際に利用してもらったところ、
6割が在宅より自社サテライトの方が「生産性高く働ける」と回答(下図参照)。

サテライトオフィス生産性

その背景には、本社機能を付加したことで在宅よりもできる業務が増えたこと以外に
・稼働時間が決まっているため過度な残業防止になる上、オンオフの切り替えがしやすい
・家と違って、働いている人が周りにいるので仕事モードに入りやすい など精神的理由も大きく寄与していることが分かったが、そもそもこの「生産性」が何をさしているのかという点はもっと突っ込んで分析していく必要がある。
また、様々な部署の社員が混在することで新たな人的繋がりが生まれ、新規商談に繋がった事例もあった。テレワーク時代における、企業風土の伝達や仲間意識の醸成のためにも、自社サテライトは鍵になると考えられ、交流を活発化させる仕掛けを更に考えたい。

* * *  
 
端的にまとめますと、個室の数を増やし、更に本社だけでしかできなかった仕事を自社サテライトでもできるようにしたところ、コロナ前の約1.4倍にまで利用時間が大幅に増加しました。また、アンケートの結果を見ても生産性の向上にも一定の成果があったと言えるでしょう。

以上の実験を通して、ハイブリッド型では“本社オフィスでするべき仕事”をしっかり定義し、職種や業務内容に応じて適切なワークプレイスを選択するよう誘導することで、本社の面積を最適化できることが分かってきました。
同時に、ZXYのようなタイムシェア型サテライトオフィスとは別に自社サテライトを構えることにより、残業時間の増加や生産性の低下、社員間交流の減少などの課題解消や、ワークプレイスコストの適正化に寄与することも合わせて実証することができました。

質疑応答

当日はセミナー視聴者の方から質問が寄せられました。

質問①自社サテライトをリピート利用させるにはどうしたら良いですか?

関戸「機能の増強がひとつのカギになると思います。ZXYの場合、一度使うと7割以上がリピーターになるというデータがある一方、自社サテライトは一回使って終わりという社員が多かった。その為、今回は機能の増強に着目し、特にWEB会議ニーズが増えていることに着目して自社サテライト内に個室を増設、かつ、社内システム的に本社でしかできなかった仕事を自社サテライトでもできるように設定やポリシーを変更したところ、思惑通り稼働率が上がりリピーターが増えました」

質問②最適なオフィス構築には、どれくらいの時間がかかりますか?

関戸「1年から1年半は必要だと考えます。物理的には最速で半年程度でも不可能ではないですが、セオリー通り1つの部署からスモールスタートして全社に広げるプロセスを踏むとともに、仮説を立て、実験してデータや社員の声を受けて修正するというサイクルを経て最適なオフィス計画を確立するにはやはりこれくらいの期間が必要です」