INDEX
ディスカッション
オフィス不要論についてどう思う?
柳本)2020年3月に移転したばかりなので不要と言われたら困っちゃいますね(苦笑)。うちはフラットな会社なので、「なぜ出社しないといけないんですか?」って私に直接言ってくる人もいるんです。その発言の背景をよくよく聞いてみると、安定的に事業が進んでいる部門で人の入れ替えもなくオンラインでもツーカーで通じる。そうすると確かに集まる必要はないのかもしれません。
事業内容やメンバーの状況によっては、オフィスがなくてもやれる人はいるでしょう。ただ、成長期の会社なら新人がどんどん入社しますから完全なオフィス撤廃は難しいと思います。だって、自分が新人の立場だったら不安ですよ。それに、あった方が創造性高く働けるんじゃないかな?
向山)契約期間の縛りがあるので、すぐにオフィスの縮小や撤廃は難しい面がある。ただし、今のオフィスレイアウトをそのまま使うのではなく、変えていこうとは思っています。オフィスの要/不要は、各企業の事業内容や状況によって変わるはずですから、まずはオフィスにどんな機能が必要なのか検討するのが先かと思います。
ワークプレイスの使い分けや役割の違いは?
柳本)探っているところですが、週2回出社のマーブルワークスタイルだと、部署ごとに出社する曜日を決めて、その日は集中会議デイにするなど、コミュニケーション日と作業日みたいな使い分けをしている部署が多いようですね。
向山)在宅と本社の使い分けは、社員各々の業務内容やライフスタイルに応じて選択できるようにしていくのが良いと思っています。
サテライトオフィスサービスZXYの利用上限などは決めていませんが、あくまで一時立ち寄りとして使うように位置付けて、1回当たり上限2.5時間を目安に使うようガイドラインを設けています。社員からは、「会議のためだけにわざわざ本社に行かずに済むのが良い」とか「それぞれの中間地点にあるZXYに集まってちょっとした会議や社内申請業務や資料作成などをできるのが便利」という感想が聞こえています。
石崎)生産性向上を9割以上が実感したというのはすごいですよね。テレワークが浸透した中で、どんな時にオフィスに来るのか、どんな場にする計画なのかもう少しお伺いできますか?
向山)直感的には、このままテレワークが進むと「オフィスに行かなくていいよね」という社員が多数派を占め、会社側が「来てくれないか」と会社が社員に出社を促す時代が来るのではないかとも思っています。そうなると、オフィスは社員にとって出社するメリットや楽しさがある場所でないといけない。機能としては例えばスポーツジムや託児所、よりよい執務環境を備えるなど、様々な機能を持たせつつ出社日のルール的なものをチームごとに設けるなど、そういう形に落ち着いていくのかなと。
オフィスのコンテンツとしては変える必要があると思いますが、これからの検討課題ですね。
出社率の管理どうしてる?
柳本)厳しく管理して出社率を抑えるというよりも、出社の目安や考え方について私からメッセージを出し続けるスタンスを取っています。
誰でもコミュニケーションしながら仕事しているはずです。「私はオンラインで大丈夫です」と言ったって、相手はリアルで会いたい時もありますよね。コミュニケーションは、個人だけで最適化されることはなく、必ず組織全体で最適化されるものです。だから、ある程度のルールという意味で、マーブルワークでは週2回出社と定めました。ちなみに、出社率は入館カードで把握・集計しています。
向山)管理には一般的な安否管理サービスの機能を活用しています。
毎朝10時に各自がアプリで①コロナ症状の有無、②出社状況③どこに行くか(自社or客先)④3密ではないか、4点を申請する仕組みです。業種柄、お客様先に常駐する社員がおり、入館カードだけでは出社率を把握できないからです。もしも、3密状態の企業に当社従業員が常駐している場合、お客様に環境改善の相談をして解消するようにしています。
また、会社支給のiPhoneにはCOCOAを全員インストールしています。
安否管理サービスアプリのスマホ画面。設問は自由にカスタマイズできる。
補助制度どうしてる?
柳本)全社一斉リモートデイをやった時点で補助の必要性は明白だったので、経営陣と一緒に腹をくくったのが大きいかなと思います。1,000台のモニターを発送する人的リソースと比べたら、各自買った方が安いし早い。毎月のリモート環境維持手当ては、通勤費をカット(※)した分で、経費は賄えています。※交通費は実費精算に変更。
ただ、ひとつだけ後悔しているのはランチ手当を支給するのに時間が掛かってしまったこと。リモートワーカーばかりに支援がいきがちですが、本当に大変なのは感染リスクがあるのに出社しないといけない社員です。本当はもっと早く4月中に支給してあげたかった(下図左)。
向山)コロナ禍で各自準備するものがあったでしょうし、みんなが工夫して乗り切ったのを踏まえて特別支援一時金30,000円を全社員に支給しました。8月からは新しい勤務様式に対応する各種支援金(月額4,000円)の支給を始めています(下図右)。在宅に伴い通勤定期を停止している社員も多いのでその費用を原資に各種支援金として社員に還元するという考え方で運用しています。
(左)ミクシィが3~5月に行った支援施策(右)ラックが8月に新設した各種支援金制度。在宅勤務者だけでなく、客先常駐社員や業務上の理由で出社せざるを得ない社員も支援の対象にしている。
質疑応答
―――テレワーク中、非言語コミュニケーションが減ることで帰属性が下がるなど変化を感じたことはありませんか?
柳本)うーん、帰属意識に関してはもっと長期で見ないと分からない気がします。ただ、私が明らかに変化を感じているのは「〇〇さんがサボってばかりで困る…」みたいな労務系の相談がすごく減ったことです。ただ、これが良いのか悪いのか、判断しかねていて。もしかしたら必要なプレッシャーや摩擦まで減ってしまった可能性があるのではないかと。
向山)当然減りますね。それを補うのと情報共有を兼ねて、Teamsのオンライン配信機能を使って週1回30分の校内放送みたいなことをやっています。あとは、自由参加ですがzoomのブレイクアウト機能を使って、無作為にルームを割り振られたメンバー同士が集まって会話する取り組みをしています(下図参照)。なかなか面白いですよ!普段交流がない社員と話して、思いがけず人柄を知れたりして。いきなり居酒屋に飛び込んで隣の人と強制的に話すようなイメージですかね(笑)。
これは経営陣から言われていることなのですが、「非公式なコミュニケーションを、公式かつ意図的に仕掛ける必要がある」と。リモート環境では生まれにくい偶発的なコミュニケーションを、仕組みとして作る必要がありますよね。
―――マーブルワークスタイルのガイドラインがあれば教えてください。
柳本)はい。ガイドラインとして以下のような6カ条を社内広報しています。
本当はそれぞれに細かく説明書きがあるのですが、特にポイントは「⑥リモートワークは成果を出す働き方の一つと捉える」という点。リモートはあくまでもでも成果を出すためにしているのだから、リモートじゃできない事があるなら出社してください、と。出社を上手く使ってほしいんです。どちらだけに偏るのは良くなくて、出社前提になったらリモートがやりにくくなるし、逆にリモートに固執すると生産性やコミュニケーション頻度が下がってしまいます。
他には、「①その場にいない人に配慮したコミュニケーションをとる」というのは、場所による情報格差を生まない為に、例えば会議中に「あれ」とか「それ」みたいな言葉を使いすぎると、現場にいる人は分かるけどリモートの人には伝わらないのでやめましょう、とか。つい忘れがちなことを明文化しています。
―――ラック様はテレワークで生産性が上がったとの事ですが、オフィスはどういう場所であるか理想はありますか?
向山)生活パターンが多様化していく中で、各自が業務内容やスケジュールに応じて働く場所を選べるようにしておく。その選択肢の一つとしてオフィスやテレワークがあるのだと思います。
ABWの文脈にも通じると思いますが、リアルに会話する方が良い場面なら会社に集まれば良いし、自律的に選び取る場所のひとつとしてオフィスがある。
さっき公園と言いましたが、会社の歴史や個々人の学びを共有するとか、家やサテライトオフィスでは得られない体験や機能を凝縮して提供する場所として、オフィスを用意することは必要だと感じます。
―――ミクシィ様は週2日出社とのことですが、「通勤で感染したらどうする?! 命の軽視だ!」みたいな極端な意見が出た場合、どう対応していますか?
柳本)ご苦労されている様子…よく分かります。最初は外出自粛みたいな厳しい状態だったのが、だんだん感染経路や予防策が分かってきましたよね。そのたびに、産業医から「こういう事はしても感染リスクは低い。だから冷静に行動しましょう」とメッセージを出してもらいました。私からも、会社として感染防止対策に最大限配慮している事や、週3日はリモートできる事、時差出勤も認めている事などを丁寧に説明し、冷静に判断してほしい旨を伝えつづけています。
―――それでは、お時間が迫ってきましたので最後に一言ずつお願いします。
石崎)コロナ危機を経て企業とワーカーの関係性が変わりつつあるのかなと、お二方の話を伺って感じました。仕事のやり方もマネジメントもヒエラルキー型組織だったのが、企業がワーカーに向き合う姿勢や、ニーズを積極的にくみ上げるように徐々に変わってきたと思います。そんな中で、オフィス縮小だとか不要論みたいなことだけが目的になってしまうのはもったいない。
人材マネジメントと働く場所をセットで考えているのがキーポイントなのかな、と。だからワーカーに優しいだけではなく成果を上げるための環境整備だよ、と意思表示をして施策を打つのが重要なのだと勉強になりました。
柳本)チャットのコメントを見ていると、自分も皆さんと同じような悩みと戸惑いの中にいるんだと分かって勇気づけられた感じがします。ミクシィは4~9月がタームになっていて、これから人事評価時期に入ります。初めてのリモート化での評価ですから、人事としては気になる所です。ここでも色々と出てくるだろう発見や問題を、機会があれば皆さんと共有しながら乗り越えていければと思います。
向山)世間で言われているテレワークにより生産性が上がったとか下がったとかという話は、やはりN/Wインフラやコミュニケーションツールをしっかり整えて初めてそういう話になるのかなと思います。石崎さんが仰った通り、これからはマネジメントの在り方が従来とは変わっていくでしょう。やはりオンラインなので、業務分担や上長からの指示出しは「見える化」してチームで共有していく。そんな仕事のやり方が必要になってくるはずです。テレワークなので原則社員を信頼するしかないと思います。いわば上司の子離れ(部下離れ)、部下の親離れ(上司離れ)状態とでも言いましょうか。自律が求められる環境におのずとならざるを得ないと思います。とはいえ、我々も試行錯誤しながら進んでいるので、私自身も情報収集しながら知識を吸収していきたいと思います。
―――皆さま、本日は貴重なお話をありがとうございました。
ザイマックスでは様々な用途でフレキシブルに使えるサテライトオフィスサービスZXY(ジザイ)を、都心から郊外まで首都圏最大級※の94か所(2020年9月現在)展開しています。最短一ヶ月の短期利用ができるZXY Monthlyは内装、家具、Wi-Fi完備。すぐに利用開始できて、自社専用サテライトオフィスや短期プロジェクト、コールセンターなど多様な用途にお使いいただけます。※当社調べ
ZXY(ジザイ)HPはこちら→https://zxy.work/
モデレーター紹介
株式会社ザイマックス
清水 絵梨花
2015年ザイマックスグループ新卒入社。昨年まで同グループ会社のザイマックスインフォニスタにて賃貸仲介及び
ZXYの営業を行っており、4月に現部署へ。現在は主に企業のワークプレイス提案をしつつ拠点出店なども担当。