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ダイヤオフィスシステム株式会社の働き方改革事例

テレワークで残業時間を3割削減

投稿日:2019-10-30  取材日:2019-09-03

ダイヤオフィスシステム株式会社が取り組んだ事

  • ノートPCを支給、テレワークを始めて残業が3割削減
  • フリーアドレスに変えて、ペーパーレス化が加速
  • 時間休を導入、有給がより使いやすく
  • 会社規模

    160人

  • 業種

    卸売業

  • 対象職種

    企画・管理

    営業職

一日に何件もの取引先を周る営業マン。その移動時間やスキマ時間をテレワークにあて有効活用する事で残業時間を3割も削減した企業があります。
ダイヤオフィスシステム株式会社はオフィスの設計やワークスタイルコンサルティングを行う“働き方”に精通した企業。オフィスのスペシャリストである同社が実行した働き方改革を伺いました。

スタートは、ムダの洗い出しから

御社は昨年「東京都働き方改革宣言」をされたそうですが、改革に乗り出すことになったきっかけを教えていただけますか。

柳下:2017年に会社が発表した“5ヶ年計画”の中の1つに働き方改革が挙げられたのがきっかけでした。

”5ヶ年計画”とは?

柳下:7つのタスクフォースから成る中長期経営計画で、その筆頭として働き方改革が挙がっていたんです。

2017年というと世の中的にも働き方改革が浸透し始めた頃ですね。それも追い風になったのでしょうか。

髙岡:世の中の流れもありますが、当社はオフィスに関する業務をしていますから、実際に自分たちの実践した経験を活かし、お客様のへ展開したいという考えもありました。

当時、髙岡さんは社長から直々に働き方改革責任者に任命されたそうですが、どんなお気持ちでした?

髙岡:会社のこれまであった働き方を変える訳ですから大役だとは思いましたね。

写真左から管理本部購買部 柳下節様、東日本営業本部営業2部 小林由佳様、東日本営業本部営業1部 登坂真由子様、取締役 髙岡秀行様。

そうですよね。会社から数値目標のようなものは与えられていたんでしょうか。

髙岡:それはなかったです。
働き方改革プロジェクトチームのメンバーが各部門から集められたので、それぞれの部門でムダだと感じている事や生産性を上げるにはどうしたらいいか等々ヒアリングをしてもらって、話し合う事から始めましたね。

社内にあるムダの洗い出しをしたわけですね。どんな課題が出ましたか。

柳下:例えば、この作業をやる為にいちいち会社に帰ってこないといけないのが営業としてはつらいとか。この事務作業は二重管理になってるから一括にできないかとか。

なるほど。その結果、具体的に2年間でどんなことを実行しましたか。

髙岡:最終的には、
・テレワークの導入
・社内のリニューアル工事
・東京都の働き方改革宣言
・人事制度の変更(時間単位年休の導入)
 などです。
例えば、テレワークができるようにデスクトップPCからノートに変えようとか。
社外でも仕事できるようになるんだから社内もフリーアドレスにしようとか。
生産性を上げるための施策が多かったですね。

最近では、基幹システムを入れ替えて電子印鑑の導入を進めているとお伺いしました。

柳下:ええ。電子印鑑が導入されればいちいち会社に戻る必要も更になくなります。
それに、プリントアウトが必要ならばサテライトオフィスのZXY(ジザイ※旧ちょくちょく…)からできますし。ムダな移動時間をより圧縮できるのは大きいと思いますね。

同社も利用するザイマックスのサテライトオフィス「ZXY(ジザイ※旧ちょくちょく…)」。スマホやノートPCのデータをプリントアウトできる複合機があるので社内文書や大量の営業資料を持ち歩く必要がなくなる。

改革に伴ってたくさんの変化があったと思いますが、それに対する社員の反応はどうでしたか。

髙岡:反対はありませんでした。明らかにムダが省けるよね、と全員が感じられることだったので。
でも、経営陣から承認をもらう所は予算も絡むことなので一苦労ありましたね。

特に大変だったのはどんな所でした?

髙岡:一番議論になったのはノートPC支給の件ですかね。営業マンがテレワークするためにノートPCがいるけれども、全員が必要なのか?必要としない社員もいるんじゃないか?など。デスクトップの方が安いじゃないですか。その部分でのやり取りはありました。

外回り中の空き時間を活用し、残業3割減

では、経営陣への説得も経て営業は全員ノートPCになり、実際テレワークができるようになってどうですか。

登坂:ノートPCになったのがすごく便利です。
客先で至急見積もりを見なきゃいけない時でもすぐに確認できるようになりましたし、手元に常に持っていけるのは便利ですね。

働き方改革後は残業時間が3割も減ったそうですが、やはり一番の要因はテレワークでしょうか。

登坂:そうですね。事務作業が外でもできるようになったので、出先から事務所に寄らず直帰できるようになりました。
柳下:社外からでも社内システムにアクセスして入力作業ができるようになったのも大きいんじゃないかな?
小林:それまで支給されていたiPadだとメールも打ちづらくて時間も掛かっていたのが、ノートPCになってからは作業しやすくて時短になっていますね。
それに、上司からも「早く帰ろう」と言われるので、退社時間を更に意識するようになりました。

ノートPCになる前はどうしていたんですか。

登坂:iPadでメールやファイルは外出先でも見ることはできました。でも、社内システムにまではアクセスできなかったんです。
小林:ですから、客先まわりを終えて17時ころ会社に戻りそこから社内業務だったのでどうしても時間かかって残業が増えるパターンが多かったんです。外出先の空き時間を活用して社内業務ができるようになったのはありがたいです。

サテライトオフィス以外での仕事も会社的にはOK?

小林:人との距離が近い電車内はNGですが、カフェや公共の場所はOKです。ただし、見られにくい場所を選ぶようにとは言われています。
登坂:PCやスマホには覗き見防止フィルターを貼ったり、外部のwi-fiネットワークは使わずに内蔵されているSIMを使ったりするなど配慮はしています。

フリーアドレスで更に進んだペーパーレス化

次にオフィスについてお聞きしたいのですが、固定席だったのをフリーアドレスに変えたそうですね。

髙岡:はい。2018年10月にリニューアル工事をしました。
オフィス空間デザインは当社のビジネスに直結していますから、営業マンがお客様を呼んで実際にオフィスを見学してもらって、お客様の生産性向上に繋げたいという目的もありました。

お客様を招いてのオフィス見学会(写真左)やセミナー(写真右)を定期的に開催しており、毎回満席の人気ぶりだ 。

自社オフィスが営業にも一役買っているわけですね。オフィス設計の専門家が社内に大勢いると良くも悪くもレイアウト変更には意見が沢山出たのでは?

髙岡:働き方改革チームと設計専門チームが一緒になって進めていきましたし、そこはトップダウンではなく若い社員たちから吸い上げた意見をうまくまとめてやっていきました。

同社の施工事例(写真左:三菱地所株式会社横浜支社。中央、右:アンダーソン・毛利・友常法律事務所)。他にもITインフラ構築やオフィス什器の手配、複合機の販売保守などオフィスに関するあらゆるサービスをワンストップで行っている 。

オフィスを刷新したなかで、御社ならではのこだわりがあれば教えてください。

髙岡:当社はメーカーではないので、国内外のさまざまなオフィス家具や用品を扱っています。
ですから、あえて1社だけではなくて色々なメーカーの商品をあえて混在させてレイアウトしているのが特徴のひとつです。椅子だけでも5種類以上はあるんじゃないかな?
実際に自分たちで使った感想をお客さんに伝えられるし、見学に来たお客様にも座り心地を体感してもらえます。

なるほど。たしかに様々なタイプの座席やエリアがありますね。

髙岡:はい。これまでは島型の席だけでしたが、今は、集中ブース席やファミレス席、カウンター席、立って仕事できるハイカウンター席もあります。

主に営業部門が使うフリーアドレスエリア。

ただ、せっかくフリーアドレスに変えたのに席が固定化してしまうケースもあるようですね。

髙岡:「今週はこのグループはこの辺りに座ってね」と毎週ローテーションさせているので、今のところ固定席化はしていませんね。

フリーアドレスにすると袖机がなくなりますから、書類の保管が問題になりませんでしたか。

髙岡:うちはお客様にもペーパーレス化を勧めるコンサルティングをしている関係上、昔から社内をあげて取り組んでいたので、そこまでストレスはなかったと思います。とはいえ、どうしても溜めてしまう人もいますよ。
小林:私は入社後1年間だけ固定席でしたが、それでもぎっしり書類が詰まっていたので…。それを全部捨てるための取捨選択とスキャンは大変でしたね。

実際に“全捨て”してみた感想は?

小林:全部の紙書類を捨ててデータ化しましたが、いざやってみると違和感はなかったです。
例えば、ずっと取っておいた研修資料も年に数回見返す程度と気づけたので、実は紙で保管する必要はなかったんだな、と。でも、強制的にやらされないと出来なかったなとは思います。
髙岡:今は持てないよね。役員も推奨してるしね

人は探し物に膨大な時間を費やしているとも言われますから、そう考えると時間の効率化に繋がったのかもしれませんね。

小林:書類を見直す頻度は上がりましたね。袖机がなくなってから、いる/いらないの判断をその場でするように変わったのでキャビネットが小さくても収まってるんだと思います。

時間単位年休で柔軟に有給を活用

営業部門の固定席と袖机を廃止したかわりに1人にひとつロッカーが支給された。

時間単位年休で柔軟に有給を活用

人事制度面では、時間給制度を取り入れたとか。

柳下:はい。半休はもともとありましたが、1時間単位で有給を取れるように人事制度を変えました。
基本的に定時は9:00~17:40ですが、例えば、帰りに病院に行きたいから退社時間に合わせて1時間だけ有給を使うとか。
全体的にはまだそこまで浸透していませんが、1回使ってみると便利さが分かるみたいですね。中抜けもOKですし、もちろん新入社員でも使える制度です。

時間のムダをなくす事に関連して、会議時間を短くする企業も多いですが御社ではどうですか。

髙岡:時間は特に意識していませんが、ペーパーレスのツールを使っているので会議もペーパーレス化されています。
フリーアドレスになってから、会議資料をきちっと用意しなくても手短にちょこちょこっと話して済むケースも増えました
小林:私のチームは、以前は朝会議があったんですが、今は島がチーム単位で固まっているので、そこでサクッとミーティングして解散!ってなることが増えましたね。
会議室に集まると話が脱線したり長引いたりすることもあったので、最近は会議が終わるのが早くなったと感じます。

自覚が大事なのかもしれないですね。「だらだら仕事しない」と自分自身が意識できるかどうか。

登坂:19時以降に営業マンが残業する姿も本当に見なくなりましたもんね。

残業を減らすために、上司から声掛けする以外に何かしたことは?

髙岡:それが特別なくて、おのずといなくなりますね。ノートPCになったとたんにそうなったんですよ。
柳下:昔は総務からいくら言われてもあまり改善されなかったんですが。

そう考えるとテレワークの影響は大きいですね。

髙岡:昔は夕方まで営業が外に出て、帰ってきてから電話やメール、事務処理がどうしてもあったでしょう。
今はそれを空き時間にできるようになったのが大きいんだと思いますよ。

拠点を働き方改革から置いてきぼりにしないために

お話を伺っていると、社員の方々の変化に対する適応力が高いですよね。他社では反対意見や摩擦が生まれるケースもありますが。

髙岡:僕たちは、お客様に新しいワークスタイルやオフィス空間を提案する営業の立場だから、理解もあるし比較的早く馴染めたのかもしれません。でも、もしかしたら、管理部門ではそうではないのかもしれません。
営業事務では、会社に掛かってきた電話を取り次ぐのにどこに誰がいるか分からなくて困る、という意見は聞きます。予定表は見られてもどこに座っているのか分からない、と。これは改善すべき点ですね。

本社以外の拠点でも働き方改革は進んでいますか?「本社ばかり改革が進んで、拠点は置いてきぼり」などの不満はないでしょうか。

髙岡:働き方改革のプロジェクトには拠点のメンバーも入っていましたから、置いてきぼり感はないと思います。本社と同じ、新しいオフィスの形を提案する立場ですから改革は当たり前に受け取っていると思います。

拠点の社員もプロジェクトメンバーに入っていたから、支店や支社でも理解が進んだのかもしれないですね。

髙岡:そうですね。2週間に1回はテレビ会議をつないで話し合いをしていました。

テレビ会議は昔から浸透していたんですか。

柳下:わりと昔からテレビ会議は社員間でよくしていましたね。今は営業マンのノートPCでもマイクロソフトのチームスで、テレビ会議ができる環境は整えてあります。
小林:今のところテレビ会議システムを使うのは社内のやり取りだけですが、最近はお客さんから「テレビ会議をしたい」と言われることもあります。

たしかに、業種を問わずリモート会議が浸透してきている感はありますよね。

小林:毎週、定期的に会議をしている取引先があるのですが、毎回私が訪問するのも時間が掛かるし、テレビ会議なら現場の様子を見ながら打ち合わせができるから、ということで。

オフィス環境が採用活動にも影響する?

ところで、最近は働き方改革が採用や離職防止にも効果的だとも言われますが実感はありますか。

髙岡:採用活動でオフィスを見せるのは効果的だと感じています。最近は、綺麗なオフィスで働きたいという要望が増えているようですね。
あとは立地を重視する就活生も意外に多くて、そういう時にやはり丸の内ブランドは大きいと肌で感じます。

5ヶ年計画の折り返しに来ていますが、残りの2年でやりたい事は?

髙岡:まだ個人的な考えですがフレックスは入れてもいいかなと思います。今は仕事が忙しくてもそうでなくても必ず9時に出社するじゃないですか。
でも、仕事の繁忙に合わせて出退勤がフレキシブルにできるようになったら生産性も上がるんじゃないかな?

実は弊社はフレックスにチャレンジしたのですが、一度定時制に戻した経験があるんです。出社時間がどんどん後ろ倒しになってしまい…。

髙岡:うーん、そこはルールを作ればいけると思うんですよね。例えば、毎週水曜は必ず午前中に出社して顔を合わせられるようにする、とか。

在宅勤務はいかがですか。

柳下:これから取り入れる方向で考えています。
髙岡:今は禁止しているというより、計画やルールを定めようとしている段階ですね。

ここまでお話を伺って、トップダウンとボトムアップをうまくミックスして改革を進めているのが印象的でした。

髙岡:当然トップダウンがないとスタートが切れないですし、でもボトムアップで進める施策に対してああしろ こうしろと指図される事はなかったですね。
社長もよく上下昇降デスクで立って仕事しているんですよ。すると、前よりも社員がよく相談しに来るようになって「コミュニケーションの頻度が上がった」としょっちゅう言っています。
座って構えられている時と比べて話しかけやすくなったんでしょうね。

オフィスの中央に位置し、社長も愛用しているという上下昇降デスク。一日中座りっぱなしよりも立ち仕事を挟むことで、集中力の維持やむくみを防いでくれる効果があるという。

そういえば社長室がありませんね。

髙岡:昔はあったんですが、「あまり使われていないので、会議室のスペースにしてください」と社員達から意見が出てなくしたんですよ。

それはすごい!たしかに同じ目線で仕事するのって大事ですよね。

髙岡:上下昇降デスクは、座りっぱなしじゃなくてたまには立って仕事しようよ、という目的で導入したんですが、思いがけない二次的な効果も生まれていますね。

本日は貴重なお話をありがとうございました。

こちらこそ、ありがとうございました。

今回協力して下さった企業様

ダイヤオフィスシステム株式会社

設立
1974年(昭和49年)9月28日
本社所在地
東京都千代田区丸の内3-1-1国際ビル
事業内容
1.オフィストータルマネジメント
2.デジタル複合機・FAXプリンタ等の販売及び保守
3.オフィス家具の販売及びワークプレイスの構築
4.オフィス移転・リニューアル等の総合プロジェクトマネジメント 等
従業員数
163名 ※2019年1月1日現在
Webサイト
https://www.doscorp.co.jp/

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