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「『オフィスのニューノーマル』を考えるセミナー」のセミナーレポート

『オフィスのニューノーマル』を考えるセミナー

~強制テレワークを経て働く場所ってどうなるの?~

【前編】

投稿日:2020-09-16

テレワークが長期化しオフィス面積の縮小やオフィス不要論までもが話題になる一方、通常出社に戻る企業も徐々に増えています。働き方が多様化する中、これからのワークプレイスの在り方を模索する方々の一助になればということで、XYMAXではオフィス戦略に積極的に取り組む企業様をお招きし、オンラインセミナーを開催致しました。今回は2020年7月10日に行われたセミナーの様子を前編、後編に分けてレポートします。

WITH/POST COVID19 働き方とオフィスの変化

スピーカー紹介

株式会社ザイマックス不動産総合研究所
主任研究員
石崎真弓氏

リクルート入社後、リクルートビルマネジメント(RBM)にてオフィスビルの運営管理や海外投資家物件のPM などに従事。2000年RBMがザイマックスとして独立後、現在のザイマックス不動産総合研究所に至るまで一貫してオフィスマーケットの調査分析、研究に従事。近年は、働き方と働く場のテーマに関する様々な調査研究、情報発信している。詳しくはこちら



登壇企業様にご登場いただく前に、私の方からイントロダクションとして最新のオフィスマーケット状況と6月に実施した企業アンケートをもとに、これからのオフィスの方向性や課題などデータを交えてお話しさせていただきます。

最初に東京23区の賃貸オフィスマーケットの変遷についてです。(下図参照)
東京23区のマーケットの変遷

直近の賃貸オフィスの空室率(水色の折れ線)は1%を切り、過去にない程の低水準になっています。賃料水準(オレンジ色の折れ線)は2012年以降上昇基調でしたが、2008年のリーマンショック時のピークまでには戻り切っていませんでした。今後は景気の悪化を受けて空室率が上昇し始めるはずですが、すぐに過去トレンドのように8%レベルまでにはならないと予想します。今年は都心の新築ビル供給量(緑色の棒グラフ)は多いのですが2021年から2024年までは少なく、空室期間が長期化する傾向はありますが一気に 値崩れする可能性は低いでしょう。

次に、緊急事態宣言解除後の6月に実施したアンケート調査からいくつかご紹介します。
まず、感染防止対策として企業規模や業種に関わらず9割以上の企業が在宅勤務を実施しましたが、そのうちコロナがきっかけで在宅勤務を導入したのは6割以上を占めていました。(下図参照)
コロナ危機で強制的に在宅勤務に

在宅勤務で支障があったか尋ねると、回答はほぼ二分されました。この支障の有無が、6月以降も在宅を継続するか否かの分かれ道になるようです。以前からテレワークをしていた企業が比較的スムーズに在宅に移行できて今も継続しているのに対して、コロナをきっかけに在宅を始めた企業は6月以降、通常出社に戻す傾向が強いようです。

在宅勤務で出た課題で一番多かったのは、そもそも在宅ではできない業務があること(下図参照)。次いで、ペーパーレスに未対応、印鑑文化、コミュニケーションの問題などが挙げられました。特に、コミュニケーションやマネジメントの問題は中長期的に影響が出てくるでしょうから、企業の課題としては大きいと見ています。
コロナ禍での在宅勤務で明らかになった課題は

次に、今後のオフィス需要のトレンドについてです。景況感が大きく悪化し(下左図参照)コスト意識が更に高まると予想されますが、オフィスの利用人数と面積はどう変わるかお聞きしたところ、利用人数、面積ともに減らす傾向が顕著に表れています。(下右図参照)


 
企業の景況感が大きく悪化今後のオフィス需要トレンドにみられる変化


また、今後のオフィス戦略については、縮小一辺倒ではなく出社とテレワークの両方を使い分ける方向性が最も高い結果となりました。ただ、次に多いのが、あまり変わらないという回答です。方向性は企業によって大きく異なり多極化がよりいっそう進むでしょう。
今後のオフィス戦略の方向性

最後に、オフィス施策の懸念で一番多かったのは、出社とテレワークのバランスをどう取ればいいのか(下左図参照)。このようなアンケートではコスト負担の問題がいつもトップだったのですが、初めてそれを上回る結果となりました。
以上のような結果を受けて、リクルートオフィス統括部 高柳様にバトンを繋ぎたいと思います。


 
課題はオフィスとテレワークのバランスをどうとるかワークプレイスの未来に影響を与えそうな変化と課題

リクルートの取り組みについて

スピーカー紹介

株式会社リクルート
オフィス統括部
高柳譲治氏

リクルートにてオフィス戦略業務に従事。主に約5万名いるグループ内のサテライトオフィスの運営、推進を担当。従業員が働きやすいオフィス環境の改善に取り組む。



①働き方に関する取り組みについて
当社では、2014年に「働き方変革プロジェクト」がスタートし、テレワークやオフィスのフリーアドレス化、キッズスペース付きサテライトオフィスの活用などに取り組んできました。オフィスは社会状況やテクノロジーの進化に対応して変化していくべきと考え、常に見直しをはかっています。

その一例として、オフィスの中で大きな面積を占める会議室の見直しについての取り組みをご紹介します。当時、会議室のサイズが2~12名部屋まであったのですが、それぞれの利用状況のデータを調べるために、イスの座面に人感センサー設置しました。(写真参照)
オフィス事例紹介

その結果、定員4人以下の部屋の稼働率が80%だったのに対して、定員6人以上の部屋はあまり使われていないことが分かりました。そこで、大きな会議室をオープンスペースや小会議室に改修しました。こんな感じで随時、働く場所の見直しを継続しています。

②テレワークについて
2016年からはサテライトオフィスZXYの利用を始めました。以下は、利用開始から現在までの利用状況を示したグラフで、折れ線が利用者数の推移です。導入してすぐに利用が増えたわけではなく、2年半ほど時間をかけてやっと利用者数が安定したのがお分かりになるかと思います。
サテライトオフィスの利用について

また、どんな人がよく使うのか職種別に調べました。当初は外回りの多い営業がよく使うと思っていましたが、営業職以外も約60%もの利用があり、オフィスメインで働く事務職にもニーズがあることが分かりました。サテライトオフィスを導入したからといって、すぐに業績や能力が上がるわけではありませんが、移動時間短縮は確実にできますから、多様な働き方を取り入れるオプションは大切だと感じています。

テレワーク導入に伴い、会って直接コミュニケーションできないなどの課題解消のため、コミュニケーションツールとしてTeamsを導入しました。その後、コミュニケーションに関するアンケート(下図参照)では、全ての項目で改善したと回答した人が8割を超えており、働き方の変革にはICTツールが必須だと実感しています。
働き方ツール紹介

導入の仕方については2つのポイントがあります
1つはメンバーの自発性喚起。トップダウンで新ツールの使用を強制するのではなく、ツールを導入することで何を目指したいのか部下が納得感を持てるように上司が伝えたり、具体的な活用方法をメンバー同士が主体的に検討したりすること。
2つめは心理的安全性の創出。「何を書いても大丈夫」という安心感や柔軟な雰囲気を上司が意識的に作るのが大事です。
コミュニケーションツール利用のポイント

③今後のオフィスのあり方
最後に、アフターコロナのオフィスについて。東京を中心に感染者が再び増加し予断を許さない状況が続いています。緊急事態宣言中は、95%の社員が在宅勤務に移行しましたが、7月現在も引き続き在宅勤務を推奨しており、出社は各組織単位で最大50%までを原則としています。コロナ前までは一斉テレワークは難しいと思い込んでいましたが、やってみたら意外にできたというのは大きな収穫でした。
オフィスのあり方とは

感染予防対策として既にやっているのは下図の左側(re-entry期間)です。座席を1席ずつ空ける、換気、消毒液の配布やペーパータオルの設置など。今後、ニューノーマルに対応するオフィスに関しては、一人当たりの面積や会議室の運用など新しい基準の検討が必要だとおもっています。例えばオープンな会議室を新設するとか、以前とは違うオフィスを構築する必要があるかもしれません。
今後のオフィスの在り方や働き方について

コロナ対策で在宅勤務がメインになっていますが、在宅勤務はあくまでも働き方の一つの選択肢であり、万能な働き方とは思っていません。オフィスワークでしか得られない事が必ずあります。
今後は、①テレワーク率②ソーシャルディスタンス(執務密度や距離感)③最適なオフィス内の配置(執務スペースと会議室の数など)を特に注視しながら、個人や組織がその時の業務や状況によって最適な働き方・働く場所を選べる環境を再構築していきたいです。

Post COVID-19 ~NECの新たなオフィスの在り方~

スピーカー紹介

日本電気株式会社
人事総務部オフィス改革グループ シニアマネージャー
坂本俊一氏

国内大手証券会社にて営業、総務、IT、財務を経験したのち、2019年1月日本電気株式会社入社。不動産管理部にてオフィス改革の推進を行い、2020年4月より現職。“働く場”を通じて如何にビジネス成長に貢献をするかを軸にハード、ソフトの両面から現場へのアプローチに取り組む。最近の悩みは在宅勤務による運動不足。



本日は、NECの新たなオフィスのあり方について、模索しながらも私なりに考えた事をお伝えできればと思います。
当社では、2018年に発表された中期経営計画で不動産費用削減が挙げられたのをきっかけに、フロア効率化とオフィス環境の整備を進めてきました。
単に面積削減やレイアウト変更をするのではなく、一人一人のパフォーマンスを最大化する手段として生産的な業務環境を整備する事を重視しています。いかに社員一人一人の行動を変えていくのか。与えられた環境でいかに成果を出すかよりも、パフォーマンスを出せる環境をいかに選ぶのか、どんな環境なら高いパフォーマンスを出せるのかにフォーカスしているのが特徴といえます。

その実行策として、自社のコワーキングスペース(写真参照)の新設や執務フロアのリニューアル、固定席からの脱却などを進めてきました。社内には昔ながらの島型の固定席もいまだに多いのですが、それでもリニューアル後では8割以上の社員が固定席から脱却した働き方ができるようになり、そのことで7~8割が業務生産性に良い影響があったと回答しました。

コワーキングスペース
本社に開設したコワーキングスペース。他にもグループ社員向けサテライトオフィス約40拠点を自社で運営している。

このように取り組んできたわけですが、コロナインパクトが起こり、オフィスで働くのが当たり前という意識は突如として過去のものになってしまいました。出社を前提としたワークスタイルを疑問視する人が増え、オフィス不要論さえ見聞きするようになりました。実際、当社でも緊急事態宣言下ではオフィスワーカーの出社率は10%を切る水準。現在でもフロアによっては200人収容できるオフィスに1~2人しか出社していないところもあります(※2020年7月現在)。

このように誰も来ないオフィスに投資する必要性はあるのでしょうか?オフィスの意味と役割が大きく変化する中、一番の変化はFace to Faceが当たり前ではなくなったことです。
Face to Faceは、メールや通話より圧倒的に情報量が得られますから、相手の反応をよく知りたい時や、多くの情報が欲しい時にはとても有効です。オフィスに行けば簡単に対面できたのに、いまや出社は-Face to Faceの機会というものは以前よりも面倒でリスクあるものに変貌してしまったわけです。

コロナ前までは約7割が基本毎日出社していたのですが、今後の出社希望頻度を聞いたところ、毎日出社したいと答えたのはどの年齢層でもたった2割。基本出社しない方がメジャーになった大きな理由は、業務やマネジメントに大きな支障が出なかったからだと思われます。(下図参照)
コロナ禍による出社意識の変化

在宅勤務に関する社内アンケートで興味深いのは、左側のポジティブな気づきでは個人の幸せに寄与するものが多く、逆に右側のネガティブな気づきでは組織活動に関するコメントが多く出ている傾向がある点です。(下図参照)
在宅環境は個人の幸福に大きく寄与

このような点を踏まえて、現在のような在宅勤務環境は以下のような潜在的リスクがあるのではないかと危惧しています。
・悪い情報が上がらなくなっている
・最初の信頼関係構築ができない
・関係の広がりの機会喪失
・気づきと育成の場の逸失

最低限のコミュニケーションができているとはいえ、積極的な対話や意図せざるコミュニケーション機会を作っていく必要があると考えます。

だからといって、Face to Faceのために在宅勤務メリットを手放すか?難しい問題ですが、例えば、家族や友人とのFace to Faceにこだわるか、と考えるとそこまでこだわらないですよね。既に信頼関係が成立していれば、多くの情報が無くてもコミュニケーションが成立するからです。

まとめとして、今後の働き方のポイントとしてリアルとオンラインをいかに両立しバランスをとるか、として一応の仮説を立ててみました。
在宅勤務は信頼関係と一体感が前提にあってこそ成立するため、中長期的な成長の為には関係性の構築・維持が必要。在宅もサテライトオフィスも役割を分担する存在であり、どちらが主でどちらが従という関係ではないだろう、と。
NECが考えるオフィスとは、組織が互いに助けあい共創するチームの拠りどころ。ただ、業務内容によってオフィスの果たす役割やそのウェイトは異なるので、全社一律で出社率を決めるのではなく、それぞれの現場に応じた出社の考え方やフロア効率化を進めることが必要です。
経営的には不動産コスト削減の話もありますが、オフィスには果たすべき役割がありますから、現場とコミュニケーションを取りながら減らすべきところは減らし、必要な機能は増やして効率化を目指していきたいと思います。

質疑応答

セミナー中、視聴者の方々からチャットで多くの質問を頂きました。

■コロナショックを通じて家賃や人材コスト意識は高まりましたか?

高柳)オフィスの意識についてはとても高まっています。社会経済環境が厳しくなっているので何が必要/不要か、あらゆる角度で変化に対応する取り組みが始まっています。何にコストをかけるかが重要で、オフィスは出社した際の価値がなければならないので、逆に魅力的にすべきではないか?という意見もメンバー間でありました。
石崎)コスト意識というと家賃削減に話が行きがちですが、人にもコストを掛けるということ。単なるトレードオフではなく必要な役割に対してはお金かけて、よりシビアに取捨選択するってことですよね。
坂本)そうですね。コストを下げても売り上げまで下がれば本末転倒、会社が成長できないと、って所だと思います。

■直近の出社率はどれくらいで、どんな職種の方が出社していますか?

高柳)正確な数字ではありませんが緊急事態宣言中は5%前後です。東京オフィスは少ないですが、密にならない様にコントロールした上で、首都圏外の営業職拠点を中心に増えてはいます。
坂本)感染対策に万全を期した上で、生産現場はほぼ元に戻しています。一方、オフィスの方は2割弱くらいですね。

■2社とも自社運営のサテライトオフィスや拠点があるのに、ZXYなど外部サービスを使うのはなぜですか?

高柳)サテライトオフィスが利用できるなど選択肢が多い方が生産性も時間効率も良いと思うので、外部サービスを併用しています。
坂本)前提としてサテライトオフィスの目的は時間短縮です。だから、サテライトは広くなくていいので色々な場所にあって小回りがきくことが重要。今後は、自宅に就労環境が整っていない社員が使う事も考えて、郊外の家に近いサテライトオフィスを多く使いたいと思っています。ただ、そのすべてを自社運営するとコストも手間もかかるので、必要に応じて外部のサテライトオフィスを活用しています。

■NEC坂本さんに質問です。コロナ前に貯蓄した信頼関係の残高のおかげで在宅勤務が上手く行ったのだとすると、今後は貯蓄が減るばかりでは?関係性維持には定期的な出社が必要ではないでしょうか。

坂本)おっしゃる通り!この数ヶ月、在宅勤務でもうまくいっている、問題がないと言われているのは過去の延長線上にある「信頼関係の貯金」を使っているだけだと思うんです。今の状態が1~2年続いた時に同じパフォーマンス出せるのかと考えると難しいでしょう。テレワークの土台にあるのが信頼関係ならば、それを維持、構築するために定期的な出社日を作るといったことを考えることもやり方の一つとしてとても大事だと思います。
自由出社ではなくチームごとに出社日を決めて、ローテーションすればソーシャルディスタンスもできるし、安心して顔を合わせられる。チーム以外の人でも特定の人にコンタクトしたければ出社OKという運用ができると思います。今のフロアデザインの中ではチームが集まれる場所を作る、チームごとの出社日を設けることを推奨しています。

後編では、第二部のパネルディスカッションの模様をレポートします。オフィスは将来いらなくなる?今後のオフィスに必要な機能は?サテライトオフィスの費用は?などよく聞かれる質問を皆さんと考えていきます。
サテライトオフィスサービスZXY(ジザイ)
ザイマックスでは法人専用サテライトオフィスサービスZXY(ジザイ)を、都心から住宅地まで84か所(2020年6月現在)に展開しています。「時間と場所の制約がある社員に、仕事に集中できるサードプレイスを家の近くに用意してあげたい」、「移動時間や通勤時間を削減し、社員のワークライフバランスの改善を図りたい」そんな想いを抱える企業様をサポート致します。現在、web内覧会を開催中です。ご興味のある方は、ぜひお気軽にご参加くださいませ。
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