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株式会社ラックの働き方改革事例

「働きがい向上」を合言葉に、社員と会社の成長を目指す

投稿日:2020-12-07

株式会社ラックが取り組んだ事

  • 働き方改革強化週間を設けて社員の意識向上と行動変容をはかる
  • 現場の意見を経営に反映するPJチームを結成
  • 研修強化月間をイベント的に開催し、個人の成長を促す
  • 会社規模

    2,270人

  • 業種

    その他

  • 対象職種

    全社員

日本のIT情報セキュリティ分野の先駆者である株式会社ラックでは、社員の働きがい向上を目指して2017年から働き方改革を進めています。働き方改革やスキルアップを積極的に促す独自のイベントや、オンラインコミュニケーション活性化のための具体策とともに、オンデマンド化を予見する将来のオフィス構想まで、「働くこと」について幅広くお話を伺いました。

働きがい向上を目指して始まった働き方改革

働き方改革がスタートしたきっかけから教えていただけますか。

社員が前向きかつ幸せに、働きがいを感じながら仕事ができることこそが会社の成長に繋がるとして、2017年に新社長が就任したのをきっかけに働き方改革がスタートしました。

実際にはどんな体制で改革を進めたのでしょうか。

開始の宣言こそ社長のトップダウンでしたが、その後は働き方改革推進室が立ち上がり、全社横断的なボトムアップとの両輪で改革を進めてきました。
働き方改革の推進を行うのは全社横断のプロジェクトチームで、各チームのリーダーには執行役員が就き、全部署から立候補やノミネーションを経て集まったメンバーで構成されています。今年は「人事労務プロジェクト」「人材育成プロジェクト」「受注改革プロジェクト」の3つが進行中です。

チームに執行役員が入ってるのは良いですね

そうですね。経営と従業員の橋渡し役として不可欠な存在です。

では、プロジェクトチームで決めた内容を社員にどう広めましたか。

初年度はとにかく働き方改革を社内に浸透させるため、トップからのメッセージ発信に注力しました。
働き方改革に関する社長メッセージを文書や動画で社内ポータルにアップしたり、全社会議やイベントでも必ず発言してもらったり。あとは、社長・執行役員で構成されているコアメンバーミーティングや各プロジェクトが実施している3プロジェクトのミーテイング議事録を社内ポータルで毎回公開して、誰でも見られるようにしました。
(左)向山暢彦(中央)山中聡(右)向井亮一
お話しを伺った御三方。
(左)向山暢彦氏(中央)山中聡氏(右)向井亮一氏
 

そこまで見える化できると働き方改革を自分ごととして捉えられそうですね。

はい。社員同士で「そういえば、人材育成プロジェクトミーティングの議事録にこんなこと書いてあったけど」みたいな会話が生まれるようになりましたね。
更に働き方改革の強化期間として、3ヶ月ごとに1週間の頻度で「LAC(ラック)週間」を設けるようにしました。

四半期に一度の働き方改革強化週間、「LAC(ラック)週間」

「LAC(ラック)週間」とは?

「学んで行動する(Learn and act)」という言葉と社名をかけた名称で、個人や部門で”生産性を向上できる働き方”を各々選択して実際に行動してもらうための1週間(働き方改革強化週間)で、自分たちに適した生産性を向上させる働き方を考え、それをできる限り実践し、気付きを得たり、現状の働き方を整理し、各部門で目指す姿(高生産性となる)になるようにチャレンジします。あえてイベント的に行うことで、意識的に働き方改革を実行できるようにするのが狙いです。
LAC週間では毎回異なったテーマを設けていて、例えば、通常1時間だった会議を今週は30分にしてみよう!とか、今週はサテライトオフィスを意識的に使ってみよう!とか。事業部ごとに課題解決にチャレンジするんです。
だって「サテライトオフィスがありますよ」と言うだけじゃ、使わない人が大多数ですよね?でも「LAC週間」をきっかけとして働きかければ、実際に使ってみてメリットなり課題なりが必ずでてきます。

面白いですね!あとは働き方改革の為にどんな事をしましたか?

働き方改革を始めた頃はとにかく啓発のために各フロアやカフェテリアにポスターを掲示したり、働き方改革 心がけ10か条を制定して広めたり。あとは、業種柄、お客様先で勤務している社員も多く、横連携が薄くなりがちなので、他の職場社員とのコミュニケーションの場を意図的に設けるために、飲食付きの交流会をLAC週間の最終日に設けて帰社をしやすくする環境作りもしています。
ずっとお客様先に常駐して年に数回しか本社に戻って来ない社員もいますから、どうしても帰属意識が薄くなりがちです。そうならないように、社内イベントのために都合を付けて本社に戻ってきてね、と呼びかけて交流の場を持つようにしています。
働き方改革心がけ10か条
多様な働き方をする社員が多い同社だが、どんな働き方や職種の人でも共感して実行できる事項を盛り込んだ。

同じ部署でも関わりが少ない人もいるんですね。

お客様先に常駐していると何かきっかけがないと本社に戻りづらいんですよ。逆に社内行事という名目があれば、お客様に言いやすから参加しやすい。働きがいや帰属意識があやふやになって心が揺らいだ時、LACという拠りどころがあると社員に認識してほしい、という思いもLAC週間にはあるんです。

では今年のLAC週間はどんなテーマで?

在宅勤務が浸透してきたことから「オンラインでいかに上手くコミュニケーションを取るか」をテーマに、推進しています。

私も他部署はおろか、同期との関係さえ希薄になっている気がします。

昔だったら宴会部長みたいな社員が率先してそういう場を作ってくれましたが、現代では誰かが意図的に設けないといけませんね。

社長自ら客先常駐社員を訪問

お客様先で勤務している社員が多いそうですが、リモートでの勤怠管理はどうしていますか。

社員のうち3~4割が客先常駐をしていて、自己申告制で勤怠管理しています。
あとは、「訪問ランチ」といって会長や社長がお客様先に出向いて、そこで勤務している社員と一緒にランチをとる企画も2017年から続けています。

会長や社長といった経営層と直接話せるんですね。

何か困りごとがあった時、上司を通じて経営層に届くまでには途中で立ち消えるとか齟齬が生まれがちです。でも、会長や社長と直接話せるから課題解決が早まるといって社員には好評です。

“ICTの民主化”で現場の環境を改善

社内のICT環境の整備はどのように進めてきましたか?

2010年以前から一人一台ノートPCと社用携帯を支給しています。
2014年に社用携帯をiPhoneに変えてからは、社内ポータルの閲覧や社内決裁もできるようになりました。便利な反面、休暇中でも「PCがないから決裁できません」とは言い訳できず、常に仕事を意識してしまうデメリットは生まれているかも(苦笑)。

確かに。でも、かなり前からテレワークできる環境はあったんですね。

そうですね。ただ、共有フォルダにアクセスできない、回線が遅くてWeb会議がやりづらいなど使い勝手がイマイチで…。
そんな時に当時の働き方改革プロジェクトチームの一つである業務変革プロジェクトチームが受け皿となり、そこで社内の不満を吸い上げて、順次クラウド化したりチャットツールを入れてコミュニケーションを円滑化させたり、使い勝手を良くする環境整備をしてくれました。
うちでは「ICTの民主化」ってよく言うんですよ。

ICTの民主化、ですか?

上層部が指示した方法やツールが必ずしも現場になじむわけではないので、従来は能力の高いエンジニアほど「こっちのやり方のほうがいいのに…」という不満を募らせていました。
でも、業務変革プロジェクトチームができてからは、現場の意見を集めて経営陣と話し合い、必要ならば予算を付けて変革を実現してくれるようになったわけです。

でもITの進化についていけない社員もいるのでは?

もちろんビギナーもいるので習熟度にあわせたレクチャー会を開いたり、社内FAQサイトを作ったりして対応しています。
先生役になる社員が立候補してくれるので助かってます。

社内でレクチャーが自然発生するのはすごいですね!

エンジニア集団の良い所ですよね。勝手に解決してくれますから(笑)。
不便なところを見つけたら「解決するツールを開発したので使ってください」みたいな事が自然にできる。
そういう人は自発的に議事録を見て、先を見越して提案してくれます。

議事録ちゃんと読まれてるんですね。

これが結構読まれてるんですよ!
意外な人から議事録の問い合わせが来てびっくりすることもあります。

では、今年度の働き方改革プロジェクトの動きですが、まず人事労務プロジェクトではどんなことを?

今は、上司と部下のコミュニケーション強化の為に目標設定や人事考課以外でも気軽に1on1をすることで、お互いの信頼関係を構築できる職場づくりや、管理職の意識改革を目的とした上司向けの研修を進めています。

スキルアップ機会を積極的に提供「トレ☆フェス」

人材育成プロジェクトではどんな事をしていますか?

社員のスキルアップを目的とした「トレ☆フェス」という研修強化月間を2018年から毎年続けています。
1ヶ月の期間中に11の研修プログラムを用意していて、社員はカフェテリア形式でどれでも自由に参加できます。今年の開催は11月で、すでに200人以上の応募が集まっています。前年度までと異なるのは、講座全てがオンラインで実施されるということで、どこでも受講できる気軽さがウケているようです。

人気なんですね。どんな研修があるんですか?

例えば、ビジネススキル、メンタルヘルス、フィットネスイベントなど技術研修以外のものが多いです。IT企業であるため、社内研修といえばエンジニア向けの技術研修が中心となっていたのですが、トレ☆フェスでは、どんな研修を受けたいかを社員にヒアリングして決めるようにしたところ、ジャンルが広がって参加者も増えています。
トレ☆フェス
2018年度のトレ☆フェスで人気だった講演会の様子。客先常駐者でも参加しやすいように勤務時間内に開催するなど工夫し、約400名の参加者のうち客先常駐者が1/4を占めるまでになった。今年は全ての研修をオンラインで行う。

オンラインコミュニケーションが浸透

お話を伺っていると、意見を受け入れてもらいやすい空気が社内にあるようですね。

2017年に働き方改革を始めて、ようやく昨年頃からそういう雰囲気が醸成されてきたように思います。
数年前にTeamsを導入してから全社横断的な会話ルーム、例えば働き方改革情報発信や、技術系質問ルーム等がいくつも生まれるようになって、オンラインとはいえ社員間のコミュニケーションが活発になり、知り合いが確実に増えました。
それに、オフよりオンラインの方が全体の動きが見える感じがします。
さらに今年度はその延長線上で全社会議を社員主体のラックグループ全体イベントに進化させ、オンライン、オンデマンドで行いました。昨年度までは2,000名近くのグループ社員を集めるため、都内の会場を貸し切り、開催時間も3時間ほどだったものが、オンラインでやることにより場所や時間の制約から解放され1日のイベントとして開催することができました。企画から実行まで全て社員の立候補者による実行委員会が主導することにより、コンテンツもトップダウン型から社員目線に変わりました。グループの成り立ちの紹介から、様々な部署やプロジェクトチームの紹介、社員自身が凄いと思う他の社員をプレゼンする大会、グループ各社社長全員でオンラインパネルディスカッションを行うコーナーなどもありました。自分の好きなコンテンツを自分のペースで選べるというのは音楽フェスで好きなアーティストを観て回っているような感じです。費用的にも会場代を抑えられましたが、それは副次的な効果だと思っています。

いいですね。リアルだと意外に他部署の動きなど見えにくいですから。

ある意味、コロナ前とは違った繋がりが生まれてますよね。
対面で目立つ人の特性、例えば声が大きいとかあるじゃないですか?でもオンラインの世界で目立つ人って本当にスキルがあったり、文章が伝わりやすかったりとか、今までは知る人ぞ知るけど目立たなかった社員にスポットライトが当たるようになったのは面白い現象だな、と。

ただ、テレワークのセキュリティ面などで困りごとはなかったですか?

セキュリティ分野では国内最古参の会社という自負もありますが、テレワークに関してはルールでガチガチに縛らずに「それくらい自分で考えてね」と緩さをあえて残したんですよ。そこには責任が生じるし怖さもあるけれど、締め付けると使い勝手が悪くなりますから。それでも高いレベルの安全性は保たれていると思います。

自社サービスも積極的に活用しているとか。

頻繁にテレワークする営業マンや機密情報を扱う社員には、のぞき見防止ソフトが便利だと思いますね。のぞき見防止フィルムを液晶に貼る商品なんかもありますが、ソフトウェアなら離席中でも機能するので安心です。
のぞき見ブロッカー
利用者の背後をカメラが常時監視し、非登録者を感知するとWindowsを自動的にロックする「のぞき見ブロッカー」。同社ではセキュリティやテレワークの強い味方となる製品も多く扱っている。

新しい働き方をサポートする手当を支給

オフィス環境で何か変えたところはありますか?

2019年に新設した東陽町オフィスでは、Web会議用のフォンブースや打ち合わせしやすいファミレス席を配置したり、飲食と私語禁止の集中ブースをつくったり新たな試みをしています。
ただ、最近はテレワークが増えたので実際に必要な席数や機能は今後の検討課題ですね。
ラック東陽町オフィス

現在、出社制限はしていますか?

できる限り在宅勤務するように推進していますが、出社しないとできない業務もありますし、自宅だと作業しづらい人もいるので出社率制限はしていません。今、本社オフィス在籍の社員で出社しているのは約半分の200~300人位でしょうか。全体では平均して約6割強が在宅勤務をしています。
今年の8月からは、週3日以上在宅勤務する社員には定期代を止めるかわりに交通費を都度精算して、在宅手当を支給しています。逆に出社しなければならない場合は出社扱いとして出社手当を支給、同じく客先常駐しないといけない場合は客先手当を支給しています。
在宅手当、出社手当、借先手当
労働環境の変化に伴う社員の負担軽減のため、在宅勤務者、客先常駐者、出社対応者、それぞれに支援金4,000円/月を支給している。

在宅勤務したくてもできない社員がいるのでこのような仕組みにしていますが、出社一辺倒になると業務変革は進みません。私の部署も代表電話の対応業務があり在宅勤務できなかったのですが、外部サービスを導入して解決の目途が立ち、近々は在宅メインになる予定です。

在宅勤務できる方向で課題解決を進めているんですね。

はい。例えば、捺印のために出社が必要だとしてもチーム内で当番制にすれば毎日出社しなくてもよくなります。工夫の余地がないかオペレーションの見直しを進めている過渡期ですね。
試行錯誤しながらこれらのような取り組みを推進し、現在6割強の社員が在宅勤務を実施している訳ですが、総務省がテレワークの普及促進を目的として、テレワークの導入・活用を進めている企業・団体を「テレワーク先駆者」とし、その中でも十分な実績を持つ企業・団体を「テレワーク先駆者百選」として公表しています。この度当社も、このテレワーク先駆者百選に選出いただきました。

帰属意識を保つオフィスのヒントは「公園」?

在宅勤務が加速して会社への帰属意識が薄まる心配はありませんか?

以前のようには集まれない状態でリテンションや愛社心をどうやって醸成するかは課題ですね。
会社に行くと「なんか面白い」とか「この会社にいないと共有できない、実現できないもの」を意図的に用意するなどの方法が良いのか…。
出社していればちょっとした相談やモヤモヤをすぐに誰かに話せたり、たまたま会話が生まれたりしますが、オンラインだとわざわざ相手を呼び出さないといけないので人によっては心理的ハードルが高い。

共通の拠り所をどうやって保持するか、難しい問題ですね。

ひとつは「大学」がヒントになるかなと思っていて。
今、大学はオンライン授業が大半になり、通学の負担が減って学生はさぞ喜ぶかと思いきや、大学に行きたい学生も多いと聞きます。授業はオンラインでできるのにそれでも行きたいということは、何がしかの繋がりを求めているということ。会社でも同じように感じる社員が一定数は居るはず。そう考えると核となるオフィスはやはり必要だと思います。

毎日通う必然性が少ないという点でも、今の働き方と共通するかもしれません。

そうです。4年間毎日休みなく通うわけではないし、毎時間教室は変わり、登校時間も履修内容もバラバラ、座席だってフリーアドレスみたいなものだし、自習する場所は人それぞれ。それでも母校に愛着や誇りを持つ人は多い。
大学時代はやれていたのに、社会人になった途端、全員定時に出社していつも同じ席に座って終業時刻まで仕事するというスタイルに変わってしまう、というのはどこか退化しているような気もします。

その考え方をオフィスに置き換えるとヒントになりそうですね。

あとは都市公園がイメージに近いんですよ!
例えば東京だと日比谷公園などがイメージに近いですが、一口に日比谷公園と言っても図書館や野外音楽堂、イベント広場、池、ベンチ、レストラン等々、そこには様々な施設・機能があり訪れる目的は人それぞれですが、仮に目的が無くても時折訪れたくなる街の拠りどころとしての求心力や魅力がある。公園や大学と同じようにオフィスもオンデマンド状態になるのも一つの形なのかなと思います。
逆に、そういう空間にしないと、単にデスクがあるだけのオフィスならもはや在宅勤務と変わらない。
そこでいよいよオフィスにどんな機能、コンテンツが必要か、思案のしどころだと思っています。
LAC WATCH
株式会社ラックでは、最新のセキュリティ情報や働き方改革に役立つレポートを「LAC WATCH」で発信中。テレワークの課題と解決法を網羅した「テレワーク導入便覧」もDL数1,000件を突破し大変好評です。同サイトから是非ご覧ください。
「LAC WATCH」https://www.lac.co.jp/lacwatch/

今回協力して下さった企業様

株式会社ラック

設立
2007年10月1日
本社所在地
東京都千代田区平河町2丁目16番1号 平河町森タワー
事業内容
セキュリティソリューションサービス、システムインテグレーションサービス等
従業員数
連結 2,270名(2020年4月1日現在)
Webサイト
https://www.lac.co.jp/

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